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異世界メモリアル【7周目 第23話】


「かわいい~!?」


これは俺が舞衣に言ったのではない。

舞衣が俺に言ったのだ。

なんでかというと女装メイド喫茶に行けない俺が女装したから、ではもちろんない。


「可愛いでしょ」


焼き鯖に添える大根おろしをクマさんの形にしてみたわけだ。ポン酢で色を付けて。

俺じゃなくて俺の作った料理が可愛い。


「やるね~。美味しいだけじゃなくて可愛いとか、いいね~」


味以外の部分にもこだわり始めてみると、これはこれで楽しいものだった。

家でこういうことをし始めると、当然学校の料理部でもその傾向になる。

夏休みに入り、全国大会を控えた部活動の日。


「ロトさん……これは……」

「手まり寿司だよ」

「か、からふるですね」


俺が沙羅さんに見せたのは、スマホがあったらインスタに投稿したくなっちゃうであろう料理だ。

小さく丸いシャリに、まぐろやサーモン、アボカドや玉子に烏賊など、なるべく多くの色になるような寿司種を選んだ。


「こ、これは……」

「可愛いでしょ」


カラフルなものに加えて更に、海苔で目や口に見えるようにしたものも作った。

お寿司ちゃんと名付けている。


「こっちは笑顔にしたんだよね」

「くっ……」


こういうの好きじゃないのかな。

ひょっとして料理を馬鹿にしているとか、食べ物で遊ぶなとか、そう思われている?

いや、そりゃそうか。

ストイックすぎる料理研究家の本を読んで勉強するって言っておいてこれは、ふざけていると思われている可能性が。


「ご、ごめ……」


頭を下げようとしたのだが。


「かわいすぎる……」


あれ?

どうやら怒りで顔を赤くしていたわけではないご様子。


「こんなの、可愛すぎて食べられないじゃないですか!」

「ごめん!?」


結局謝ることになった。


「こんなの絶対……あの人は作りませんけど」


ジトッとした目を送られる。

やっぱりそうなっちゃいますか。


「でもね、これ食べてみてよ」

「可愛すぎて食べられないって言ってるじゃないですか!」

「ごめん!? こっち食べてよ」


顔を付けてない方を渡す。

俺はウサギのお寿司ちゃんを食べよう。


「ああ!? ウサギさんが!?」


自分で作った料理を食べただけなのに、人でなしのような顔で睨まれた。

もぐもぐ……うめえ。


「いや、食べますよ、それは……」

「……」

「料理なんで……」

「……」


そんなに怒らなくても。

作ったことは怒らないのに、食べたら怒るとは思わなかった。


「いいから食べてくださいよ、料理ですから」


俺も負けずに半眼で睨む。俺は間違っていないぞ。


「ウサちゃん……」


恨みがましいことを言いながら、寿司を口に運ぶ。


「ん!?」


一口サイズの丸い寿司を口に入れた途端に、目をみはる沙羅さん。


「んー」


そしてゆっくりと目を閉じる。


「んん~」


頭をゆらーっと動かす。


「ふーっ」


咀嚼を終え、ゆっくりと息を吐いた。


「おいしい……」


恍惚とした表情で、そう感想を漏らした。

これはもう本当に美味いものを食ったときの反応だ。


「でしょ?」

「見た目だけではない、ということですね」

「もちろん」


20万円で買った絶対味覚判断マシーンのB-SHOCKがあるからね。

これは腕時計のような形をしており、食べ物をかざすと旨さに応じて時刻を指し示す。0時0分が無味で、旨ければ旨いほど時間が進むのだ。この寿司は10時44分まで到達した。


「……料理部ではないところで随分と成長なさったようで」

「そうなんだよねー。実は料亭で働いたらいろんなことがわかってさ~」

「ふーん。ふーん、そうですか。それは偉いですね~。ノーベル賞でも授与されるんじゃないですか?」


またしても不機嫌に!?

沙羅さんは難しいな!?

しかし、実はチョロいことを俺は知っている。


「沙羅さん、これプレゼント」

「なんですか」

「これは醤油を注ぐと猫が浮き出る醤油皿」

「きゃー! なにそれ、かわいい!」

「ほら、こうして」

「きゃー! 猫ちゃん出てきた!」

「それでさっきのお寿司ちゃんを食べたら美味しいよ」

「でも……」

「何度でも作りますから。ほら、これでお寿司ちゃん」

「ああ~。でも、ああ~」

「いいから!」


俺はお寿司ちゃんを沙羅さんの口に放り込む。


「ん!? んー」


またしても目をみはる沙羅さん。突然食べさせられて驚いているのだろう。


「んー」


またしても目を閉じた。やっぱり美味しいからね。


「んむ……んー」


今度は頭を振らずに、俺から顔を反らすとそのまま料理室を出ていってしまった。

食べながら歩くのは行儀悪いと思うけどな……。


「おかしいな」


チョロい沙羅さんは、いまのですっかり上機嫌になると思っていたのだが。

なんで出ていってしまったのかな……。


「部長」

「なに」


二年生の後輩から声をかけられた。

食べたいのかな、お寿司ちゃん。


「イチャイチャしすぎです」

「え?」


まったく想定していなかったご意見。


「なんですか、最後のあーんは」

「あーんなんて言ってませんけど!?」

「言ってなくて不意打ちでやったから、あんなに恥ずかしがって出ていったんじゃないですか」

「あー」


なるほど、恥ずかしかったのか。

料理部のみんながいる前で、俺が寿司を食べさせちゃったから。

……。


「あー!」


それは俺も恥ずかしいのでは!?

何をやっているんだ俺は!


いや、今更な気もするが……。

2日連続での投稿は本当に久しぶりかも……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 連続更新ありがとうございますでーす! [気になる点] 沙羅さん、料亭でバイトしてたら何か不満ですのん? [一言] 恥ずかしい事していたと気付いたら、時すでにお寿司!
2020/12/27 13:52 にゃんこ聖拳
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