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異世界メモリアル【4周目 第15話】


風邪から回復した寅野真姫は、何もなかったかのように俺とストリートファイト部の活動を行った。

部活のない日でも俺が自主練をしていたら一緒に参加してくれるようになり、部活は実質毎日になった。


寝る間も惜しんでという言葉があるが、俺はアイテムによってそれが可能だ。

睡眠時間を5分に削って、勉強や料理などのステータス向上を夜中に実施。

日中は全て部活やトレーニングに回す。


そんな日々が続き、冬が過ぎて、春が来て、もうすぐ2年生の夏休みを迎える。


倒したい敵がいると、修行はより真剣なものになる。

さながら竜王を倒すという目的を得た勇者のように、経験値稼ぎに貪欲だった。

本当ならスライムを棍棒でぶっ叩いて上げたいところだが、このゲームはそういうプレイをさせてくれない。


この半年間はというと週に一度は他所の学校に遠征し、空手部に空手で挑んだり、相撲部に相撲で挑んだり、アメフト部と力比べをしたり、サッカー部のシュートをキエエエーイと三角跳びで片手でキャッチしたりしていた。リュウやケンもこういう修行をしてたのだろうか。いや、絶対してないな。


本当はそれこそ野試合をしたいのだが、それは駄目らしい。よく考えれば当たり前なんだが。

行った先の学校で闘いを申し込もうにもトラの名前が轟きすぎて、学校名を告げると対戦に誰も応じてくれない。

たまーに無謀なやつがトラと闘わせろってうちの学校にやってくるので、トラの前に俺を倒してみろと言ってボコボコにしてやる。

ストリートファイトはマイナー競技のため大会は年に一度だけだ。大方の学生スポーツがそうであるように夏休みの終わり際に開催される。

そんなわけで一ヶ月後の大会に向けてモチベーションが高くなっている俺である。


現状のステータスはこんな感じになっている。


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 309(+201)

理系学力 365(+206)

運動能力 547(+430)

容姿   189(+120)

芸術   201(+133)

料理   114(+55)

―――――――――――――――――――――――――――――


まぁ我ながら頑張ったものだ。運動能力はすでに超高校級といっていい数値だろう。そのくらい努力している。

なんせ恋愛シミュレーションゲームの世界のはずなのにデートを一度もしていないのだ。

くにおくんもビックリするくらい熱血硬派すぎる日々を過ごしていたのだ。

だが、こちらから行動しなくてもやってくるイベントというものはある。


「ロト、どうする、合宿」

「合宿……?」


部活の終了間際、ストレッチを行っている真姫ちゃんをいつものように見ていると聞き慣れない単語が耳に入った。基本的にストレッチ中は向かい合っており、俺は色々な部分が揉まれているところを見るのに忙しくて頭が働かない。胸、腕、胸、脚、胸、へそ、胸。あんなにパワーがあるのになんでこんなに柔らかそうなのかしらなどと考えるのに忙しいんだ。


「合宿だよ、合宿。夏休みに行くんだよ。もちろん大会前な」

「俺とトラで?」

「新入部員は辞めちゃったからなー」


青い蛍光灯に集まる羽虫の如く、おっぱいの魅力に引き寄せられた雑魚どもは俺が蹴散らしてしまったのだ。全く、どいつもこいつも武道をなんだと思っているんだ。それにしても真姫ちゃんの胸はまた大きくなってるなあ。


「正直、修行するならギアナ高地とかが良いんだが、そこまで行く予算がない」

「それは残念。俺も超級覇王電影弾をマスターしたかった」


全く残念がっていない俺の戯言は無視して、どうしようっかなーと言いながら身体をクールダウンさせている。

この世界は地球じゃないんだが、ギアナ高地は存在するんだな。


「ん~、候補は3つだからロトが選んでくれ」


お、修学旅行みたいに3択から俺が選べるのか。

こういうところはギャルゲーっぽいんだよな。


1.草を刈るとお金が出る世界

2.ひたすら雪山を登る世界

3.海洋開拓者が休日を過ごす世界


うんうん、なんとなく元ネタがわかる。


1は一度は行っていたいよな、馬に乗ってひたすら移動したりオカリナ吹いたり出来るのだろう。ゲーマーとしては憧れの土地だ。


2は蒼天の白き神の座なのか、アイスクライマーなのか。どっちにしてももう真姫ちゃんを寒いところに連れて行くなんてありえない。


3はアクアノートの休日のことだろう。つまり、海だ。そう――海だっ!


「トラ、これは3しかない。水の中だと体中にバランスの良い負荷がかかってインナーマッスルも鍛えられるし、海に潜ると心肺機能も強化される。これしかない」

「そうか? じゃあそうする」


普通に考えたら1だが、真姫ちゃんと行くなら海一択。理由は説明するまでもない。海といえば水着だからだ!


――さて、その合宿だが。


部の予算がないからと電車の上に乗って移動した。チャレンジャーの1面みたいにだ。5時間もだ。

それはいい。


やはり金が無いので食事は現地調達。真姫ちゃんは手慣れたもので大きめの鳥類を延髄斬りで倒して、皮を剥いで焼いた。モンハンみたいにだ。野趣溢れる味でした。

それはいい。


当然宿も泊まれない。真姫ちゃんとひとつ屋根の下かもしれないなんて思ってたが、そもそも屋根が無い。ファイナルファンタジーみたいにコテージでもあれば全回復可能だろうが、容赦なく砂上。

それはいい。


そういうのはいいんだ、別に。


本当に辛かったのは、水着じゃなくてウェットスーツだったってことだ。


畜生!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 四章に入ってからやけにファミコン濃度が上がったこと! 素晴らしい! くにおくんもゼルダも大好きです! 風来のシレンは知らないのですが。 続きも楽しみに読みたいと思います!
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