異世界メモリアル【5周目 第1話】
五周目です、よろしくおねがいします。
お久しぶりです、真っ黒の世界。
どうやら5周目が始まったみたいだ。
しかし今のところではあるが全部ハッピーエンドを迎えていることに安堵している。そこまでお気楽な気分でもないが、この世界を楽しもうという前向きな気持ちにはなってきた。
「あなたはロトだね。特技『理系の心得』と『世界の基礎知識』、そして前回プレイのアイテムを引き継ぎます。また、前回でのエンディング時のステータスからボーナスをポイントを算出します」
相変わらずの無個性な言葉とともに前回終了時のステータスが脳裏に浮かんでくる。
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文系学力 568
理系学力 655
運動能力 939
容姿 452
芸術 435
料理 220
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運動能力に特化していたが、後半につれて伸び率が下がった。上限があるのかもしれない。999でカンストする可能性があると考えている。そう考えるとやはりバランスよくステータスを上げる方が望ましいわけだ。
「運動能力に+150のボーナスポイントが付与されます。そして運動能力が倍の早さでアップする特技『運動の心得』を取得しました」
これは想定内だな。ニコが理系ヒロインで、真姫ちゃんは運動ヒロインだったということだ。文系ヒロインと芸術ヒロインと料理ヒロインと思われるキャラにはすでに出会っている。容姿はどうなのだろう。存在するけれど会っていないのだろうか、それとも誰かがそうなのだろうか。
「初期ステータスを確認して、ボーナスポイントを振り分けてください」
【ステータス】
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文系学力 75
理系学力 111
運動能力 163
容姿 15
芸術 15
料理 15
ボーナスポイント 80
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5周目ともなると違いますね。運動能力がこれだけあれば日常生活に支障はないし、バイトも大分選べるだろう。俺が攻略本を書くとしたらまず真姫ちゃんのエンディングを目指すことをお薦めします。とんでもなくしんどいけど。
【ステータス】
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文系学力 75
理系学力 111
運動能力 163
容姿 95(+80)
芸術 15
料理 15
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やはり容姿に割り振った。センスないねとか料理下手だねって言われるのは耐えられるが、顔がキモいというのは致命傷だからだ。言われたときのダメージがでかい。ましてやギャルゲーをプレイしようとしている以上ヒロイン達とは出会うわけで、ブサイクだと思われつつコミュニケーションをとるのはキツイのである。
これなら芸術と料理が出来ないだけの凡人としてのスタートだ。これは転生する前の俺に近い存在で、ようやくスタートラインに立てたとも言える。
頭の中で決めたことをきっかけに五感が冴えてくる。
5度目となる世界がスタートする。
少し冷たい空気。桜の花びらが舞う。学校へと続く階段を見上げた状態。
相変わらずだ。
俺は後ろを向いた。前回はここで実羽さんがやってきたはず。
「おっはよ~」
細くて長い脚。すらりとした細身のモデル体型だ。凛とした眉毛に二重の大きな瞳。薄い唇。そして、ウェーブのかかった茶髪だ。間違いなく見覚えのある実羽映子。ランドセルを背負っていないし、黒髪のツインテールでもない。
良かった。
5周目が始まって早くも安心した。
「おはよう」
初めて会った女の子に対して、ここまで嬉しそうに挨拶を交わすことなど初めてだ。一応、知っているということは伏せた。少なくとも彼女がそれを求めていないのであれば、俺から言い出すことは避けたい。
「お先に~」
そうさらっと言ってくれたことが有り難い。信頼できる友人がいることは大変嬉しいことだ。そんな彼女に好かれているということはこの上なく光栄なことだが、攻略するかどうかは別の問題である。
つまり、攻略したら二度と会えないということであり、このプレイの始まり方も変わってしまうということだ。しかし、じゃあ好みじゃない女の子から攻略していくか、などということは普通のゲームじゃないのでありえない。三年という歳月を賭して、努力をして、一生愛すると誓うくらいまでの恋愛をしてようやくなんだぞ。まあ、結局みんな魅力的なんだけどな。
だから、この人と両思いになれたなら。それだけで幸せだと言い切れる。そういうことでなければ成り立たないのだ。
