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異世界メモリアル【第22話】


「いい感じにブスに描けてるわね~、素晴らしいわ」


俺が一生懸命可愛く描いた教室のモブキャラに対する評価がこれである。

褒められて、これほど嬉しくないことがあるだろうか。

BL漫画家のアシスタント、マジでつらいことばかりだぜ……。


そして週末が過ぎ、ステータス確認がやってくる。


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 136(+11)

理系学力 121(+10)

運動能力 133(+4)

容姿   148(+3)

芸術   71(+14)

料理   153(+9)

―――――――――――――――――――――――――――――


うわ~、想像以上に芸術上がってる~。

これじゃ辞められない……。


「バイトの効果があって良かったねお兄ちゃん」


良くねえ……。

辞めたかった……。


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

実羽じつわ 映子えいこ [チョコくらい好き]

望比都沙羅もうひと さら [プレゼントくらいの存在]

次孔じあな 律動りずむ [一番お返しが欲しい男子かも!?]

寅野とらの 真姫まき [まじ初めて家族以外にチョコあげちゃったぜ]

―――――――――――――――――――――――――――――


――やべえ、もうこの親密度の確認やべえ。

赤面しちゃうんだけど。

ミジンコとか言われてたときは何だよと思っていたが、もはや幸福の時間だよ。


「これ、お兄ちゃんどうするの?」


? どうするのとは?

俺が当惑していると、次のセリフを紡いだ。


「誰にホワイトデーのお返しするの?」


え”っ!?

ま、まさか誰かにしか(丶丶丶丶丶 )あげられないのか?


「みんなにお返しするというのは如何でしょうか?」


妹に対して低い姿勢でお伺いを立てる俺。


「その場合は、全員が義理だと認識して少しも進展しないね」


な、成る程。


「ちなみに、2人か3人に返した場合は?」

「貰えなかった娘の親密度が急降下する」


ありえない選択肢だな。


「舞衣にだけ返すというのは?」

「……だから私はそういうんじゃないから」


プイと顔をそらす妹。

表情をうかがい知ることはできないが、呆れているのだろう。


……なんということだ。

誰か1人にお返しをする。

そういうイベントなのだ、これは。


ここまで俺は出会った4人について、誰かを選んでいない(丶丶丶丶丶丶丶丶丶 )

ゲームであればこの選択は遅いほうだろう。

ルート選択。

普通はもっと早くする行為。

この時点でルートが確定するわけじゃないと思うが。

そもそも俺は今、誰かを選ぶことができるのか?


「ちゃんと考えておきなよ」


懊悩する俺を置いて、舞衣は部屋を出ていった。


ギャルゲーなら、今回は(丶丶丶)このキャラにしよう、となるよな。

それはクリア後に、またニューゲームがあるからだ。

次は他の娘を攻略するという前提がある。

つまり最初に攻略するキャラクターを選択するだけに過ぎない。


いいじゃないか、そのくらいの感覚で選べば。


……。

選べねえよなあ……。

ゲームに似てるだけで、ゲームじゃないんだもの。


月曜の朝。

ホワイトデーまで、あと4日だ。

登校する最中も、俺の頭の中はぐるぐるしていた。


今日は料理部があった。

沙羅さんと一緒に新しいメニューを開発する。

と言っても俺からすると再現になるのだが。

本日はコロッケである。

じゃがいもに似たものは発見済みだ。


「茹でて潰してから揚げるなんて、よく思いつくな」


感心したように俺を見る。

俺も最初に考えた人は凄いと思うよ。

芋をこねながら沙羅さんは俺に話しかけてきた。


「最近は料理が楽しいと思えるようになってきた。君のお陰だ」


こねている芋だけを一心に見つめながらのセリフ。

やや頬が赤くなっているようにも見える。


こ、これは……。

物凄くルートに乗った気がする!!

沙羅さんにお返ししようかな……。

俺はコロッケを揚げながらそう思っていた。



翌日。

ホワイトデーまであと3日。


「ロトー、悪いけどさ、勉強教えてくんない?」


俺の教室までやってきて、目の前に大きな胸を見せつけながらお願いしてきたのは真姫ちゃん。

あろうことか俺に勉強を教わろうとは不思議な方である。

視線をなんとか胸から外して真姫ちゃんの顔を見た俺は、当然の疑問を口にする。


「なんで俺に?」

「いや、元から勉強が出来るやつに聞いてもわかんねーんだよー。夏休みはバカだったのに最近普通くらいになったロトなら、バカにも教えられるじゃねーかなーってさ」


わからないでもない。

運動神経良すぎる奴って教えるの下手だもんな。

でも俺の成績が上がっているのは”萌える参考書 ~ねえ、妹と暗記しよっ~ ”のお陰なのだ。

これを紹介するほど俺は勇者ではない。


「とりあえずわかんないとこを聞こうか」


聞いてみると、俺も参考書を読む前にはわからなかったところだった。

丁寧に説明する。


「すっげ~! よくわかるぜ、ロトは先生に向いてるんじゃね?」


目を輝かせて俺を覗き込む真姫ちゃん。

恥ずかしくなって視線を落とすと、そこには爆乳がある。

余計に顔が赤くなった。


やっぱり、真姫ちゃんに返そうかなぁ……。






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