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異世界メモリアル【3周目 第21話】


あいちゃんに好き好きラブラブ大作戦だ、やるぞ俺は!

そう妹に対して意気込みはしたものの、2年生の2学期だ。

修学旅行が目前に迫っていた。

彼女、江井愛は1年生なので、一緒に行くことはない。

お土産を渡しつつ、デートを申し込んだりしようとぼんやりと考えるくらいしかできなかった。


行き先はやはり3択だ。

前回は、竜退治の世界、クリスタルの世界、ゲットだぜの世界の3択で竜退治の世界に行ったのだった。

今回はクリスタルの世界にしようかな~。なんのジョブにしようかな~。


1.鉄道会社の世界


2.ストリートのお店をいただく世界


3.友情破壊の世界


選択肢は同じじゃなかった……。

前回がRPGだったのに対して今回はテーブルゲームか。


今回も希望の番号を書いて箱に入れるシステム。

どれも興味あるけど、3だけは本気で誰かと殴り合いになるからやめてくれ。

やっぱり1かな、と1に投票。別に温泉でむひょひょイベントがあるかもしれないという期待ではない。ほんとだよ。

思ったとおり俺の投票の通りに決定。

修学旅行の行き先は、鉄道会社の世界となった。


鉄道会社の世界に向かうのに行く方法は飛行機だった。なんでだよ。

3時間ほどでマジであの世界に着いた。駅と路線図が見える世界だ。

早速スタート地点へ。

旅行のしおりによると、エリアによって4人組になるようだ。

そこには一人、不思議なやつがいた。


「江井愛、お呼びとあれば即参上」

「いや、呼んでないけど……」


1年だから居ないはずの後輩だった。

シリアスな別れ方をしてるんで、劇的な再開のシーンがあってしかるべきじゃね?

つか正直俺のことを怒ってるはずじゃね?

なんなら今すぐ土下座するよ?


「ふふふ、こちらの世界にも私の素体がありましてね。ちょっと記憶データを共有したんですよ。だから今の私はカラダは別物ですが、頭の中は先輩のよく知るチャーミングでキュートなあいちゃんです」


どこからツッコんでいいものやら。

ひょっとして都合の悪いデータだけ転送してないとか……?

そして他の二人も知り合いだった。


「あらあら、ロトさんと同じなんですのね」


シルクの手袋で口を抑えつつ、微笑む庵斗和音鞠さん。まさにお嬢様。


「電車か、痴漢からのレイプは王道だね」


ゾクゾクと有りもしない期待に身を捩らせている来斗述さん。まさに変態。


「ちなみにまだロトさんのことは見損なったままだよ」

「ちょ、その話は旅行中にでもしましょう」


最悪のタイミングで修学旅行にやってきてしまったものだ。

なぜ修羅場を解決してない状態でパーティーゲームをすることになってしまったのか。


「ちなみに私もロト先輩のことは見損なってます。なぜか理由はわからないんですが」

「そうですか……」


じゃあなんで参上しちゃったの……。

邪魔をしに来たんじゃないの、キングボンビーなすりつけに来たんじゃないの、と思ってはいけないんだな。

やっぱり自分のいないところで他の女子とイチャイチャしてるかもしれないと思ってヤキモチ焼いているのだろうか。

それとも、都合の悪い記憶を抜いてまで俺と一緒にいたいのだろうか。

うーん、どちらにしても可愛い理由だな。

こういう風に考えるのか。なんかモテてる気がしてきたな。

余裕の笑みで頷いていると、ゲームが進行し始めた。


最初の目的地は、ルーレットによって秋葉原に決まった。

って秋葉原かよ!?

スタート地点が東京駅だから超近い。

なんかマップが小さいのかな。

列車と線路だらけの土地で、サイコロを持った背広のおっさんが話しかけてくる。


「さ、ロト社長。行きますぞ」


どうやらトップバッターは俺らしい。


「俺はいいけど、みんなコレついてこれるの?」

「まだ、カードや物件はないからとりあえずサイコロを振ってください」


いいからやれと。

正直俺のようなマジなゲーマーがいたら圧勝すぎちゃってつまらないんじゃない?

