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異世界メモリアル【第19話】


「気がついた?」


――正直なところ、その声で気がついた。

何やらとても暑い。

どうやらストーブの近くで、毛布をいくつもかけて寝かされているようだった。


「……ごめんなさい、あと、ありがとう」


反省している顔で話しているのは……次孔さんだった。

はっ!?


「トラさんは!? どうなった!?」


競技中なのに俺を助けてしまったような気がする。

俺はがばりと身体を起こす。


「真姫ちゃんでいいぜ」


声のした方を向いたら真姫ちゃんが居た。

制服に着替えている。


「トラっちはリタイアになっちゃった」


しょんぼりと言う次孔さん。


「その事はもういいって言ったろ? むしろみんなから拍手されるわ市長から表彰されるわで困っちまうぜ」


ぽりぽりと頬をかきながら、真姫ちゃんはぼやいた。


「この件は誰も悪いことしてねえんだ。もう気にすんなよ」

「トラっち~」


次孔さんが真姫ちゃんに抱きつく。

真姫ちゃんは頭を撫でて、よしよししていた。

う~ん、なんか良い光景だな。


「っきし!」


うーん、もう暑いのにくしゃみが出た。


「ロトっち~」


くしゃみで俺への罪悪感がぶり返したのだろうか。

真姫ちゃんに抱きつくのと同じ流れで、次孔さんが俺に抱きついてきた。


っておい!

いいのかよ!?


「ごめんね、ありがとね」


俺の心臓の近くで謝罪を述べる次孔さん。

体温と吐息が俺の身体をくすぐってくる。

うう……。

そもそもクソ暑いのに、さらに体温が上昇していく……。

しかしここで引き剥がしては次孔さんの謝罪の気持ちを受け取らなかったことになる。

やるしかないのかっ!?

この流れではやるしかないのかっ!?


俺は、次孔さんの頭を撫でて、よしよしをした。

――なんなんだこの恥ずかしさは。


頭を撫でられて、目を閉じる次孔さん。

まつげの長さがわかるほどの距離だ。

間近でみても完璧な美少女。

そんな女の子が今、俺に抱きついてるのである。


脈拍が異常に高鳴り、それが伝わってしまいそうで尚更恥ずかしくなる。

恥ずかしさのスパイラル状態。

プールに落ちたときよりも、死に近づいているかもしれない。


息ができないくらいドキドキしていた。

思い出したかのように、息を吐いて、胸元から目をそらす。

そこには両手を組んで、うんうんと頷いている真姫ちゃんがいた。


「――真姫ちゃん」


許可が出たので、真姫ちゃんと呼んだ。


「おうよ」

「えっと、その……」


次孔さんに抱きつかれているところを見られているのが恥ずかしいのだが、しかし見ないでくれというのもおかしいな。

いかがわしいことをしようとしているみたいに思われるかもしれない。

何も言えずに顔を見ていると、真姫ちゃんの方から話してきた。


「なんだ、お前もよしよしされたいのか?」

「違うよっ!?」


そんなことになったら尚更恥ずかしいだろ。

きっと恥ずかしすぎて死に至るよ。羞恥死するよ。


「なんだ、じゃあ抱きついてほしいのかよ。ほれ」


次孔さんがいない、右側から抱きついてきた。

――――――――!?

声にならない絶叫を口から吐く俺。

ひょっとしたら超音波を出してたかもしれない。


左胸に次孔さん。

右胸に真姫ちゃんの顔があるという状態。

ただでさえ毛布で暑いのに。

顔から火が出まくっている。

灼熱地獄ならぬ、灼熱天国とでも呼ぼうか。


――あっ、もうだめ――だ―――。

俺は横にあるストーブの薬缶よりも顔から湯気を出して、倒れた。



――――――ごべばっ!?


俺は強引に水を飲まされたのか口内の違和感で、跳ね起きた。

どうやら真姫ちゃんがペットボトルのスポーツドリンクを飲ませてくれていたようだ。

気絶した状態の俺に。


「おお勇者よ、死んでしまうとは情けない」


次孔さんが片膝をついて両拳を合わせてお祈りを捧げていた。


「……それはもうええっちゅうねん」


なんとかツッコミを入れるのが精一杯であった。


「なんか寝ちゃったみたいだけど、アッツアツだったから水分補給してみた」


真姫ちゃんは事実を端的に述べたようだ。

アッツアツだったのは二人のせいですよ。


兎も角、意識を取り戻したので、帰宅することになった。


******


「お兄ちゃんなんか冷たくなってたんだって?」


なんかそれだともう死んじゃったみたいじゃない?


「人生で一番冷たい経験と暑い経験したよ」

「へ~、お熱いことで。このこの」


左手を口に当てて、右肘で小突く真似をする舞衣。

ちょっと仕草がおばさんくさいぞ。


そしていつものステータス確認が始まった。



【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 125(+9)

理系学力 111(+12)

運動能力 129(+7)

容姿   145(+5)

芸術   57(+2)

料理   144(+4)

―――――――――――――――――――――――――――――


萌える参考書の効果が凄いぜ。

文系と理系で登場する妹が違うんだが、理系の妹の方が舞衣にそっくりなんです。

だから理系のほうが数値が上がっているのだ。


「……ふぅ」


何やら複雑そうな顔でため息をつく妹。

なぜだ……。



【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

実羽じつわ 映子えいこ [クレーンゲームくらい好き]

望比都沙羅もうひと さら [詰将棋くらいの存在]

次孔じあな 律動りずむ [一番気になる男子かも!?]

寅野とらの 真姫まき [まじ嫌いじゃない]

―――――――――――――――――――――――――――――


「ヒューヒュー♪」


……だから舞衣、おばさん臭いって。


「これはバレンタインが期待できるんじゃないのお?」


――!?

そうか、もうすぐバレンタインか!


自慢じゃないが母親以外からチョコを貰ったことがない。

しかし!

これは、イケるかもしれんぞ!


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