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異世界メモリアル【第3話】

この世界の料理ぱねえっすよ。

沙羅さんと一緒なのは嬉しいんだけどさぁ。


豚肉とかって普通スライスされて売ってるだろ?

こっちの肉とか魚的なものは大体まるまるそのまんまなわけ。

よく見たこともないモルモットくらいの哺乳類を捌くところから始まるんだぜ。


沙羅さんなんて、うなぎよりグロい深海魚みたいなやつをバッシバシ捌いてたわ。

家庭料理ってレベルじゃねえよ。

女将さんなのに板長もやってる感じで、まぁカッコイイ。


この人を惚れさせるってどんだけのことすれば良いんだろうな。


今週は部活も、家でも料理を頑張った。

最終日はオムライスを作ったぜ。

鶏じゃない卵でも、卵は卵だし。

米に似たものはあったし。

前世の記憶から料理を作れば、この世界にない創作料理ってことになるから、舞衣にも好評だった。


今週はなかなか成長したんじゃないの?

今日の夜に、妹が尋ねてくるはずだ。


「お兄ちゃん、入るよ~」

「待ってたぜ」


舞衣はパステルカラーのパイル地のパーカーとショートパンツの部屋着で登場した。

髪もゴム紐でくくっていて、いかにも家族にしか見せないだろう格好。

くっそ~、この油断してる感じがたまんねえ。

露出した白くて細い太ももからも目が離せねえ。


「それじゃ、ステータスから確認しよっか?」


まぁ、なんて事務的な会話なのでしょう。

こちらがどんだけときめいていると思ってんだコンチクショウ。

とはいえ俺がどの程度成長しているのかは一週間に一度。

日曜の夜に妹から教えてもらえなければ非常に困るのだ。


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 6(+1)

理系学力 10(+1)

運動能力 11

容姿   18

芸術   7

料理   12(+10)

―――――――――――――――――――――――――――――


「お~、お兄ちゃん頑張ったねえ~」

「お~、ホントだな~」


部活と特訓で料理が大分上がっていた。

まぁ実感はあったけどな。

学力は授業で少し上がったようだ。

そして日常生活で運動するくらいでは運動能力は上がらないようだ。


「今週のお兄ちゃんはステキな女の子と出会えたかな?」


おっ、言い方は事務的じゃなくなったな。

不満が伝わったのだろうか。

さて、問題は沙羅さんの気持ちだが。


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

実羽 映子 [誰だっけ?]

望比都沙羅 [駅前で配ってるティッシュくらいの存在]

―――――――――――――――――――――――――――――


ぐはっ。

わかっていたとはいえ、この表現キツくね?

