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異世界メモリアル【4周目 第5話】


4周目にして俺はようやくまっとうな高校生活を送っていた。

学校で授業を受け、それがちゃんと理解できて、テストの成績も良い。

部活は運動部で楽しく練習。

家庭では料理を頑張る兄。

1年の1学期の時点でこの状況は希望が持てる。あくまで普通にだが。


――ここまで長かった。俺にとっては10年以上かかっている。

最初からこのくらいの難易度でプレイさせて欲しかった。

一般的に異世界に連れて行かれた日本人はもっと有利にコトを進められると思うんですが。


それなりに成績は悪くないが、流石に期末試験前なので図書館で勉強をしていると、経験のある出会いが発生した。


きちんと着こなした制服に、長い黒髪を1本に巻き込んで藍色の紐で結んで肩にかけた清楚な印象。

肌は白く、唇は薄く赤く、瞳は黒く伏せがちだがどこか艶めかしい。

時代劇に出てくる吉原の女性のような色っぽい日本美人、来斗述(らいとのべる)だ。


業務用の脚立に登って、高いところの本を取ろうとしている。

正直、これから何が起こるのか手に取るようにわかる。

でも、押さえないと危ないからね?

白いレースがいっぱいついたピンクのガーターベルトの超えろえろぱんつが見たいからじゃないよ?


「持っててあげますから、ゆっくり降りていいですよ」


ふむ。やはりエロいね。

脚立から降りてきた彼女は、分厚い辞書を両手で持ちながら俺を見て言った。


「レイプしたくなりましたか?」

「ちょっとね」

「……いいですよ、レイプしても」

「それ、もはやレイプじゃないよね」


そう言うと、彼女は会話の内容にそぐわない淑やかな笑顔を見せた。

しっとりとゆっくりと少しだけお辞儀をしながら、はじめての挨拶を交わす。


「はじめまして、私は来斗述(らいとのべる)

「はじめまして、来斗さん。俺はロトだ」


本当にはじめましてなら、こんな会話俺には出来ない。

俺が彼女のことをある程度理解してなければ、こんなに平然と話せない。

何度もプレイすれば慣れてくる。

えろえろなぱんつには慣れたわけではない。それについてはドキドキしている。


「初めて会った男性とここまでお話が出来たのは初めてです」


だろうなあ。

俺は何度も会ってるしデートもしてますからねえ……。

更に言えば来斗さんがなんでそういうこと言うのかも知ってるし。

そうじゃなきゃここまで冷静に優しく普通に接するというのは不可能だ。

初回プレイで来斗さんを攻略するやつはなかなかだと思う。


「俺は初めて会った気がしないんだ」


肩をすくめて冗談っぽくそう言った。

彼女はくす、と笑ってから会釈をして去っていった。

ダサい口説き文句っぽかったかな……。

ぽりぽりと頬を指で掻く。

ま、出会いのイベントで親密度を上げる必要はない。


1学期の試験はそこそこの結果に終わる。特に理系はかなり高い成績を収めた。

いまだかつてない順調なスタートを切った俺の夏休み直前、妹とのステータスチェックだ。


俺の部屋をノックしてやってきた舞衣を笑顔で迎える。

順風満帆だからね。

夏も近づいてお風呂上がりの舞衣は、湯上がりのほこほこした感じを帯びたまま薄手のパジャマでやってくる。何度見てもいいものだ。思わず頬がゆるむ。


「お兄ちゃん、どう? 実羽さんとは」


俺は顔をフッと横に向けた。

唯一目を反らしていたことを的確に突いてくるな……。

さっきまでのウキウキした気分が一瞬で消え去り、俺は部屋の隅を見つめた。


「好かれているんでしょ?」

「そ、そう、かも」

「モテる男はツライねー?」


マジでツライ。

モテる男はツライとか言ってるやつは死ねと思ってたけど、人には人の事情があるということがよ~くわかった。


「じゃ、ステータスみよっか」

「そ、そうだな」



【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 88(+13)

理系学力 133(+22)

運動能力 73(+30)

容姿   38(+3)

芸術   15(+0)

料理   29(+14)

―――――――――――――――――――――――――――――


「なかなか順調だね。予定通りって感じ」


そう言って、うんうんと頷く舞衣。


「そうなんだよ」


俺は静かに頷いた。


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

実羽映子じつわえいこ     [彼は私のことが好き]

寅野真姫とらのまき    [マジ弱い]

来斗述(らいとのべる)     [モブ]

―――――――――――――――――――――――――――――


「あれ? 好かれてるんだよね? なんかおかしなことになってない?」


そう言って、首をひねる舞衣。


「そうなんだよ!」


俺は深く頷いた!