恋愛シミュレーション。それはゲームだから成り立つジャンル。
現実で恋愛シミュレーションをするのはなかなかに厳しい。キャバクラとかはそういう需要によって成り立っているのかもしれない。行ったこと無いけど。課金でどうにかなるならしたいものだ。
教室に入ると義朝が話しかけてきた。懐かしいね。ヒロインの情報を聞き出すとき以外はあんまり話すことも無いので、最近はほとんど会話がない。うぃ~とかうぇ~とかうぃっみたいな男子特有のやる気ない挨拶を交わすのみである。
「よう、ロト。いよいよ俺たちも高校生だな」
「そうだな」
俺はもう五回目の高校生活だがな。もはや生前の記憶よりもこちらに来てからの方が多いくらいだ。
「彼女作りたいな」
「でもお前ロリコンじゃん?」
「ばっ、えっ!?」
年下のいない高校一年生では彼女など出来まい。そう思って言ったのだがどうやら寝耳に水だったようだ。幼稚園からの腐れ縁という設定だったはずだが、こういうことは話してなかったのか。いや、そりゃそうだ。ロリコンの小学生などいない。小学生が小学生を好きなことは普通だからだ。
「さすがロト、知ってたのか……」
「あ、ああ」
さすがの一言でなんとかなったようだ。まぁそんなことで人生を何周も繰り返していると考えるやつはいないか。それにしてもロリコンなのに女の子の情報を収集している友人というのはどういうことなのだろうか。真面目なのだろうか。
「お前さ、実羽映子って知ってる?」
「おっ、さすがロト、もう実羽さんをチェックかよ~。キレイなコだよな~」
「本当は?」
「もう三歳若ければな~」
「ロリコンじゃねえか」
想定した答えであるにも関わらず驚愕するが、正直三年前の実羽さんは相当可愛いだろうなと思ってしまった。大人びてるし、垢抜けてるし、ちょっと怖いからね。俺はロリコンじゃないよ、みんな好きだよ。そういうと語弊があるけど、そもそもヒロインを全員攻略するのがミッションなわけだからこれでいいんだよ、男のクズじゃないよ。
「いやいや、本当に若い必要はないんだよ、ちょっとこう幼い方が好みなだけだ」
義朝が弁解をしている。ニコのこと褒めまくってたもんな。今目の前にいる義朝はニコに会うことはないわけで、ある意味可哀想なやつだ。ただし妹には絶対近づかせない。
「なるほどな、じゃあ気になる女の子がいたら教えてくれよな」
「おう」
そう言ってグーパンチを交わす。なんか普通の男友達って感じだ。こういうのも悪くないな。
入学式の夜。
いつもの楽しみであるラジオを聞く。
「始まりました、次孔律動のリズム天国ぅ~! この街のニュースを中心に、いつもの通り面白おかしくトークしていきたいと思いまーす♪」
次孔さんのラジオは常に内容が異なる。時間を巻き戻しているわけではないので世の中で起きることは違うのだ。
「本日はゲストをお招きしています」
「は~いどうも~、てんせーちゃんでーす」
てんせーちゃんかよ。
「てんせーちゃんはなんと中学生でイラストレーターとしてデビューしてしまったという才女なんですよね~」
「ま~、それほどでもあるけどね~」
うーん、このこの見事な切り返し。間違いなく画領天星その人だ。
「てんせーちゃんと今日から同じ学校に通うことになったんです」
「そうなんです。初日からすっごく良いもの見ちゃって、学校行くの楽しみ~」
「良いものって?」
「それがですね~、いかにもモブって感じの男の子といかにもモブの友人って感じの男子がいたのでござるよ」
この世界は美少女ゲームの世界なので、女の子はみんな個性豊かな美少女だが男子はなー。実羽さんの取り巻きだけイケメンで他はモブモブしてんだよねー。
「で、女の子の好みの話なんてしちゃってるわけなんですけどねっ」
「うんうん、男の子って感じだね」
「結局いないって話になって最後グーパンチですよ! これはもう二人はデキてる! 間違いないンゴー!」
俺と義朝じゃねえか!? デキてねえよ!? 間違いないンゴじゃねえよ!?
「え? え? 男の子同士で好きだってことですか?」
「そうそう! 好きな女の子の話は嘘ってこと! 実はお互いが大好きなの! たまらんぜ、げへへ」
くっ、これがBLをこじらせた女子の妄想力か! ヒドい!
俺はデスクの椅子からベッドへダイブしてゴロゴロした。こういうマイナスの方向でのベッドゴロゴロはほんとイヤ! もっとキャッキャウフフな理由でしたい!
「はえ~」
敏腕ラジオパーソナリティーの次孔さんにはえ~と言わせてしまうほどのゲスト、それがてんせーちゃん。二度と呼ばないほうが良いよ。
「それ、詳しく教えてくださいよ、てんせーちゃん」
「よいぞよいぞ~、ようこそBLの世界へっ!」
興味持っちゃったよ……。
その後しばらく熱いトークが繰り広げられた。
次孔さん、トークを回すの上手すぎでしょ。
まぁ、なんだ。
男の娘はありかもな。