基本的にいらねーってことじゃん。

たまーに興味あるくらいか。


「料理部に入ってよかったね、お兄ちゃん」


この親密度じゃあ、そうだねとはまだ即答できねえよお兄ちゃんは。


「じゃ、明日からはどうする?」


そうだなあ。

料理は料理部だけで充分だろう。

明日からの1週間は舞衣が料理当番だし。


実はまだ体力足りないんだよな、登下校に時間がかかる。

しかし、あの地獄の筋トレはやりたくねえ……。


「お兄ちゃん? もうちょっと身体鍛えた方がいいんじゃないかな?」

「そうします」


俺は妹の生脚を見ながら即答した。

言われたからじゃないよ、本当はやるべきだって思ってたんだよ。

脚を組み替えたから、ずっと見てたのバレたかもと思って動揺したから言っちゃったわけじゃないんだよ。


――翌日からはまた地獄が始まった。

筋肉痛で中華鍋をふるうのマジキツイ。

全然まともに扱えない。


「ロトさんは良いところの生まれだから、箸より重いものを持ったことがないのでしょう。」


なんて言われる始末。

すっげー綺麗な笑顔で言うんだぜ、これ。

ちなみに望比都沙羅さんが皮肉を言うのは俺だけです。

見てろよ、絶対後でデレさせてやる。


「義朝、望比都沙羅さんのこと知ってるか?」


俺は休み時間に親友(という設定のやつ)に話しかけた。


「なんだロト、望比都さんのこと狙って料理部入ったのか。流石だな。よし、俺の知ってる情報を教えてやるよ」


入部前は知らなかったっつの。


義朝に聞いた情報を整理すると、沙羅さんの父はテレビにも出ている料理研究家だそうだ。

しかし父は家では料理をしないし、母は料理が上手くない。

そこで父の本を読みながら料理を初めた、ということだ。

こりゃ相当料理が出来ないと、出来るとは思われないぞ……。


その後、筋トレと料理部を頑張る日々が続いた。


ある日の放課後、ゴミ拾いをしている実羽映子を見かけた。

悩んだが、話しかけてみた。


「え? ごめん、誰だっけ?」


親密度を把握しているのでわかっていたことだけど、ショックっすよね、コレ。


「いや、綺麗なネイルしてるのに手が汚れるのを気にせず一所懸命ゴミ拾ってるの見て、すごいなって。ボランティア部頑張ってね」


すると彼女はちょっとびっくりした顔になり、その後にっこりと笑って


「――うん、ありがとう」


とだけ言った。

ギャルゲーだったらここでCG回収だっただろう。

やっぱりボランティア部に入るのも良かったかもな。


*****


数日後、妹からこう言われた。


「お兄ちゃん、もうすぐ大型連休だけどどうするの? デートする相手は居なさそうだけど」


グサッ

ロトは10の精神的ダメージを受けた。


「舞衣とデートするのはどうか」

「ムリ」


グサグサッ

ロトは20の精神的ダメージを受けた。


「えっと、街にお買い物に行くなら付き合うよ。アイテム購入ならね」


アイテム!

そういう要素はもっと早く教えてくれよ!

この世界、取説くらい用意しとけっての。

チュートリアルもねえし。


「所持金ってあるのか? 俺?」


悲しいかな、自分の持っている金も把握していない。

妹に聞かないと何もできんのが実情だ。


「持ってないよ。お小遣いとかないから、アルバイトするしかないねえ」


アルバイト!

そういうのもあるんだな!?

おそらくバイトでもパラメータは上がるはず。

そして金を使ってパラメータ上昇効果があるアイテムを早めにゲットするのが定石なのでは?

俺は生前にプレイしたギャルゲーのことを思い出しながら、攻略法を検討した。


「よし、連休はバイトして最終日に買い物に行こう」

「うん、わかったよお兄ちゃん。 今のお兄ちゃんにできそうなアルバイト先は3つだね」


1.パチンコ屋で球拾い

2.スライム狩り

3.治験


「こんなところかな」


をい!

こんなところかな、じゃねえよ!

ツッコミどころ多すぎだろ!


「あのさぁ、まず1だけどさ、コレってバイトじゃないよね」

「時給じゃないけどそれなりに稼げるよ。 球を拾っているところを女の子に見られると幻滅されて好感度が下がるけど、お兄ちゃんはこれ以上下がらないからオススメ」


グサグサグサッ

舞衣ちゃん、もうやめて!

俺のHPはもうないよ!


「……2は何? 俺がロトだから選べる選択肢なの?」

「名前は関係ないよ。普通に食材探しってこと。放し飼いにしてるスライムを捕まえた分だけ報酬が貰えるよ。運動能力が少し上がるけど、容姿が下がるね」


いちご狩りみたいな意味の狩りか。

スライムって食い物なのか……。


「一応聞くけど3は?」

「実験室に閉じ込められて、謎の薬を飲まされるだけだよ。報酬は多いけど、何が起きるかわからないよ」


ろくなもんがねえよ、舞衣。

ファミレスとかを期待してたんですが?


「レストランとかさぁ、そういう料理が上手くなるのがいいんじゃないのか?」

「お兄ちゃん、その見た目で面接受かるわけないじゃん」


グサグサグサグサッ!

こころにつうこんのいちげき!

みんなパラメータの低いのが悪いんや!

くそっ、絶対キレイになってやる!


俺は、一番稼げそうな治験を選んだ。

金を貰ったら、美顔器でも買ってやろうか。



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