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異世界メモリアル【6周目 第26話】


「あっはっは! いいね、遊園地! たのしー!」


似ている。

先週、同じ遊園地に来た次孔さんは、


「あはは! 楽しいね! やっぱいいね、遊園地」


と言っていた。ほとんど同じだ。

今日のデート相手は次孔さんの母、ハルミ・次孔・レジーナさんだ。

背もほとんど同じで、髪型もほとんど同じだ。声も似ている。


「んっふふー。ホストなのに店外デートが遊園地だって。かっわいいの」

「子供扱いしないでくださいよ、ハルミさん」


ハルミって呼んでと言われているが、さすがにハルミさんにしてもらった。


「くふー。かわいいじゃなくてカッコイイって言われたいのねー。男の子だねえ~」

「完全に子供扱いしてんじゃないですか」


しかし頭をなでなでされるとどうでもよくなる。

大人の包容力……初めて知る魅力……おっと、いかんいかん。


「あ! あれ! あのコロッケ買おう」

「あー」

「どしたの、ロトくん」

「いえ」


次孔さんも同じようにハイテンションでコロッケを買おうとしたんだよな。

ほんと似たもの親子じゃん。


「この遊園地のコロッケは美味しいんだよね」

「ですね」

「あ、知ってるんだ」

「ええ」


あなたの娘さんに教えてもらったので。


「ふぎ、ふぁれ、ほろ」


ほら、コロッケを食べながら次のアトラクションの提案をしてくるところもそっくりじゃないか。

年甲斐もなく、コロッケを頬張ってジェットコースターを指差しているところは大人の女性というより女の子って感じだ。

今日はハイヒールとドレスじゃなくて、スニーカーとブルージーンズにグレーのパーカーっていうのもアクティブで若々しい。

さて、この行列の間にどれだけ聞き出せるか。


「えとー、ハルミさん」

「なーに?」

「家だと何をして過ごしてるんですかね」

「何もしてないわね」


……。

次孔さんに母親は家で何をしてるのかと聞いたら「知らないけど、何もしてないんじゃない」と言っていた。裏が取れた……いらないなこの裏。


「じゃあその、お仕事は」

「何もしてないわね」


これも次孔さんが言ったとおりか。

本当にしてないのかよ。


「じゃあ、その……」

「男よ? 収入は」

「あ、あ」

「こんなデートなんてしないけど。ベッドで慰めるだけ。医者と演歌歌手」

「うわうわ」

「あら? 想像しちゃった?」

「い、いえ」


6周目のギャルゲーの世界だが、こんな大人の会話は初めてだ。


「ふふ、かわいい。お金払っちゃう側もたまにはいいかしら」

「や、やめてくださいよ」

「あら、オバさんフラれちゃった?」

「そんなことはないですけど」

「あら、嬉しい」


サービスとばかりに、俺の腕を取ると胸に抱いた。

そこまで大きいわけじゃないけど、上腕に確かに感じる。

嬉しいけど、これは彼女としてじゃない。

次孔さんの、お母さんとしてだ。

それを忘れてはならない。


「むぎゅむぎゅっと」


忘れてはならない!

決して忘れてはならない!


「あれ? 嬉しくない? やめる?」

「いいえ! とても嬉しいです!」

「素直で良い子ね~」


えへへ。

――えへへじゃない!

あやうく大人の女性の魅力にやられるところだった!

あぶないあぶない。

決して忘れてはならないんだってば!


「普段は男としては枯れたじじいばっかり相手にしてるから、若くて元気な男の子が嬉しくって」

「そそ、そうですか」

「どう? 元気になっちゃった?」

「な、な、なんのことでしょう!?」


動揺する俺に、くふふとちょっと意地悪く笑った。

からかわれている。

次孔さんはこういうことはしないなあ。


「あ、ジェットコースターの順番が来ましたよ」

「あら、残念ね?」


ジェットコースターの行列に並んで、順番が来るのが残念なわけがない。


「お先に」


掴まれていた腕が離れる。

……残念なわけがない!


「たかーい」

「そっすね」

「はやーい」

「そっすね」


ジェットコースターは楽しかった。もちろん楽しかった。

言うまでもなく当然のことだが、あえて言ってみた。


「次はどうしよっか」

「どうしましょうね」

「あれ、全然並んでないね」

「あれはやめましょう」

「こっちは大人気みたいね」

「これにしましょう」


列に並ぶ。

アトラクションが何かよくわからないが。


「うふふ。なんか並ぶのが目的みたい」

「そんなことはないですけど」

「この組んで欲しそうに出している腕はなぁに?」

「組んで欲しいんです!」

「ほんとに素直で良い子ね」


ふー。

左腕が収まるべきところに収まったな。

もはやこうじゃないと落ち着かない。

いや、別にそれが目的なわけじゃなくてですね。

もちろん次孔さんを攻略するためにですね、情報収集をするのが目的のデートだからです。

アトラクションが何でもいいのはそういう理由に他ならない。


「ハンサムなのに、体結構がっちりしてるのね~」

「ええ。ボランティアやってますから」

「ボランティアって筋肉つくの? 知らなかったな~」


あんまり向上しないですねステータス。


「ねえねえ、ロト君のこともっと聞かせてよ~」


それは困りますね。

これは次孔さんを攻略するための情報収集が目的ですからね。ええ。大事なことだから何度でも言いますよ。


「ボランティアって活躍したの?」

「一応、世界一です」

「えー! 世界一!? なにそれ、スゴいじゃなーい!」

「あはは、それほどでも、ありますね」

「ちょっと聞かせてよ~、むぎゅむぎゅ」


その日、情報収集は失敗した。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 文春されたらえらいことやで~w [一言] ロトくんに一言言いたい。「ボインはぁ〜赤ちゃんが吸うためにあるんやでぇ〜、ロトちゃんのもんとちがうのんやでぇ〜」
[気になる点] 名前から察するに、次孔さんの母親はハーフかクォーターかな? 結局、何も無く終わる話なので、母親とのデートは一話まるまる使わなくても、半分くらいで良かったのでは? と言う感じはしますね…
2020/07/05 10:02 にゃんこ聖拳
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