異世界メモリアル【8周目 第11話】
「いやー、ロト氏。これはまたえっちなデート場所を選びましたな~」
「どこがだよ!?」
冬の定番デートといえば、スキー場かスケート場。
今回はスケート場を選んだだけ。てんせーちゃんは何を言っているの?
「こんな場所だったら、滑って転んでぱんつ丸見えになるか、転けそうになって抱きついちゃうか、あるいはその両方が起きるに決まってるわけですからね~。いや~、さすがエロトさんですわ~」
確かに。
いや、納得してどうする。べ、別にそういう理由で選んだんじゃないし!
そんなことより。
「なにそのエロトさんって」
「エロいロト氏のあだ名ですよ。みんなそう呼んでまする」
「みんな!?」
ラッキースケベはもはやタダの運がいい偶然ではなく、俺の持つ何かだと気づかれてしまったのか?
それとも星乃さんが誰かに言っちゃったのだろうか?
「文化祭でえっちな写真ばかり展示してれば当然でござりましょう」
「写真部の展示では男ばっかりにしたはずだが!?」
超、見当違いだった。てんせーちゃんの価値観での話だった。誰だよみんな。
そう、俺はうっかり女子にカメラを向けるとラッキースケベが発生してしまうため、仕方なく男性を撮影するという悲しい運命になった。
女性の水着姿のお尻のアップとかを展示して高評価がもらえるような世界ではなかったので、やむを得ずそうしたのだ。フォト○ノとかレコ○ブとかラブア○ルだったらそれでいいものを!
なんで男が汗かいてるところなんぞ撮影しなきゃいけないのか。
ラッキースケベ属性はいいことばかりではない。
「何を言っているのですか、ロトどの。いやエロトどの」
「言い直さなくていいですよ」
「あれだけ尊い写真を……ボクシング部のクリンチなんてもう、本番にしか見えませんでしたぞ……」
「ボクサーから怒られるぞ!?」
「他にも、吹奏楽部の男子たちが目配せしてるシーン。あれはもういくところまでいってる感じで……一体何をわかりあっているのか……」
「いや吹くタイミングだろ」
「野球部のバッテリーなんて、なんか二人だけでヒソヒソしてましたよ、堂々とマウンドの上で!」
「ふつうのことなんだよ。バッテリーはそういうもんなんだよ」
「あれが普通!? つまりベッドの上でも!?」
「はぁ……」
なんだろう、自分の撮った写真で喜んでくれている人を目の前にして、なんでこんな脱力することになるのでしょう。
チアガールとかを撮影したかった。
「ちょ、ちょっと先に行き過ぎ、あ」
手を引いて一緒に滑っていたのだが、俺が少し早めに足を動かしてしまったため、てんせーちゃんがバランスを崩した。
すてーん。
アイスリンクに尻餅をつく。
「あ」
確かに、スケート場はラッキースケベポイントかもしれない。
スカートの中が丸見えになっている。
「いやはー。やっぱりでしたな。一応、寒いのを我慢して毛糸のパンツなんて履かずにがっつり勝負下着を履いてきてよかった」
「ありがとうございます!」
ピンクのぱんつ、とっても可愛いです!
本当に嬉しいです!
なんですかね、来斗さんと違って素直に嬉しいんだよね。
てんせーちゃんはいつも、サービス精神旺盛だ。
「堪能したら、手助けしてー。お尻つめたい」
「これはすみません、あまりにも素晴らしかったもので」
「まったく、エロトですなあ」
ここで言われるぶんには構わない。ちゃんと役得があったから。
立たせてあげると、思いのほか体がくっついてしまった。
先程の抱きついちゃう、が実現したわけだがラッキースケベという感じじゃなくて、ハグとも呼べないただの薄い接触だ。
冬だから厚着ということもあり、別に肉体的接触が発生したというよりは、ただ近いだけというか。
「……」
「……」
逆に露骨なラッキースケベより、こういう普通に体がくっつくとかの方が気恥ずかしというか、甘酸っぱいというか。
てんせーちゃんも、こういうときだけ静かに恥ずかしがるから、ますますドキドキしてしまう。
「す、滑ろうか」
「うん」
口調も普通になっているし。
てんせーちゃんは、いつもクセの強い言い回しや独特の言葉を使うところが魅力だし、ラジオパーソナリティとしても面白い。
だからこそ、普通の女の子のような喋り方になったり、普通に顔を赤らめたときの破壊力が大きいというか。
友達みたいなノリだったのに、やっぱり女の子だって思い出させるというか。
「てんせーちゃんに、質問してもいいかな」
「な、なんでござろう。推しのカップリングですかな?」
「てんせーちゃんの家族、についてなんだけど」
「ええええ!? は、早くないですかね、そゆのは……」
耳まで赤くしている。
どうやら一足飛びに結婚後の話だと思ったらしい。
しかし、勘違いなわけでもない。確かに、俺はもし攻略するとしたら家族のことは避けて通れないから質問しているわけなので、そうじゃないと否定するのも違うな。
「なんか、ご両親が漫画家だって聞いてさ。普通そんなネタがあったら、ラジオでも言いそうなものじゃない? 一度も触れないから何かあるのかなって」
「特に何もないから言わないのでせう」
「んー」
確かに何もなければネタにもならないからな。
しかし普通のご家庭ではないというのが、前提なんだよなこのヒロインも。
「普通なのか」
「ははは、ロト殿」
意外そうに言うと、肩をポンと叩くようないつものように軽いスキンシップで。
だけどちょっといつもと違う口調で。
「普通の家庭とは、どんな家庭のことなんでしょうね」
その日のデートでは、それ以上のことは聞けなかった。




