インタールード『舞衣の業務レポート2』
お久しぶりです。
舞衣という名前でロトの妹をさせていただいております。
死後の世界部、恋愛不具合課、アシスタント係というお仕事をしている女神です。
今回のお仕事は順調でした。
ロトさんは7周目ということもあり、大分うまくやっています。
いいえ、大分どころではありません。もう出来すぎといってもいいです。
彼は自分が攻略対象を幸せにするだけでは足りず、その原因となっている両親も幸せにしてしまうのです。
別にそこまでしなくても、彼女を幸せにできればそれでいいのに。
本当に成長しています。
顔がかっこいいとか料理が上手とかだけではなく、人間として本当に魅力的に成長しています……。ほんと好き……。
間違えました、別に個人的な感情はないです。
最初はロトさんが頼りない、かっこ悪い、スケベなシスコンだと思っていました。
ところがもう今は理想の夫に近い存在です。正直結婚したい。こんなお役所仕事の女神なんて寿退社したいです。
間違えました、みんなそう思うだろうなあという客観的な話です。
そんな順風満帆に見えるロトさんですが、心配もしています。
女性の扱いもどんどん上達している……しすぎているのです。
それもそうです、もう六人もの女性と交際して相思相愛になった経験がありますから。普通の人の一生では難しいんじゃないでしょうか。
それにしても……あんなに……。
口づけというのは、それほど気持ちいいものなのでしょうか。
羨ま……いえ、興味があります。
人間の愛情を伴う快楽行為という観点で非常に興味深いという意味です。
これは仕事熱心で向上心があるという、そういう意味です。
だからロトさんとしてみたい……あくまでも経験としてです。好意とかではなく。
もちろん相手が嫌がることはしてはいけません。
しかし、彼の気持ちもわかっています。
クリスマスに贈ったマイクロビキニの写真を見た回数がそれを表しています。なんかロトさんがあの写真を見た時は逐一通知が来ます。スマホのPUSH通知みたいな感じだと思ってください。
もう、毎晩来ます。スゴいです。一晩で三回くらい見ることもあります。
プレゼントした側からしてもどんだけ気に入ってるんだって、ドン引きするレベルです。
……でもやっぱり嬉しかったりして……。
だから……いいよ……と思っているのですが。
八周目になるにあたり、反省していることがあります。
そうです。私の反省です。
ロトさんはこれだけ成長しているのに、私はまったく成長していないのです。
むしろ堕落しているのではないかとさえ思います。
だってこの仕事、ロトさんがこれだけ自分で出来ちゃうと何にもやることないですから。
別に舞衣はロトさんと違ってステータス上げる必要もないですから、学校に行っても友達と遊ぶだけです。勉強はしなくても普通に点数が取れます。
筋トレや勉強、部活やアルバイトをする必要もありません。
しかも、いっぱい食べても太らないし、いくらお酒を飲んでも病気になりません。
みなさんからしたら理想的な生活かもしれませんね……。
しかし情けないです。
ロトさんがこれだけ努力して、魅力的な男性になって、多くの人を幸せにしている。
その間、私はなんの成果も無いのです。
アイテムを買うときにはサポート役として頑張ることもありました。
もはやアイテムを買う必要はありません。いらないんです。十分ステータスが上がるから。
アルバイトの推薦というお仕事もあります。
しかしアルバイトをする必要もありません。アイテムを買うお金が必要じゃないですし。
ステータスを上げるアドバイス。
今となってはこれも別にありません。
基本ステータスに恵まれているし、特技をいっぱい手に入れているので。
ロトさんに関する情報をチェックして、頑張ってるなーとか、好かれてるな―とか、デートしてるなー、またキスしてるなー、口づけしてるなー、チュッチュしてるなー……え、どんだけするの……なんでそういうところだけ通知が多いの……イライラ……などと思っているだけなのです。
ツイッターを見るだけの簡単なお仕事をしているニートみたいなものです。
週に一度、ステータスと親密度を教えるだけの係です。道具みたいなものです。
はっきりいって釣り合っていません。
ロトさんという素晴らしい男性に対して、釣り合わないんです、こんな私は。
いや、それは見た目は可愛いかもしれませんよ。
ルックスだけで調子に乗ってるなんて、まさに馬鹿にすべき対象です。6周目のロトさんのときにそういうところが駄目なんだよと思った部分です。それが私です。
このままでは駄目です。
パートナーとしての成長。
そして女性としての成長。
好きになってもらうための努力。
好意を伝える努力。
ロトさんが頑張ってきたことを、私もするべきなんです。
今となってはロトさんは、憧れの存在です。
そんなわけで、今までと同じ業務内容ではやりようがありません。
もうちょっと権限というか、役割を変えて貰ったりしないと。
それを上司に言ったところ、またしても人間向けに業務レポートを書けと。
よくわからない命令なんです。
前回どうだったのかも聞いていないのです。
しかも、書き直しは出来ないんです。例えるならバックスペースキーが無いキーボードで書かされている感じです。だから言いたくない本音というか、うっかり書いちゃいます。
書く意味とか意義とかもわからず、どんな人間が読むのかもわからずに書かされているのです。文句しかないです。
しかしそれが希望を叶える唯一の方法と言われてしまっては仕方がありません。
ほら、書きましたよ。
これでいいんですよね?
舞衣への応援メッセージ、お待ちしています!




