表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/364

異世界メモリアル【5周目 第4話】


中間試験はそれなりだった。5周目ともなると特に勉強することに時間を使わなくてもそこそこの成績になるのは有り難い。


運動部に所属してないのに体育の成績も上々だ。ただし運動能力に惹かれてくれそうな女の子が誰なのかという感じだが。


そして文系の成績がそこそこに良好ということは、おそらく出会うはずだ。彼女に。


そう思っていた矢先、見事に廊下の曲がり角でぶつかるというベタ中のベタな出会いのシーンが発生した。


彼女は俺にどっしーんとぶつかって、


「イタタタ」


と言いつつ目をぱちくり。

織り込まれた長い黒髪を垂らしつつ、両手をリノリウムの床にぺたりと付けている。ハの字に開いた脚の間から、赤いリボンのついた白い布地がこんにちは。うーん、これこそ少年漫画のラブコメだという感じがプンプンしますね。

今まではガーターベルトとか超えろえろだったが、今回はシンプルで逆にエロい。

俺がその光景をたっぷり味わったところでようやく、バッとスカートを抑える。

ここで「見たわね、このヘンタイ!」などと言えばまさに王道のラブコメが始まることだろう。そしてそのキャラクターがメインヒロインになること請け合いだ。ところがそんなわけがない。


「レイプしたくなりました?」


顔を赤らめて恥ずかしがる表情そのものはまったく問題ないのだが、抑揚なく紡がれるセリフだけが残念だった。そういうお人である。


「そこまでではないけど、少し興奮させてもらったよ」


本当に初めて会ったとしたらとても言えないような紳士的な、いや、あえて自分で言おう。変態紳士的なセリフで返しつつ、俺は彼女の手を取って立ち上がるのを補助した。

そして自分から名乗る。


「俺はロト。ぶつかってしまってごめんね。怪我はない?」

「あ、大丈夫です。私は来斗述(らいとのべる)


知っているとも。文系学力を上げると出会えるヒロインだということはもうわかっている。そして、父親のせいでレイプ願望があるということもだ。本当に救わなければならないのは彼女よりも本当にレイプされているという姉と妹だがな。そっちに出会っていたら最初に攻略したかもしれない。

なんにせよ寅野父よりも遥かに許せないやつであることは間違いない。絶対に打ち解ける気がしない。


「じゃあね」


後ろ手を振りながら、俺はクールに去った。なんとなくだが、女性経験が豊富なジェントルマンである感じがしませんか。実はね、俺はもう三人もの女性とエンディングを迎えているんですよ、ははは。


翌日から来斗さんは教室で会話ができるようになった。変だって? 同じクラスだったのになんで自己紹介してるのかって? しょうがないだろ、同じクラスでも出会いのイベントの前は認識することは出来ても接点が生まれない世界なんだよ。会話とか絶対出来ないんだよ。おかしいと思うかもしれないが、ギャルゲーではよくあることだ。それでもクラスでダントツに可愛い女の子を知らないっていうことならまだオカシイと思うのもわかるが、この世界は美少女だらけなのでいわゆるモブと呼ばれそうな女の子など存在しない。マジでクラス全員、他所のクラスも、いいや先生ですらもみんなだ。よって出会いイベントが発生しないと攻略キャラだとは気づかないぞ。俺が気づいていないだけで、他にもまだいる可能性もある。

まぁ、真姫ちゃんは目立ってたけどね。あそこまでの巨乳は他に居ない。


そうして7月に入った頃の、妹との例のやつである。


「お兄ちゃん、そろそろデートしたらどう?」

「舞衣としようかな」

「本気?」


今まで何度となく繰り返してきた軽口のつもりだったが、その表情はまるっきり違うものだった。

まっすぐに俺の目を見て、どことなく緊張しているような真剣な顔つき。

なんとなく、わかってしまう。

ここで本気だと言えば、彼女は俺をお兄ちゃんではなくロトと呼ぶのだと。そして親密度がわかるようになるのだと。


「今度にしておく」

「そ」


がっかりしたようにも、ホッとしたようにも見えた。

俺は俺で単なる時間稼ぎをしたのかもしれない。


「じゃあ、お兄ちゃんは誰とデートするのかな? それとも意中の娘とはまだ出会ってないのかな?」


どうだろうな。俺は五周目にしてようやく余裕というものが出始めていた。

確かに真姫ちゃんとはもっとデートしておけばよかったという気がする。

彼女はどう考えても強い男が好きに違いないという確証があったし、父親を殴りとばしてやりたいという強い感情を持っていた。

だから修行に明け暮れる日々を過ごしてしまったわけだが、せっかくのギャルゲー世界なんだからもっとデートを楽しむべきだ。

来斗さんとはプロレスを見に行ったことを思い出す。

鞠さんはキャディを務めていただけでデートはしていない。彼女のことは余り知らないのだと気づく。


「鞠さんをデートに誘ってみようかな」

「いいじゃん、いいじゃん!」


舞衣はさっきのやり取りなど無かったかのように、今まで通りの可愛い妹に戻った。これはこれで有り難いことだよな。攻略出来ないからと言ってすぐにクソゲー呼ばわりした俺がバカだったよ。


「じゃあステータスと親密度をチェックしよっか」


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 102(+27)

理系学力 152(+41)

運動能力 171(+8)

容姿   128(+33)

芸術   48(+33)

料理   52(+37)

―――――――――――――――――――――――――――――


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

来斗述(らいとのべる)     [通行人役]

庵斗和音鞠あんとわねまり   [会話するくらいならいいじゃない]

―――――――――――――――――――――――――――――


鞠さんのこれってさ、ギリギリコミュニケーション可能って意味じゃない? むしろこの前の状態って嫌悪に近くない? 一年生の一学期とはいえ、同じ部活で接しててそこまでの扱いだったとは、さすがにショックだ。


「舞衣、この状態じゃあ……」


時期尚早ではないか。そう相談しようと思ったわけだが。


「がんば!」


ぐっと両手を握り込んで、舞衣は応援してくれた。

可愛い妹にそう言われてしまったら頑張るほかあるまい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