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異世界メモリアル【第2話】

ハァハァハァハァ……。


し、死ぬ……。

1回死んでるのに、また死ぬ……。


俺は毎日地獄のトレーニングを行っている。

高校1年生らしき存在なのに、まともに学校に行くだけの体力もないからだ。


腕立て伏せ1回も出来ないのに100回やれという無茶苦茶な要求に応えない限り、俺の運動能力は上がらないらしい。

普通に歩くこともままならない俺は、毎日4km走っていた。

5時間かかります。


成長はかなり実感できる。

昨日より今日の方がまともな運動能力があるとわかる。

初日はまともに歩けなかったレベルなので、日々の成長はわかりやすい。

腕立ては少しでも腕を曲げれば一応やったとみなされるようだ。


そしてノルマをこなさないと成長しないこともわかった。

大雨だったのでさすがに4kmも走れないと諦めたが、翌日成長してない実感があった。

この世界、マジで容赦ねえよ。


学校に行っていたらノルマがこなせないので、俺は入学式以来不登校であった。

どうせ文字も読めないし、学校にいっても仕方ない。

とはいえ不良になっちまったらやべえよなあ……。

不良になる条件で出会う女の子とか怖いし……。


そんなことを考えながらジョギングをこなした。


今日で1週間たつ。

おそらくまた妹が部屋を訪ねてくるに違いない。

それだけを生きがいにしていたぜ。


今日も旨いけどなんだかわからない謎の夜飯を食って、風呂に入ってから部屋で待っているとやはりドアがノックされた。


「お兄ちゃん、今いいかな?」

「もちろんだ!」


全力で待機していたので、即答した。


「おじゃましまーす」


舞衣がドアを開けて入ってきた。

あらいぐまのフードのついた、きぐるみチックな部屋着を着ている。

先週の黄色いパジャマも良かったがコレもやべえええ!

袖が余ってて手がちょっと隠れちゃってるとこも可愛すぎ!

舞衣はなぜか家でもずっと制服を着ており、風呂の後はすぐに部屋にこもってしまうので部屋着は非常にレアなのである。

ちなみに飯食ってるときにステータスや親密度の話をしても、何も説明してくれなかった。


「さて、お兄ちゃん。現状を確認するね」


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 5

理系学力 9

運動能力 11(+6)

容姿   18

芸術   7

料理   2

―――――――――――――――――――――――――――――


「うん、なかなか頑張ったね、お兄ちゃん」


褒められた。

なかなかなんてもんじゃなかったけどな!

地獄だよ、地獄。


一週間で上がるのはこの程度か。

やっぱ初期パラメータ低すぎじゃね?


「次は親密度を確認するね」


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

実羽 映子(じつわ えいこ) [誰だっけ?]

―――――――――――――――――――――――――――――


「今はこんな感じだね」


忘れられてますね。

……まぁ学校行ってないしな。


「舞衣さぁ、12人の妹が全員攻略できるゲームもあったんだけどさぁ」


俺は舞衣を諦めきれなかった。


「何言ってるのお兄ちゃん。妹が12人もいるわけないでしょ?」


――それを言っちゃあ、おしまいですよ。

みんなそう思いながらプレイしてたんですよ。


「ところで今週は何をするの? 私としては料理を頑張って欲しいけど。今週はお兄ちゃんが料理当番だからね。」


そうか。

料理は2なので、相当深刻に違いない。

運動能力もまだ全然足りないし、文字も読めないんだが、可愛い妹にクソまずい飯を食わせるわけにもいかないな。


「わかった、料理を頑張るよ」


やったっ! と小さくガッツポーズをする舞衣。

超カワイイ。

ちきしょう、攻略してえ。


翌朝。

料理のノルマはそこまで時間がかかるものではなかったので、俺は久しぶりに登校した。

まだ階段登るのキッツいけどな。


授業は何を言ってるのかわからないようなことはなかった。

日本語だからなあ。

でも歴史の登場人物などは誰一人知らん。

社会情勢も全く異なる。

これは相当勉強が必要だぞ。


「ロト、お前部活どうするんだ?」


義朝よしともが話しかけてきた。


部活!

