異世界メモリアル【7周目 第14話】
二年生の二学期といえば、そう、修学旅行だ。
きっと今回も俺が選んだ国に行けるだろう。
さて、今まではRPGやテーブルゲーム、シミュレーションゲームなどいろいろあったが今回はなんだろうな。
1.オヤシロさまとなって古代日本の村を救う世界
2.同人サークルを成功させる世界
3.アンティークショップを経営する世界
……待ってくれ……。わかる。いや、わかるんだけど。
これはいわゆる……葉っぱというやつでは……いいのか? いや、深くは考えまい。
俺は2を選んだ。
「うわー、わけわかんねえ~」
修学旅行でやってきた先が、一人暮らしの部屋というシュールな状況だ。
机にはトレス台だの羽ペンだのコピックだの、昔ながらの漫画執筆環境が用意されている。
やっぱりパソコンは無いんですね。
旅行のしおりを確認すると、二時間後に即売会があるらしい。描けるか、そんなもん。
「ふんふーん」
とはいえ、漫画のアシスタント経験もあるし、美術のステータスもあるので漫画は描ける。
ちゃちゃっと四コマ漫画を四ページ描きあげた。
部屋にコピー機が配備されているので、二〇部ほど作成した。
「第一回、まんがパーティーを開催いたします」
まんがパーティーね……
会場は階段を降りたらすぐという便利な状況だ。
「あー、へー」
思ってたよりは広い会場です。
うちの学校の二年生が全員参加するだけならここまで必要ないだろう。
どうやら、一般のお客さんも来場するらしい。
てんせーちゃんの手伝いで同人誌即売会の売り子をしたことがあるので大体は知っているが、自分が描いたものを頒布するというのは初めてだ。
「見ていってくださーい」
しーん。
てんせーちゃんのサークルではありえない閑古鳥。
そりゃそうだ……。
延々と本を渡し続ける売り子になるのは一部のサークルに過ぎない。
「ロ、ロトさんやっほ」
俺のサークルに最初にやってきたのは、実羽さんだった。
なんと、コスプレをしている! そう、まんがパーティーへの参加方法は描くだけではないというわけだ!
「似合ってるなぁ~」
「そ、そうかな」
実羽さんは女騎士のコスプレをしていた。似合うなんてものではない。
見た目だけは勝ち気な感じが好印象だ。
実際は心優しいところも女騎士としていいですね。
そして顔を赤らめてモジモジしている。うーん。
「オークにレイプされそうでいいですね……」
こんなことを言うのは言うまでもない。来斗さんだ。俺じゃない。
俺も思ってはいたけど。口に出してない。
「来斗さん、俺の耳元で変なことを囁くのはやめてくださいよ」
「素直な感想」
素直すぎるんだよなあ……。
実羽さんは来斗さんの視姦するような目線がつらいのか、早々に俺の本を持って立ち去った。ほんとごめんね。
「ロトさんはどんな陵辱モノを描いたの」
「いや、ほのぼの四コマですけど……」
「ああ、最初はそういう路線でほのぼのさせておいていきなり強姦の方が盛り上がると」
「いや、そういうつもりじゃないですけど……」
来斗さんはこういうとき、来斗さんすぎる。こんなことを言っているときが一番目を輝かせて楽しそうというのもどうかと思うが、創作というのはそういうものかもしれない。
「じゃ、新刊交換しよ」
「あ、はい」
驚くべきことに、小説ではなく漫画だった。
しかも絵は可愛らしい。女児が読むような絵柄だ。
「へー、てっきりエゲつないやつかと思ってましたよ……うわあ」
そう言いながらペラとめくったらとんでもないことになっていた。なんでこの絵柄でこんな地獄絵図が描けるんだ……。
絶望的な顔で来斗さんの顔を見るが、むしろいつもより健全な表情をしていた。怖い……。
「第一回まんがパーティーを閉会します」
パチパチパチパチ
みんなが拍手をする。お約束ってやつだ。
二時間で漫画を描き、一時間の即売会が行われる。これを二回やって今日が終わり、明日は四回、三日目に一回行って終了という日程だった。
こんな訳のわからない修学旅行にしてしまったことをみんなに詫びたい。
二回目に描いた漫画は来斗さんの影響を受けた。逆の意味で。もう虫も殺さない世界だぜ。心がぴょんぴょんするようなものを描くぜ。
「第二回、まんがパーティーを開催いたします」
二回目のスタートで、最初はやはり誰もいないので俺は見て回ることにした。
別に本を持っていかれて困ることもないので、ご自由にお持ちくださいと書かれた紙を机に置いている人も多い。
外に出てみるとそこはコスプレ広場だった。様々なキャラクターの格好をした人たちと、それに群がるカメラ小僧たち。
「むっほー! いいねいいね、姉ちゃん、エロいケツしてるね~」
こんなことを言うのは言うまでもない。てんせーちゃんだ。俺じゃない。
俺も思ってはいたけど。口に出してない。
「うっひょー、いいねいいね、小学生にしか見えないね~」
こんなことを言うのは言うまでもない。誰であるかを言うまでもない。俺は見なかったことにして立ち去った。
あんなやつは傷つけた状態で放置すればいいと思う……まじで……。
サークルに戻ってくると五冊ほど無くなっていた。まぁまぁか……。
その日はそれで終了。
翌日も適当に過ごした。
ちょいちょい本を欲しがる人がいて、ちょいちょい感想が貰えて、なかなか楽しい。
最終日は10ページ描けるようになったが……だからなんだという気がするので、うろつくことにした。壁サークルにならないと攻略できるキャラがいるわけでもなし……。
「ロトさん、新刊ありますよー」
呼び込みをしているのは来斗さん。
「じゃあ、交換……って、ええ!?」
俺が渡した表紙と同じキャラクターの表紙なんですけど。これは一体……?
「ロトさんの作品の二次創作です」
「なんだってー!」
まさか俺の生み出したキャラクターの二次創作が作られるなんて!
「もちろん陵辱モノです」
「なんだってー!?」
ちょっとページをめくったら俺のほのぼの四コマ漫画のキャラクターが大変なことに!
「……いや、でも嬉しいなこれ……酷い目にはあってるけど」
なんというか、作品的には愛を感じるね。プレイはエグいですけど。っていうか、修学旅行でフォーアダルトの同人誌を作るのはアリなんですか?
「ロトさんの新作も素敵ですね。レイプしたくなります」
「あ、そう……ありがとう……」
そういう作品じゃないと思うけど……まぁいいや。
とてもじゃないがみんなに見せられない表紙なのでトートバッグに入れます。
さて、他に知り合いはいないかな……。
「あ」
沙羅さんを発見。おとなしく座って声をかけているご様子。よし、俺が読もうじゃないか。
「見てもいいですか」
「あ、はい。もちろん……駄目です!? ロトさん!?」
一旦差し出した同人誌を引っ込める沙羅さん。
「いいじゃん、いいじゃん」
「駄目、駄目です」
ここまで抵抗するってことは、てんせーちゃんみたいにBLだったりして。
百合ってこともありえるな……。
「ん……?」
「あぁ……」
沙羅さんは抵抗を諦めたようだ。
そして中身は……料理部の女の子と男の子の恋愛ものだった。
既刊も含めて全部手に入れたが、これは間違いない。
この漫画は、俺と沙羅さんのラブストーリーだった。
修学旅行が終わると、折返しって感じです。
こっからが大変なんだーw




