異世界メモリアル【7周目 第11話】
先週は来斗さんとデート~♪
今週は沙羅さんとデート~♪
来週はてんせーちゃんとデート~♪
再来週は星乃部長とデート~♪
その次は義朝とデート~♪
ららるららら~らーら~!
「じとー」
別に浮かれているわけではないのに、ジトっとした目で見てくる妹。
休みのスケジュールはデートでパンパンだし、平日は料理部の部活動とバイトでパンパン。
もはやこれから何をするかなどという相談をすることもない。
だから舞衣がステータスや親密度を教えてくれている間に、うっかり適当な歌を歌ってしまったというわけである。
あまり驚くようなことはない。
【親密度】
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実羽 映子 [二度寝くらい好き]
古々路野 義朝 [まぁ、てんせーちゃんと三人でならアリ]
星乃 煌 [朝ごはんの納豆くらい愛している]
望比都沙羅 [ゴキゲン中飛車くらいの存在]
来斗述 [義朝君の恋人]
画領天星 [ロト×義朝]
―――――――――――――――――――――――――――――
あまり驚くようなことはない。
強いて言えば、義朝と俺は同じような感情を持っているんだなというくらいだ。
【ステータス】
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文系学力 130(+55)
理系学力 210(+99)
運動能力 247(+72)
容姿 265(+90)
芸術 113(+48)
料理 197(+132)
―――――――――――――――――――――――――――――
あまり驚くようなことはない。
強いて言えば、料理が上手くなっているけど、あまり結果が出ていないくらいだ。
舞衣が言うように胃袋をつかもうとしているが、義朝はデート中に他の女の子にすぐに目を奪われる。まったくもう! 俺だって女の子の方がいいのに!
毎度の定例はそんな感じで終了。
11月になってめっきり寒くなってきたから、舞衣のパジャマがくまクマ熊ベアーって感じになっている。カワイイ。見るからに温かそうで、魔王城でも熟睡できそう。
「どうするの」
どうするの、とは?
くまさんのパジャマだから、もふもふしていいという意味かな?
「ぼこっ」
パンチを食らった。
残念ながら熊さんのパペットではなく、ガチのグー。
「クリスマスだよ。どうするの?」
クリスマスか……。
確かに。
クリスマスはスペシャルなんだよな。
毎週違う女の子とデートに行っていても、クリスマスを誰と過ごすかは重要かもしれない。
「誘われたデートにふらふら行くだけじゃ駄目なんじゃない」
なぜだろう。
ギャルゲーで世界でモテているだけなのに、言葉に棘がある気がします。
昔はそれで褒めてくれたと思うんですけど。
でも、そっか、クリスマスか。
「う~ん」
沙羅さんとクリスマスケーキを作る?
星乃部長のクリスマスパーティーに出席する?
それとも、てんせーちゃんとイベント?
来斗さんをレイプ?
いや、ここは義朝とついに結ばれるか……聖夜を言い訳にして……
「結ばれるな! 聖夜を汚すな! 言い訳になってない!」
パンチを食らった。
さっきの三倍のパワーで、三回の打撃。激痛。
「いてて……だが、正気に戻ったぞ。あぶねえ、間違えるところだった……」
「間違え過ぎだよ」
「いつの間にこんなツッコミの腕を上げたんだ」
「お兄ちゃんのボケがひどすぎるんだよ!」
がおーっと、熊のポーズで威嚇する妹。
うーん、らぶりー。
そうだ。
「舞衣と一緒にいる」
「ふえっ!?」
そうだ、そうしよう。
「クリスマスは愛する人と一緒に過ごす日だ」
「あ、あ、愛する……」
舞衣はくまさんのフードを目深にかぶった。表情が見えない。
もともとクリスマスなんて家族と過ごした方が良いんだ。
デートの誘いを複数から受けてしまって、断っていたら絶対に心証が悪い。
沙羅さんにクリスマスデートの誘われたときに、てんせーちゃんとデートするから無理って断るような勇気は俺にはない。
だが、舞衣は別だろう。
クリスマスは家族と過ごすんだ。
それなら誰であっても非難することはない。
親密度が下がることはない。
俺が妹ラブなことは公然の事実だから、みんなそれならしょうがないと納得するだろう。
「ロトはさぁ、その、さぁ、聖夜を言い訳にして、妹と過ごそうとしてるわけ?」
「ん?」
どっちかっていうと、妹を言い訳にして、聖夜を過ごそうとしているけど。
それにしたって義朝と二人でクリスマスを過ごそうなんて愚かな考えに至ったものだ。
あくまでもノベルティが目当てなのであって、勘違いしてはいけない。
っていうか、今、お兄ちゃんじゃなくてロトって言った?
「な、なんか、欲しい物があるわけ?」
「ん?」
そりゃある。
えっちなノベルティだ。
どれだけ欲しいかと言うと、男とデートしてまで欲しい。
「えっとー? んー? そういうのが欲しいってことか……」
「んー?」
舞衣は勝手に何かを理解したような顔をした。
昔から妙にカンが良かったり良くなかったりするし、俺のことをわかってるようなわかってないようなことが多い。
クリスマス当日。
朝、枕元にはプレゼントが置いてあった。
それは舞衣のセクシーなブロマイドだった。
「お、おおお。おお~」
これ、マイクロビキニっていうの?
すっご……すっご……。
「しかし、まいったな」
なんてこった。
これのお返しって、どうすりゃいいんだ。