そうか、部活か。

生前の俺は部活に所属したことがない。

ひたすらゲームをしていたかったからである。

この世界では俺はリア充を目指すわけだから、部活に入ったほうがいいだろう。

おそらくパラメータも上がるに違いない。


「部活ってどういうのがあるんだ?」

「あぁ、お前説明会休んでたもんな。風邪か?」


登校する運動能力がないなんて言えねえ。

妹の出したノルマをこなすために不登校だった、なんてもっと言えねえ。


「まぁそんなとこだ。部活教えてくれ」


運動部系と文化部系といくつかあったが、基本的に日本の高校と同じ感じだった。

料理は全く異なるが、スポーツや音楽なんかは同じなんだな、この世界。

料理部っていうのもアリかもしれない。


「ところで、実羽さんの所属してる部活知ってる?」


同じ部活に所属するのは一番好感度上げやすいからな。


「ボランティア部だぜ。なにお前、実羽さんのこと狙ってんの? わかるぜ、超美人だもんなー」


ボランティア部だと。

パラメータ上がらなそうだなあ。

カルマが下がりそうだが、そういうステータスないし。

にしても実羽さんはギャルっぽい見た目なのに、ボランティア部なのか。


俺はお婆ちゃんとかに優しくしている実羽さんを想像した。

いいなあ。


しかし現実を鑑みるに、やはりステータス上昇が期待できるものでないとなあ。

運動部がいいような気がするなあ。

悩みつつ帰宅する。


「お兄ちゃん、料理部がいいんじゃないかな?」

「わかった、料理部に入るわ」


その日の夕食のとき、俺はあっさり料理部に入部を決めた。

舞衣のお願いを断ることなどできない、のも理由としては充分ではあるがそれだけではない。


今日から料理当番になったものの。

正直、料理は全くできなかった。


食材が全く違うし、調味料も全くわからない。

包丁とか鍋とかはさすがに同じなんだが、レンジがないしなあ。

またインスタント食品みたいなものがこの世界にはない。

ちなみにコンビニや弁当屋もない。


料理の特訓としては、舞衣から野菜の説明を受けるだけだったが、基礎知識がなさすぎる。


結局茹でた野菜にドレッシング的なものをかけたのが精一杯だった。

ギャルゲーっぽい世界なのに、日常生活をおくるための難易度が高すぎる。

女の子とイチャイチャする時間が全くないっつの。

マジでクソゲーだぜ、この世界。


翌日、俺は料理部に訪問した。

そして思った。

やっぱこの世界、神ゲーなんじゃね?


「わたくし、料理部の望比都沙羅もうひとさらと申します。1年生はわたくし達だけのようですね、よろしくお願いいたします」

「よ、よろしくお願いいたします」


やはり部活に入った途端に、超絶美少女に出会うことが出来た。

涼やかで優しい目元に、泣きぼくろが一つ。

上品さと気立ての良さが、もう見た目に溢れちゃってる感じ。

長い黒髪を丁寧に編み上げてアップにしている。

今までうなじが色っぽいなんていうのは高校生の俺には理解できなかったが、今わかったぜ。

旅館の美人女将を、15歳にして制服着せるとこうなるだろうか。


「料理がお好きなのですか?」

「い、いえ両親が海外に行ってしまいまして。やったことがないものですから、料理ができるようになりたいと思って入部いたしました」


なぜか敬語になってしまう。

相手が敬語なこともあるけどさ、美人相手だと緊張しちゃうんだよな。


「ふふ、料理ができないのに料理部に入るなんて面白い方ですねぇ」

「え? 俺面白いですか? あはは」


目が笑っていない。

これはつまり、アレだ。

皮肉ってやつだ。

京都の人が言うと言われている、ぶぶ漬けでもどうどす? みたいな。

よく考えてみれば、俺の今のステータスで好感度が高い訳がない。

俺はこの世界の理を理解しているはずだったが、調子にのっちまったようだ。

料理部の女の子であれば、当然料理が出来れば出来るほど評価が良いに決まっている。


よっしゃ、部活を頑張ってやろうじゃないの。



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