異世界メモリアル【9周目 第6話】
「女の子ってめんどくさくないか?」
「おいおい、俺だって女の子なんだけど?」
「いや、そうだけどさ」
義朝とのデートで、俺はついグチってしまった。
まだ一年生の二学期という状況だが、属性「色男」があるため、常にデートに誘われており、毎週誰かしらとデートしている。
今日はゲームセンターを回っていて、今は次の店に向かう途中だ。
「わかってるよ、みんなは女の子らしくてカワイイ子ばっかだもんな。俺なんて」
「いや、それはない! 義朝はすっごくカワイイ女の子だ!」
「お、おう……あ、あんがとな」
頬をぽりっと掻く義朝。
照れたときの癖は男のときから変わらない。
「いや、こっちこそ悪い、なんか女の子じゃないみたいな言い方して。ちょっとその、なんというか義朝は一緒にいて楽というか楽しいというか、疲れないというか」
「ふーん? 他の女は気を使うってことか?」
「そうだな。実羽さんとか気を使うなあ」
「そうなのか?」
実羽さんは突然ランドセルを背負うくらい大胆なイメチェンをしてくるからね。下手なことを言うわけには行かなかったりするね。
この9周目では、久しぶりにガンガンアピールしてくるんだよな。
「実羽さんの胸を揉んじゃう、みたいなときさ」
「お、おう。ロトって結構普段から当たり前みたいに女の子の胸触ってるよな」
「そ、そんなことは……あるか」
ラッキースケベのせいにしようとしたが、舞衣の胸も結構触っているし。
星乃さんも今や怒らないしな。うん。
「で、まぁ最初は偶然というか、たまたまそういうことになるわけだよ」
「たまたまねえ」
「で、そこで俺はお前のおっぱいなんて興味ないぜっていう態度だと怒るわけ」
「乙女心だな」
「かといって過度に揉んじゃうと怒るわけ」
「ロトのスケベ」
「特に実羽さんはそこのところが結構難しいんだよな~」
「ふーん」
足元の石を蹴る義朝。
「星乃さんも気を使うんだ。もともと恥ずかしがりだし、攻められると弱いから。でも、勇気を出して腕を組んできたりするわけ」
「乙女だな」
「嬉しそうにしないといけないんだが、胸の感触を楽しもうとすると怒るんだ」
「スケベ!」
「腕を組んだらそういうものだろう」
「ふぅ~ん」
500mlの炭酸飲料の缶をくしゃっとさせる義朝。
「来斗さんも難しい。っていうかダントツだな。そもそもラッキースケベなのか単純に痴女なのかわからないし。でも突然恥ずかしそうにするんだよな」
「やっぱり乙女なのか」
「だからついついやりすぎちゃうんだよな」
「やっぱりスケベじゃないか」
「レイプしてくれが口癖の女性にスケベもなにもないもんだぜ」
「ふううううん」
立ち止まる義朝。
どうしたのだろうか。
なにやら不機嫌そうに見える。
「どうした義朝」
「ロト、やっぱり俺は女の子なんだよ」
「だから、それはわかって」
「いいや! わかってないね。つまりその三人の女の子と俺はそんなに違わないってことだ」
「え?」
「ロトは俺に対しては気を使わないのかもしれないけど、俺も乙女だし、あんまりスケベなのはイヤだ」
「え? え?」
「それにデート中に他の女の子の話をされるのだって、イヤだ」
「え? え? え?」
「もちろん、特別扱いされるのは嬉しいけど、でも、みんなと同じように女の子らしく気を使って欲しいとも思う」
「義朝……」
そうだったのか。
見た目は女だけど、中身は男のときの義朝と同じなのかと思っていた。
少なくとも、会話をしていて男の義朝と違うとは思わなかったんだが。
「すまん」
「いや、こっちこそゴメンな。お前はこういうこと言わない俺がよかったんだろうけど」
「そんなことは……」
俺は気を使っていないが、義朝は俺に気を使ってくれている。
なんてこった。
男同士のように、友達のように、お互い気楽に付き合えてると思っていた。
それは俺が勝手にいいように解釈して、甘えているだけだった。
それにしても、これって義朝は嫉妬してくれてるってことだよな。
女の子として扱って欲しいって、そういう不満で頬を膨らませているってことなんだよな。
「義朝。俺、今、おまえのことすっげーかわいいな~って思ってる」
「は!?」
「義朝は見た目だけがかわいいのかと思ってた。ほんとすまん」
「ったく、ロトはそういうところがな~」
そう言って、いつものように、ヘッドロック。
ごく自然に、その豊かな胸に顔が当たるが、これ以上なにかしたり、このことについて掘り下げたりはしない。それでいいのだろう。
きっとこのヘッドロックは、チャラにしてくれているっていう気遣いと、顔を見られるのが恥ずかしいのをごまかしているんだ。
まいったな、ほんと、かわいく思えてきた。
「なぁ、プリクラ撮ろうぜ」
「なんだよ、急に」
「義朝が男だったら、絶対撮らないけどさ」
「なんだよ、俺が男だったらって」
男だったんだよ。
しかもロリコンだったんだからな。
「結構いろいろな種類があるんだぜ今は」
「知ってるよ、舞衣ちゃんとも撮ってるんだから」
「なんだと!?」
「女の子同士だから、そんなの当たり前だって!」
「ずるいぞ女の子同士!」
「ははは! いいだろ~」
やっぱり一緒にいて楽しい。
だが、これからはちょっと気を使って接しよう。女の子だからな。




