異世界メモリアル【7周目 第8話】
スネークを監視し続けて、はや2ヶ月。
いっつも影を追うだけで、まったく捕まえられなかったのだが、その謎が解けた。
「何をやっているんです、スネーク。いや、来斗さん」
「見つかっちゃった」
昨日、文系学力が上がって来斗述との出会いイベントをし、毎度おなじみのエロエロな下着を見たのだが、今ようやく捕捉したストーカーのスカートの中身もどエロだ。白と黒、どちらもいいですね。
「ずっとてんせーちゃんをストーキングしてたんですか」
「てんせーちゃんは非卑猥ですからね」
あんたほどじゃないけどね?
てんせーちゃんは胸も大きく、結構グラマーだが、明るい色気であり、グラビアアイドルのような感じであって、そんなにエロエロというわけではない。
来斗さんは胸は小さいしスレンダーだが、目つきから何から不健全なエロさが漂っている。
「いつてんせーちゃんがレイプされるかもしれないと常に見張っていました」
おっと。
そういう心配からだったのか。
だとするとストーキングであっても、むしろ守られていたと。
「いつでもレイプシーンを録画できるようにビデオカメラを持っています」
「最低だな!?」
そういう人だった。
パンチラスポットを知り尽くしているんだよな。
「やっぱりてんせーちゃんのスカートも破いておけばよかったですかね」
「それだと事後なんだよ! 事前じゃないんだよ! 自分もそれでレイプされなかったよね!?」
「えっ、なぜそれを……」
「妹のスカートを渡してあげたのは俺なんですよ」
「そうでしたか。あれはロトさんの妹のものなんですね? それは非常にエロティックですね」
「やめてね? 売ったりしないでね?」
「そんな勿体無いことしませんよ、ふふふふ」
伝えてはいけないことを伝えてしまった……。
「ロトさんもMEGAMI☆てんせーのリスナーでしたか」
「うん。毎週聞いてる」
「ラジオのノベルティもすっごく淫靡ですしね」
「やっぱり、ほのぼのレイプさんも来斗さんなの!?」
「ふふふ、ほのぼのレイプもスネークも私です」
「羨ましいいいいいい!」
ほのぼのレイプさんはふつオタだけじゃなくてボーイ・ミーツ・ボーイのコーナーも何度もハガキを読まれているからね!
てんせーちゃんをストーキングしてえっちなノベルティもゲットするなんてズルいよ!
「文芸部ですので」
そうか、文芸部だからフィクションが書けるんだ。そっちの方が良かったじゃん!? なんで実際に男とデートするために料理部に入るなんてバカなことを! 遠回りにも程があるだろ!
「それでは」
「待て待て待て」
「なにか?」
なにか? じゃないでしょ。
「いや、ストーカーですよね?」
「なにか問題でも? そもそも本人に伝えてますし」
確かに……嫌がってないんだよな本人。まったく。
「それに誰かをずっと見張るのが駄目だというなら、ロトさんは私のストーカーだったわけですよね?」
確かに……いや、確かにじゃねえよ。
「それはストーカーを捕まえるためだから。正義だから」
「私は本人に言ってるわけだからストーカーじゃないですよね」
「ん……?」
「そして、ロトさんは知らないうちに私をずっと見ていたわけですよね」
「んー」
「出会う前からずっと見ていたわけですよね。女子高生を」
「いや、それは知らなかったわけだし」
「しかも下着まで見ましたよね」
「それは偶然だし」
「やっぱり見てたんですね! 変態!」
「引っ掛けたなー!?」
「では、ハガキに書きましょうか? てんせーちゃんへ、てんせーちゃんと同じ学校に通う女子高生なのですが、ずっと私をストーキングしていた男子がいて、下着も覗かれました。その男子の名前はロトと言います」
「やめてください、お願いします」
「ロトさんの妹さんにも聞かせたいですね」
「わかった、わかりました。なんでもしましょう。俺は来斗さんのしもべです」
おかしい。
なんで俺がてんせーちゃんをストーカーしていた犯人のしもべにならなきゃいけないのか。
こんなの絶対おかしいよ。
「さて、今週はまずプロレスに連れて行ってください」
「えっ? いや、今週はバイトをしないと」
「妹さんの名前は舞衣ちゃんでしたっけ」
「バイトは休みます」
借金があるのに……。
「来週はホラー映画です」
「来週はまずいんです、星乃部長とデートなんです」
「舞衣ちゃんへ。あなたのお兄さんは私のストーカーで」
「わかった、わかりました。ホラー映画ですね」
星乃部長のデートをキャンセルとか絶対やばいよ……。
「再来週は」
「再来週は勘弁してください。義朝との初デートなんですぅ」
「えっ?」
「ボーイ・ミーツ・ボーイのために男とデートするんですぅ」
「なるほど。どこへ行くんですか?」
「プールですぅ。男同士で水着デートですぅ。お弁当作っていきますぅ」
「それはそれは。なら再来週は義朝さんとの男同士のデートを楽しんでください。リスナー同士ですからね」
許可されたー!
やったー!
義朝とのデートは許可されたー!
何この気持ち。
絶対にいろいろおかしいよね。
しかし、昨日出会ったばかりの来斗さんからこんなにデートの誘いを受けるなんて。
やっぱり色男っていう属性はとんでもないぞ……。




