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異世界メモリアル【4周目 第12話】

「いやー、全然寒くないなー! 寒さってなんだっけなー!」

「おー、そうだなー!」


嘘だよ! 死ぬ程寒いよ! なんで平気なの、真姫ちゃん!?

水泳部がよりつかなくなってからもはや4ヶ月も過ぎた年始の屋外プール。

もう何度も繰り返してきた寒中水泳の練習だが、慣れるなんてとんでもなかった。

強いて言えば、水に入っていた方がマシ。

最悪なのはプールから上がったとき、濡れた体で寒風に晒されるのが本気でツラい。

白い越中ふんどしが棚引く度に、尻がキュッとなる。

鳥肌なんてもんじゃない。肌なんて爬虫類に退化したんじゃないかと思うほどだ。

濡れた髪が乾いていく感じ、たまらなく寒い。

その状態で俺は強がりを言ってみたものの、真姫ちゃんは本気でなんとも思っていなかった。霊長類最強女子かもしれない。

寒中水泳の本番では泳ぎ終わったらそこで終了なのだから、こんな強がりは不要である。

しかし彼女を見ていると更によくわからない行動をとった。


「トラ!? なんで飛び込み台の上で腕組みしてポーズするの!?」


そんなことをすれば風が当たりやすくなり、より寒い。


「かっこいいだろ」

「え、えー?」

「ひょっとして寒いのかー?」

「んなわけねえし!」

「だよなー」


男って、強がって生きていくものだよな……。

本当に強いのはいつだって女の方なんだよ。男は強いふりをしているだけなんだ。

そんな感傷に浸ってしまうのも、濡れた体を乾かしていく北風のせいなんだろう。

気化熱という科学現象を、骨身に染みて実験することになるとは。

冷たいプールに早く入りたい。


「泳ぎたくって仕方がないから先に行くぜ!」

「お、気合入ってるなー」


かっこいいポーズを研究している真姫ちゃんは放置して飛び込む。

大体腕組みのポーズなんて、彼女がやったってカッコいい訳がない。おっぱいを潰しているだけだから。

腕の上下に別れても普通の女の子のおっぱいより大きい。

おっぱいが4つあるみたいな感じよ?

寒いのも慣れないが、巨乳にも慣れませんね?


ざぶーん


綺麗に入水しましたロト選手。

なんせ、飛び込みはうまくなった。

寒中水泳における腹打ちは激痛だからだ。

とはいえ揃えた手からすぅ~っとスムーズに入っていったとて。

冷たさはまさに凍てつきを持ってダメージを与えてくる。

寒いを越えて痛い。勇者はマヒャドとかに弱いんだぜ……。


それにしても本当に良かった。

寒中水泳出来て、ではもちろんない。

真姫ちゃんの体のことだ。

本当に綺麗だからだ。

俺が言ってるのはもちろん、彼女が美しいという意味だが、それはミミズ腫れだの火傷の痕だの青痰だのというものがないということだ。1周目で初めて彼女を見たときの折檻の痕がない。

そのことがどれだけ嬉しかったか。安心したか。

水着が似合っていることの何倍も、何倍も良かったと思えた。


もし彼女がストリートファイト部に所属していて、そこに俺もいるからという理由でだとするなら。

こんな冷たい水に入ることくらいは大した事ではない。

その思いが、俺を強くしていた。



気がしたんだけどなあ……。



あー……。



「ロト、ステータス異常でしんどいところ悪いけど」


開いたドアから温かそうなニットのナイトキャップが覗いていた。

遠慮なんかしなくていいのに。

そう、ぼ~っとした頭で思う。


「ああ、そっか定例だな、げっほげほ」


俺はなんと寒中水泳の影響で風邪をひいた。

いや、そりゃそうじゃんというのは簡単だが、正直意外だよ。普通、こういうゲームだったら体力よりストレスが上になるみたいなね、休憩不足が原因であってだよ。

寒いからって。

そんな馬鹿な。漫画かよ。


「げっほげほ」


ああ、クソゲーだなー。

普通に部活のコマンド実行しただけでステータス異常って。

ほんとクソゲーだなー。


「大丈夫?」


心配そうな顔を見せる舞衣。

駄目だ、とは言えないんだよな~。

大丈夫だとも言えないので、とりあえずベッドで横になったまま頷いた。


「じゃあ、確認するよ」


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 108(+20)

理系学力 159(+26)

運動能力 117(+44) 風邪-60

容姿   69(+31)

芸術   68(+53)

料理   59(+30)

―――――――――――――――――――――――――――――


「ようやく運動能力が上がってきたところなのにね」


舞衣は結構病人には優しいらしい。

このままでも良いかなと思ってしまうが、割と本気で元気がないから思い直す。

俺の妹は俺が元気じゃないと元気が出ない!

なんということでしょう、可愛すぎやしませんかね……。


「げっほげっほ」


俺の咳を聞いて、心配そうに眉を下げる舞衣を見ると、申し訳なさや不甲斐なさも感じるが、やっぱりちょっと嬉しくなる。

そして、親密度の確認。


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

実羽映子じつわえいこ     [彼は私のことが大好き]

寅野真姫とらのまき    [マジ病気]

来斗述(らいとのべる)     [病人]

画領天星(がりょうてんせい)   [風邪×ロト]

舞衣(まい)       [舞衣は心配だよ]

―――――――――――――――――――――――――――――


ああ、頭が痛い。

風邪のせいもあるけど、この現状の親密度。コレはひどい。

実羽さん以外は病気のことしか頭にないし、実羽さんは本人が病気。もうダメだ。


「ところで、ごほごほ、舞衣」

「なに、ロト」

「自分の親密度を俺に見せるのって恥ずかしくないの?」


怒り出すのかと思うくらいのことを聞いたつもりだったが、ふんわりとした笑顔になる。


「ロトの気持ちだって私に見えてるじゃない。それとも隠してるつもりなの?」


なっ……。


「顔が赤いよ」

「……そりゃそうだろ、風邪引いてんだから」

「そうだね」


舞衣はやはり病人に優しかった。



正直、私自身がそれほど一気に読んだりしないので、この小説を一気に読んでいただいている読者様には頭が上がらないです。そして私自身がこまめに更新されたブックマークを読むこともないので、読者様には本当に感謝しています。

これからも宜しくお願いします。

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