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異世界メモリアル【第27話】


新聞部の次孔さんは我が校にやってきた自立歩行型人工知能にインタビューを持ちかけた。

至極当然の流れである。

こんなエポックメイキングな話、放置するほうがどうかしている。


そして当人は俺と一緒にインタビューを受けることを条件にしたのだという。

なぜ学校一の注目キャラが俺を名指しするのか。

普通に考えれば、理解できるわけもないが……。


正直、あいちゃんと他の女の子と一緒にいるとろくな事にならないというのはわかっている。

しかし、次孔さんからの頼みであれば断ることは出来ない。

俺は不本意ながら新聞部のインタビューに同席することになった。


「ロトっち、ありがとね~」


次孔さんは両手をあわせて片目をつぶり、笑顔で感謝を伝えてきた。

うう~ん、なんと愛らしい人だろう。

次孔さんはいつも明るく元気で華やかな女の子だ。

まるで真夏のひまわり畑を擬人化したような。

一緒にいるだけで嬉しくなってくる。

この人の頼みであれば何でも聞いてしまいそうだ。


「ええっと~、それでは江井さん」

「あいちゃんって呼んで下さい。ロト先輩もそう呼んでますし」

「へ、へ~。そうなんだ。あいちゃんね……」


俺は口をへの字にして黙って聞いている。

早くもこの場には暗雲が立ち込めているが……。

否定すると容赦のない証拠を出されるので余計なことは言わない。

また、俺の声を再生されてはたまらない。

あれ、めっちゃくちゃ恥ずかしいから。


「最初の質問ですが、最新の人工知能のテスト導入が何故この学校なんです?」


当然の疑問だった。

俺はギャルゲーっぽい設定だなあで納得してしまったが。

普通、おかしいと思うよな。


「博士の趣味ですね」

「え? 趣味ですか」

「はい。やっぱりAIつくるなら女子高生しかないということで。この学校は美少女だらけだから朱に交わって赤くなってこいと」


――わかる。

博士の気持ちは痛いほど分かるが、博士が痛い。

次孔さんも痛々しいものを見る顔つきになっていた。


「私の見た目も博士の趣味です。私はもっと大人っぽくして欲しかったのですが」


ぺたぺたとやや薄い胸を触りながら文句を言う。

博士、いい趣味してんな。


「あ、でも次孔先輩よりはあるかな」


ビキッという音が聞こえたかと思うほど、次孔さんは表情を引きつらせた。

出たよ、お得意の爆弾発言が。

これで空気の読めるAIを名乗るのだから恐れ入る。

人工無脳の間違いじゃないのかな。


「ロト先輩は大きいほうが好きみたいですし」


ちらりと俺の方を向く人工無脳。

ジロリと俺の方を向く次孔さん。

勘弁してくれ。


「……ロト氏はどのくらいがお好みで?」

「俺にインタビューするのはやめません?!」

「やっぱり寅野先輩くらいですかね」

「お前が答えるな!」


ぎりりと歯を鳴らして苦々しくメモをする次孔さん。

まさかそれ、記事にしないよね……。

俺は何も言ってないぞ。


「ところで、なんでこの巨乳好きがいないとインタビューを受けないなんて条件を?」


巨乳好きって俺のことかよ。

明らかに悪意があるぞ。

次孔さんを貧乳扱いしたのはあいちゃんであって、俺じゃないのに。


「先輩は私のことを、ただの人工知能として見ていないんですよ」


なるほど、それはそうかも。

見た目は人間そっくりで中身は人工知能なんて、よくある設定くらいの認識だし。

普通の女の子として扱っている俺が隣にいることで人間らしくいられるとか。

そういう意味で俺を呼んだのか。

俺は少し合点がいった。


「ロトっちはあいちゃんをどう見てるんです?」

「えっちな目で見てるんですっ」


あれ~、おかしいなあ。

合点がいったはずだったんだけど。

目を閉じて眉間の下を揉む。

えっちな目で見てくる男を隣にしてインタビュー受ける理由なんてどこにあるんだ?


「へぇ~~~、巨乳じゃないですけどねえ~~~」

「太ももを見るときの目とかすごかったですよ」

「ふ~~~ん、ほぉ~~~~」


目を開ける気がしない。

俺は黙秘を決め込むことにした。

段々と次孔さんの声が低くなっていくが、反論するともっと悪化するに違いない。


「おっぱい触りますかって聞いたら、物凄く必死な顔でマジで!? って」

「さいてー」


これについては言う方がどうかしてるだろ!

弁護士を呼んでくれ!

俺はハメられたんだ!


「ロトっち、さっきから黙って聞いてるけど言い訳ないのかな」

「俺は悪くない、みたいな顔してますよ?」


ジト目で睨む次孔さんと、ニヤニヤと目を細めるあいちゃん。

一体何が楽しいんだ、このAIは。

というかこのインタビューどうなってんの?

学校新聞に載せる内容はどうなるのだ。


「俺はどうでもいいじゃないですか、普通にインタビューしないと新聞になりませんよ」


正論を言ったつもりだが、とてつもなく冷たい目で見てくる次孔さん。

ついさっきまで真夏のひまわり畑のようだったのに、今や吹雪の止まない雪山みたいですよ。

取り戻したい、あの笑顔。


その後、いくつかの質問が行われ、学校新聞に俺のことは特に書かれなかった。

インタビューは成功したわけだが、次孔さんは不機嫌であった。

ああ、親密度を見るのが怖い……。







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