異世界メモリアル【7周目 第5話】
「お兄ちゃん、待望の~、ぱ! じゃ! ま! ターイムッ!」
さっき夜ご飯を食べてたときとまったく違うテンションだが、慣れてきた。
それより今日はあまりにも言いにくいことがあって、目を合わせづらい。
「パジャマだよ! ぱ! じゃ! ま~!」
目を合わせづらい。
「嘘でしょ……パジャマくらいじゃもはや駄目なの……」
なんか舞衣がいきなり小さな声でぼそぼそ言い始めたのでよく聞き取れない。なんで突然テンション下がるんだろ。
「そんなことより、相談したいことがあるんだけど」
「そ、そんなことより!?」
どんなことかは知らないけど、俺がいまから相談することは今までとはちょっと違うからな。
「まぁ、とりあえず先にいつものを済ませようか」
内容が内容なので、ちょっと心の準備が必要だ。
【親密度】
―――――――――――――――――――――――――――――
実羽 映子 [鶏の唐揚げとハイボールくらい好き]
古々路野 義朝 [まぁ、舞衣ちゃんが妹になるならアリ]
―――――――――――――――――――――――――――――
義朝―――――――!?
なんで攻略できるんだよ―――――――!
しかもアリなのかよ―――――――!?
いや、アリでいいのか。
むしろナシじゃ困るのか。
てか、なんで結婚しようとしてんだよ。気が早いだろ。いや、気が早いっていうのもおかしいな。
「お、お兄ちゃん」
舞衣はひくひくと頬を引くつかせている。
「いや、舞衣を義朝の妹になんかさせないよ?」
「当たり前でしょ……」
よれよれのパジャマで肩を落とす妹。
うーん。言いづらい。
「ゴホン、えー」
「ん……?」
俺が今からそれを言ったら驚くだろうな。
うう。恥ずかしい。
「実は、舞衣。本当に言いにくいんだけど」
「ん? うん。いいよ。大丈夫だよ」
「これを言うのは恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがないんだけど」
「うん? うん! うんうん! イイよ! 言っちゃいなよ!」
「なんというか、攻略っていうのとはちょっと違うと思うんだけど、とりあえずデートしたいっていうか」
「うんうん。んふふふ。そっかそっか」
なんだ?
なんで嬉しそうなんだ?
俺がこれから言うことに想像がついている?
いや……だとしたら……舞衣は……そういうことか……。
「義朝とデートしたいんだ」
舞衣はてんせーちゃんと同じ属性だったのか。
俺と義朝のイチャイチャが見たい、知りたい。そうだったのか……。
「え。え? うん? はあ?」
あれ?
舞衣は何を言っているのかわからない、というような表情になってしまった。こんな顔は初めて見た。口がだらしなくぽかーんと開き、目がうつろだ。
「舞衣?」
目の前で手をひらひらとさせる。意識は大丈夫なのか。
「もしかして興奮しすぎたのかな。尊死ってやつか? そんなに俺が義朝とデートしたいということに興味が……」
「ち」
「ち?」
「ち、ち、ち」
「ち、ち、ち?」
「ちっが―――――――う!」
「わあ」
違ったらしい。
「なんで! わたしが! それで喜ぶのよ! 女の子の攻略を応援する役割!」
「いや、だって。同性愛もねえ。恋愛なわけだし。そういうの認めていく時代だし」
「そうだけど! それはそうかもしれないけど!」
大変だ、なんか知らないけど落ち着いてくれ。
「違うんだって。別に俺は義朝が好きとか攻略したいとかじゃないんだって。ただデートしたいだけなの」
「なおさら悪いわ―――――――!? だったら、もっと、デートしたい人がいるはずでしょっ!?」
ん?
誰のことだろ。
今はとにかくノベルティを貰うことしか考えられない。
「なんで、なんで義朝!?」
舞衣さん、呼び捨てになってますよ。まぁ、義朝だからいいか。
「いやー、その理由を話すのがちょっと恥ずかしくて言いにくい……」
妹にえっちなノベルティが欲しいんだっていう相談をすることほど恥ずかしいこともないだろう。
「義朝とデートしたいって言う方がよっぽど恥ずかしいでしょ!?」
なんてことを言うんだ。
でも本当にそうだな。舞衣の言うとおりです。
「こんなことを相談できるのは舞衣だけなんだ」
「うーん。なんか喜べない」
「実羽さんでもこれはさすがに相談できないよ」
私より義朝とデートしたいってどういうことだ、と怒り出すだろう。
「むう……そもそもなんで義朝」
やはり理由を言わざるを得ないのか。うーん、言いたくない。
「なんというか……普通に攻略できる相手とだけデートしていいのかなって」
「ん? 続けて」
「普通に考えたら、来斗さんか沙羅さん、もしくはてんせーちゃん。三択になるよね」
「続けて」
「本当にそれでいいのかなって。三人から選べばいい。そういう考えでいいのかなって」
「うんうん。素晴らしい」
なぜか、賛同を得られた。
「そういうことなら、ひと肌脱ごうかな」
本当はてんせーちゃんが脱いだものが目当てだとは言えない。
「お兄ちゃん、男がどういう女の子に弱いか知ってる?」
「巨乳?」
「……そうだっけ?」
真姫ちゃんはね、それはそれは素晴らしいものを持っていたんだよ。
「男は巨乳に弱い」
「違います」
違いますって。なんで舞衣がそんなこというの。俺が男なんだけど。おっぱいは正義。
「違います。大きいからいいというものではありません」
「あ、うん。ごめん」
「なんで謝ったんですか」
明らかに怒ってるからです。
「いいですか。昔から男を落とすには胃袋を掴めと言われています」
「あ、ああ。そうだね、言われているね」
「真心を込めた美味しいお弁当で誘惑するんです」
ふうむ。
仮に義朝が真心を込めた美味しいお弁当で誘惑してきても、気持ち悪いだけなんだが。
しかしここで舞衣に反論することはもはや不可能。
そもそも俺が巨乳になるわけにもいかないし。
【ステータス】
―――――――――――――――――――――――――――――
文系学力 75
理系学力 111
運動能力 175(+12)
容姿 175(+10)
芸術 65
料理 65
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「料理を上げるには?」
「料理部に入る、だな」
こうして俺は、沙羅さん関係なしに、義朝とデートするために料理部に入ることになった。
放置していた「異世界で販促って、反則ですか?」を本格的に書いていくことにしました。よろしければ、ぜひそちらも読んでみていただけますと幸いです。
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