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異世界メモリアル【9周目 第11話】


二年生のホワイトデーに来斗さんにお返しをする。

この世界は9周目だが、今のところ二年生のホワイトデーで選んだ女の子を攻略できなかったことはないはずだ。

冬の凍てつくような風がようやく和らいできてはいるが、外はまだまだ寒い。それでも学校で誰にも見られない場所を選びたかったので、俺は校舎裏に呼び出していた。

来斗さんの選んだレイプスポットに選ばれているのは気になったが、しょうがない。


「ねえ」

「何」


プレゼントを貰った来斗述は、嬉しそうにはにかむと……


「私のこと好きだってことだよね」

「お、おう……」


ストレートな確認だった。やはり今までの攻略対象とはちょっと違うな。


「じゃあ、そろそろ……レイプしてくれるよね」

「……」


ストレートな来斗さんだった。やはり今までの攻略対象とは全然違うな。

これがレイプじゃなくてキスだったら、結構可愛いと思うんだよね。

この世界、キスはオッケーなんだよ。来斗さんとはまだです。なお、ラッキースケベではキスは発生しない。


「いまさらだけどレイプって言葉の意味わかってるよね?」

「強姦。無理やりする性行為」

「やっぱり勘違いとかじゃないのか」


レイプって言うのが本当の意味じゃないっていう希望が打ち砕かれました。

しかし……。

この手の話になって、やれやれと終わるのはもう終わりにしなければならないだろう。

俺はこの来斗さんを、攻略するのだから。


「よし」

「えっ」


俺は勇気を出し、彼女の肩を掴むと、一気に口づけをした。


「ん!?」


驚きを隠せないようだが、ここは退かない。

肩は震えているが、唇は離さない。

レイプしろと言っておきながら、キスされただけでこれじゃん。

まったく無理しちゃって……。

舌がぶつかったら、ものすごい勢いで逃げた。ちょっとショックだな……。

ゆっくりと、唇を離した。


「……ちょっとだけレイプしてみたけど、どうだった」

「……」


肩から手を離して、彼女の表情を伺う。

混乱しているようだ。目が泳いでいる。


「そ、そ、そうですね。ちょっとだけレイプ。や、やったー」


ほんの少しだけ手を上げて、めちゃくちゃ弱いガッツポーズをする来斗さん。

レイプをせがまれていたのに、ちょっと強引にキスしただけで罪悪感があるのですが?

本当に喜んでいるのか?


「やっぱり、先にキスしていいか、聞いたほうがよかった?」

「え!? いえいえ、そんな、滅相もない」


なんでだよ……。


「じゃあ、今後も、その……ちょっとだけレイプしていいのか?」


変なことを聞いているということは重々承知だが、しょうがない。


「も、もちろんです。ロトさんのレイプを嫌がるわけないです」

「あ、そう……」


いつでもどうぞ、と胸を張る来斗さん。

合意を得たので、今後は堂々と無理矢理にキスできるというわけだ。やっぱりヘンだなこれ。


「ロトさんは本当はレイプしたかったんですね、嬉しいです」

「そうじゃないんだが……」


喜んでいる相手にあまり否定したくはないが、否定しないわけにもいかない。


「来斗さんはどうして、レイプじゃないといけないの? 普通にキスしちゃダメなの?」


当たり前のことを質問するが、今まで切り込んでこなかったことでもある。


「普通よりレイプの方が愛があるからに決まってます」

「へ」


真面目に答えてくれたが、真面目に受け取れない。

決まってますと言われても。少しも決まってないです。


「愛がない性行為のことをレイプを言うのでは?」

「愛がないのに性行為をしたいわけがないでしょ?」

「へ」


間の抜けた声しか出ない。

常識的なのは俺だと断言できるが、ここまで自信満々に言い切られますと。


「いや、愛がなくても性行為はしたいんじゃないかなー」

「ロトさんはそうなんですか?」

「いやいや、俺はそうじゃないけど」

「みんなもそうですよ」

「……」


え?

論破されたの?

論破されてる場合じゃないような。


「さっき無理矢理にでも、キスをしたかったのは、その、好きだからでは?」

「そ、そうだよ」

「ちょっとだけレイプ。ちょっとだけ好きだから、ちょっとだけ。大好きになったら、100%のレイプになる。そう信じてます」

「ええ……」


俺は言い方を間違えてしまったのだろうか。

すっかり良い言い回しだな~と、ちょっと気持ちよくなっていたのに。恥ずかし!

しかしガチレイプを期待されても困るので、ここはちゃんと話をしておかないと……。


「くしゅっ」


長い黒髪が揺れるくらい、大きなくしゃみ。


「あ、寒いよね」


雲が出ていることもあり、ここは寒い。

来斗さんはタイツも履いていないし。

俺は彼女の手を引いて、校舎に戻ることにした。自動販売機で、温かい飲み物を買ってあげよう。


「ほら」

「ほら、とは?」


来斗さんの言葉の意味がわからず、歩きながら問う。


「私のことを思って、今、強引に手を引いてくれている」

「む」


確かにそうだけど。

妙な方向にポジティブだな。

ホットココアを買って、来斗さんに渡した。


「ありがとうございます。これも、レイプですよね」

「……どこが?」

「ココアにするかどうか、聞かなかったじゃないですか」

「あ、ごめん」

「いえ、嬉しいです。ロトさんが選んでくれたんだって思うから」


まいったな。

幸せそうな顔で缶のココアをすするのを見ていると、彼女の言うことを真っ向から否定できなくなってしまった。


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