異世界メモリアル【8周目 第15話】
文化祭の前に、重要なイベントがある。
そう、修学旅行だ。
二年生二学期に必ず発生し、必ず俺の生きたい世界に行ける。
そして今回は大きな違いがある。
そう、舞衣も一緒に行くということだね。やったぜ。
さて今回の行き先は……?
1.踊る革命の世界
2.太鼓をマスターする世界
3.DJオタクの世界
どうやらアーケードの音ゲーらしい。
タンバリンとかマラカスは選べないのか……。
ここは1を選ぼう。
飛行機で向かった先では、空港に着いた時点で音楽が鳴り響いていた。
スピーカーではなく、世界全体から音楽が鳴っている。日本の真夏のセミのように。
旅行先としては最高だが、住むのは勘弁だな。
ホテルに荷物を置いた後、ステージである海へ。
「おぉ~」
砂浜に到着すると、空から矢印が振ってきた。
その場で矢印を踏むのではなく、矢印の通りに進んでいくことで移動するようだ。
これは楽しいだけっぽいな。竜退治の世界とか死んだり生き返ったりするから大変だったけど。
「最初の対戦相手は私ですよ」
現れたのは来斗さん。
黒いビキニの水着と、長い黒髪をなびかせている。
青い海と強い日差しの中にいるスレンダーな来斗さんは、印象ががらりと変わってモデルさんのようだった。
「負けたらレイプされてしまうので、負けます」
「いや、そんなルールはない」
喋らなければ美人なのに。
その言葉がこれほど似合う人もいない。
そもそも対戦ではない。
ミスが多いと次のステージに進めないだけ、と聞いている。
進めないってどういう意味だろうな……?
と考えていたところ、ミスったことで実感する。
「熱っ!?」
どうやらタイミングよく矢印通りに足を出さない場合は、砂浜が高温に感じるようだ。地獄かな?
楽しいだけかと思っていたが、これは今までの修学旅行の中でもゲームらしいゲームかもしれん。
「あいやいやー、ふんふんふんふんふん」
来斗さんは意外にもノーミスだった。リズム感とか無さそうなのに……。
俺は二度だけミス。太鼓の方がよかったのか?
「負けたよ来斗さん、うまいね」
「勝ったので、レイプしてください」
「いや、逆のルールもないから」
「そうですか……」
いまだに正しい接し方がわからないな……。
こうして初日は来斗さんと一緒にビーチを一周しながら、踊りまくることとなった。
ラッキースケベとしてちょいちょい水着がずれていたようだが、よそ見すると熱いからあんまり見てません。
ホテルでは何も起きませんでした。義朝と舞衣のカワイイところを熱弁し合うだけの夜でした。
「今日はよろしくですぞ、ロト殿」
「お、てんせーちゃん」
二日目はてんせーちゃんと一緒に踊るらしい。
それにしても……。
「似合うね、てんせーちゃん」
「やー、てれてれ」
今度はジャングルのステージらしく、アマゾネス的な布地面積の少ない革の服を着用していた。破壊力がすごいぜ。
今日も一日中踊るぜ。
「ジャングルの曲もなかなかいいな……痛い!?」
ここではミスると足が熱いのではなく、虫に噛まれるらしい。バカ! なんてところに修学旅行に来てるんだバカ!
「とはいえ、難易度はそこまでじゃないし、ちゃんとやれば問題ないか」
ゲーセンでは結構やっていたので、この程度なら大丈夫だ。
てんせーちゃんは大丈夫かな。
「ばいんばいんばいんばいん」
アマゾネース!
まさにレボリューション!
リズムに合わせて胸が揺れている!
「痛ぇー!」
てんせーちゃんに気を取られて、蜂に刺された。激痛。
「ぜってーよそ見しねえー!」
「おっと、服が突然脱げました」
「痛ぇー!」
罠しかねえぞ、この修学旅行!
アンラッキースケベなんだよ!!
二日目は、満身創痍となった。
まぁ、眼福ではあった。
やはりホテルでは何も起きませんでした。義朝が舞衣をエロい目で見ていることを許さない俺がプロレス技をかけたりしてるだけの夜でした。
翌日の最終日は月面らしい。なにそれ。まぁ、場所はなんでもいいか。
そんなことよりパートナーとその格好が重要。
「最終日は当然舞衣だよね」
かぐや姫とかかな?
「おまたせっ、ロトおにーちゃん」
「うおおおお!?」
ご注文は別にうさぎじゃなかったのですが!
白いバニーガール姿で登場です。
「ちょ、カメラ、カメラ」
これを撮影せずに、どうして写真部になったのかわからない。
人類史上最高の芸術となるフォトグラフになるぞ!
「もう矢印来ちゃってるよ」
「ぎゃあああああ!」
カメラを探していて音楽を無視していたら、隕石が体に降り注いだ。メテオー!
熱いとか虫刺されとかとレベルが違いすぎる!
シンプルに大ダメージ!
どうして……。
「死にたくねー!」
命を守るための行動を!
上から降ってくるのは矢印と隕石群です!
踊るしかねえ~!
踊らねば死!
「ぴょんぴょん」
ぬをー!
舞衣がぴょんぴょんしてるんじゃ~!
誰か動画を撮ってください!
初回限定版特典のブルーレイにしてくれたら予約しますから!
昨日みたいによそ見してたら、マジで死ぬから!
「ロトおに―ちゃん、ダンス上手だねっ」
「舞衣は俺を見る余裕があるのね!?」
運動能力は俺のほうがあったと思うのですが!
「へへ~。ダンスは結構得意なんだー」
「そうなんだ! 見たいです!」
「見ていいよ~。ぴょんぴょん。あ、動きすぎると胸のところが落ちちゃう」
「な、なにっ……痛ぇー!」
月に代わってお仕置きされた。
スケベ心で隕石が当たるという、これがホントの引責ですかね! って言ってる場合か!
ビジュアルがめちゃくちゃ素晴らしいのに、それに見とれてる場合じゃないところがアーケードゲームっぽさあるな。プレイなんかせずに後ろから見ていたいのですが?
っていうか、来斗さんとてんせーちゃんと舞衣が踊っているところをただ見ているだけの修学旅行だったら最高だったのですが?
踊らにゃ損というのは古い考えです!
同じアホな修学旅行ならROMりたかったよ!
血涙を流しながらも踊り狂ったら、帰る時刻となったのだった。
「楽しかったねロトおに―ちゃん、修学旅行」
「そうだね」
文句言いつつも、やはり修学旅行は楽しかったし、舞衣がいるだけで最高だった。
次の周回の修学旅行も楽しみだな……。
音ゲーは得意じゃないですが、いまだにゲーセンでは結構やりがちだし、昔はコントローラーも買ってました。
DDRが出始めの頃は駅のホームでパラノイアしてるやつとかいたなーと思い出しながら書きました。