わかってもらえますか!


「お兄ちゃんは好きなの? 実羽さん」

「うっ」


そういうことを妹に聞かれちゃうとか今更ながら恥ずかしい。

しかも今、実羽さんについて聞かれるのは……。

全く、好きとか嫌いとか。

最初に言い出したの誰だっつー話だよ。


「嫌いじゃないよ?」

「何恥ずかしがってんの?」


兄との恋バナで優位に立っているのが嬉しいのかニマニマと笑っているが、そうじゃねえんだよな……。

気まずさを解消するべく話を変える。


「そうそう、夏休みはバイトがしたいんだけど」

「ああ、そうだよね、お金全くないもんね」

「そうそう! どうしたらいいかな」

「何の能力を上げるバイトがいい?」


ふむ。

勉強は問題なし、運動は部活で、料理は家でやれば十分。

芸術、は大体ろくなことがないんだ。BL漫画のアシスタントとかなんだ。

容姿は……容姿が低くていいことなんかないな。結局ね、見た目は大事なんだよ!


「容姿が上がるやつ」

「おっけー! 容姿が上がるバイト、舞衣ベストスリ~!」


くるりと一回転してから三本指をびしっと見せてきた。可愛いんだけど、ノリノリなときほど提案が怖かったりするので、俺の心境は微妙だ。


1.DKリフレ

2.ホストコンピューター

3.ゴブスレイヤー


うん、全然わからないね。ま、わかったつもりで特攻するとひどい目にあうことはよく知ってるからもう同じ過ちは繰り返さないよ。

すくなくともドンキーコングのリーフレットを作る仕事じゃないんだろうな。


「説明を、丁寧にお願いします」

「はーい。1はね、男子高校生がリフレクソロジーをするお店で働くんだー」


む、JKリフレってなんかニュースで見たことあるな。女子高生がなんかサービスしてくれるやつ。

なんかえっちなトラブルが起きるとかなんとか……。それの男版ってことか。


「それってエロい仕事?」

「えっ!? ちょっとお兄ちゃん、何言ってるの?」


舞衣が本気で蔑むような目で俺を見た。少しだけ開いた口の唇が細かく震えており、本気で引いている様子。

やめて、そんな目で見られたら生きていけない!


「ごめんごめん、ちょっと間違えたみたい」

「んもう。ただ、下着姿になって女性の人にマッサージするだけだよ」


あっれー!? なんか十分エロい気がするんだけど?!

マッサージするのになんで下着姿になる必要があるんですかね?

少なくとも舞衣がそんなアルバイトするなんて言い出したら死んでも阻止するよ!?


「んー、ま、2の説明を頼む」


ホストコンピューターって、銀行とかで使われてるガチでものすごい演算するコンピューターのことじゃなかったっけな。


「2はね、スーツを着てオシャレをしてコンピューター達をお酒の席で喜ばせるサービスをする仕事」

「ホストってそっち!? コンピューター達って何者!?」


いきなりSFになったな。全然意味わかんねえ。


「コンピューターって仕事中は命令ばっかりされているから、ストレスが溜まるんだって。お酒を飲みながら、ちやほやされたいんだよ、やっぱりコンピューターといっても女だから」


女なんだ……。

大体、水商売って現役の高校生がやっていいのか?

いや、舞衣のことだ、違法であることはそれほど問題にしていない可能性があるな。

なんにせよ、ちょっと理解に苦しむので、頭を抱えつつ次の説明を促す。


「3はね、ゴブリンのコスプレをする」

「ごめん、何一つわかんねえ」

「ゴブリン達は意外と面食い。でもゴブリンって基本的に醜いから、人間がコスプレで見た目のいいゴブリンをしてあげると喜んでお金を払う」


なんだろうな、バイトのときだけ妙なファンタジーが始まることが結構あるんだよなこの世界。

ゴブリンってろくなことにならないイメージなんですが。

ブスだと殺されて、美人だと犯されるエンドしか思いつかないぜ。

大体、ゴブリンにかっこいいとか言われて容姿が上がるってのが信じられない。


1かな。

この世界はギャルゲーの世界なので、おばさんでも美人しか存在していない。

マッサージをするだけなんだし、一番安全だ。


「DKリフレで働くぜ」

「はいはい、頑張ってね~」


そして、最初の夏休みが始まる。


感想ありがとうございます!本当、皆様一言でいいので、頂戴できますと幸いです!

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