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異世界メモリアル【5周目 第15話】


二年生の二学期。

文化祭に向けて演劇の特訓が続くが、それより先に重要なイベントがある。修学旅行だ。

色々なゲームを下敷にした世界に行くのが通例だが、今回ももちろんそうだった。


ギャリギャリギャリギャリギャリ!


「GYAAAAAAAAAA!!」

「他愛もないですね」


ひえっ……

沙羅さんはチェーンソーでデカいモンスターを惨殺してから頬についた血をぐいっと拭った。怖い、怖すぎる。


ヒュンッ

パーン!


俺の頬のすぐ横を弾丸が通り抜け、十メートル先にいるクリーチャーの頭が吹き飛ぶ。


「やった~、ヘッドショットだぁ~。脳漿って吹き飛ばないんですね~」


ガチャッとロングライフルの弾を装填しながら、笑顔でそう言うのはもちろん、鞠さん。なぜか銃がめちゃくちゃ似合う。


「あぁ……こんな気持ちの悪い、人間じゃないものに、レイプされるなんて」

「来斗さんは真面目に戦ってください」


来斗述さんは火炎放射器を持ったまま、妄想しているだけだった。


今回の修学旅行はどうやらサードパーソンシューティングの世界だ。地底人なのかどうかはわからないが、防具なども装備した巨躯のクリーチャーが襲ってくるところを掻い潜りつつ移動する。

一緒に行動するのは前述の三人。文芸部に所属するレイプ願望のある来斗述(らいとのべる)、同じ演劇部で豪邸に住んでいる天然ボケの庵斗和音鞠あんとわねまり。そして料理部で将棋が好きで皮肉屋だけど照れ屋さんの望比都沙羅もうひと さらだった。きっと親密度の高い三人が選出されるんだろう。さすがに五周目ともなるとわかってきた。


俺が選んだ武器はビーム砲。中距離タイプだが、さっきから前線で沙羅さんが軒並み切り刻み、後方からはスナイパーと化した鞠さんが撃ちまくっているため、あまり出番無し。来斗さんは本当に出番無し。


「GO GO GO GO!」


チェーンソーを抱えて走っていく沙羅さん。めちゃくちゃ楽しそうなんですけど。


ぶいーん

ギャリギャリギャリギャリ

どぱちゃあっ


「う~ん、結構柔らかいお肉ですね。圧力鍋で煮たら美味しいかしら」


……よく食べようと思うよな、そんな熊のモンスターみたいなエグい死体を見ながら。


「あら~、この敵、かっこいいかも~」


鞠さん!? 確かにちょっとカッコイイけど!? 狼顔っていうか?


パーン!


「かっこよかったね~」


カッコイイと思ってるのにヘッドショットですか!? まぁカッコイイから倒さないとか困りますけど。


「あぁ……」

「ちょっと、来斗さん。カッコイイクリーチャーにレイプされたかったみたいな顔をしないでください」


残念そうな顔でへたりこんでいる来斗さんの首根っこを引っ張る。この人、火炎放射器一回も使ってないんですけど。


「ほら、お昼ごはんですよ」


戦ってる相手はエグいが、ただの修学旅行なので地球を救うために戦ったりしていない。単に昼食を取る場所と宿に移動する間に敵が襲ってくるだけだ。


着いたのは蕎麦屋らしい。美しい山々に囲まれて綺麗な水に恵まれたこちらの蕎麦屋さんでは、焼いた川魚と山菜の天ぷら、そして自然薯を使ったとろろそばが絶品だそうだ。この修学旅行先の世界観どうなってんの!?


「うん、なかなか美味しい。蕎麦の自慢はお里が知れると言いますけど、かなりの田舎でなければ出せない味ですね」


沙羅さんは褒めてはいるのだが、なーんか棘がありませんかね。この蕎麦、十割そばでものすごく香りがあってむちゃくちゃ美味いですけどね。


「この天ぷらは三歳なんですかー? 若いのにすごいですね~」


それ本気で言ってるの? ボケなの? どっちなの? 川魚を超えるほどの天然なの?

山菜のてんぷらはサックサクだし、いろいろな香りが混ざり合ってて超絶美味しいですけどね。


「うん、これ、濃くって、すごっ……喉を通らないよ」

「来斗さん!? 口の中のとろろを見せるのはマナー違反だよ!」


来斗さんは何がしたいんだかよくわからない。さっさと食わないと、天ぷらが冷めちゃうでしょ!


「ごちそうさまでした」


箸を置いて、でっかいチェーンソーを抱える沙羅さん。


「行きましょうか」


鞠さんもロングライフルを携える。蕎麦屋にゴツい火器があるの、やっぱりシュールすぎますよ。


「ごちそうさまでした」

「来斗さんはちゃんと火炎放射器持ってくださいね」

「あ、でも使わないし」

「使ってくださいよ!?」


蕎麦屋を後にすると、きな臭い匂いが鼻を突く。至るところで火が出ていて、燃えカスや灰が風で舞う。まさに戦場。さっきまで蕎麦をすすっていたとは思えない。っていうか暑い。


「って、来斗さん!? 火炎放射器を適当に使用しないで貰えます!?」

「使ってくださいって言うから」

「敵に! 敵に使って!」

「あ、カッコイイ敵を発見」

「話を聞いて!」

「わ~、カッコイイ~」

「鞠さんも!?」


鞠さんは狼顔や虎顔のカッコイイ敵を発見しては、ヘッドショットで頭を吹っ飛ばしていった。なんのこっちゃ。まぁでも可愛い女の子を銃で撃つゲームもあったな。そんな感じか。


ほとんど鞠さんと沙羅さんがほとんど倒していくのを確認しながら、来斗さんのお守りをするという二泊三日だった。まぁでも修学旅行は毎回楽しいです。



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