とりあえずサイコロを振る。


うわ、1だ。


神田に到着。

2で目的地に着いたのに……運が無いな。


1億円のうち6000万を使用してカレー屋を3軒購入した。神田といえばカレーだ。

物件を持っていると収益が上がるから積極的に買っていくべきだ。

たまにマイナスもあるが。


鞠さんがサイコロを振り、5を出すと悠々と秋葉原に到着した。

2億円を手に入れ、家電販売店とメイド喫茶を購入したようだ。

次の目的地を決めるルーレットが回る。


「次の目的地は上野に決まりましたぞ」


だから近いって!

秋葉原から上野なんて歩いていける距離だよ。


来斗さんは4を出して東京駅から余裕で到着。

2億5千万を取得し、魚屋、フルーツ屋、チョコレート屋などアメ横物件を買い占めた。

やるな。


「次の目的地は御茶ノ水に決まりましたぞ」


山手線ではなくなったがやっぱり近い。東京から2駅。


「1だけはでませんよーに!」


あいちゃんが振ったサイコロは6だった。余裕すぎる。

3億ゲットで楽器屋をゲット。

次は俺も目的地に着いて買い物したいものだ。

この様子なら余裕だけどな。次はどうせ有楽町あたりだろ。


「次の目的地は町田に決まりましたぞ」

「なんで町田なんだよ!? いきなり遠すぎだろ!」


いや普通のプレイならむしろ超近いんだが、この世界だとサイコロの1がガチの1駅みたいだから……。

町田が東京から遠いということではない。一応東京都である。

しかし電車で行く場合一度神奈川を通ってから町田駅に着くので東京都内という感じが薄い。

ちなみに「え、町田って東京なの? 神奈川県だと思ってた」というのは東京都における町田市民との定番のやりとりだ。

なおそれを言っていいのは基本的に23区の区民だけで、八王子市民などが言うとお前が言うなと反論される。

――閑話休題。


サイコロで5が出たが、全く届くことはない。新宿から町田に向かう途中に止まった。

物件などを買う目的地にならない駅は通常駅って呼んでたっけな。

だが、赤くも青くも黄色でもない。赤がマイナス、青がプラス、黄色がカードじゃなかったっけ?

目的地に近づくとしても赤いと避けるのか進むのかを選択するのがミソだったり。


「ロト社長、サイコロを2つ振ってください」


まさか初代ファミコン版のゲームシステム準拠とは……。最初はまだ赤とか青とかなかったんだ。

数字が大きいと増収、少ないと損失するんだったっけ。夏だとプラスが大きくて冬はマイナスがエグいんだよな。懐かしすぎだろ。

出たのは、2と3。微妙なところだ。


「ロト社長! 大変ですぞ、所有するカレーショップの近隣住民からカレー臭がすると訴訟をされ、マイナス5000万円の大損害ですぞ!」


そんな裁判で負ける弁護士を雇うなよ、俺が逆転してやろうか。

待った! を連発するのがコツだ。

しかし今の俺は鉄道会社の社長であって、弁護士ではない。


「ロト社長! 赤字になりました! 物件を売却してください!」


なくなく訴訟を受けたカレーショップを売却する。

鞠さんは秋葉原から新宿に移動し、カラオケ店やのぞき部屋という物件を買っていた。何をのぞくのだろう。

来斗さんがやたら羨ましそうに見ているが……。


続いて来斗さんが上野から神田へ。俺の売却したカレー屋と、古本屋を購入した。

あいちゃんは御茶ノ水から俺を追い抜いて町田に近づく。サイコロ2つは5と6が出て、1億円増収だ。

なにすぐに追い抜ける。


サイコロは6! よっしゃ!

だがまだ町田には着かない。遠い。

サイコロの目は、1と1。最悪だ。


「ロト社長! 大変ですぞ、所有するカレーショップが間違えてうんこを提供して、気づかずに食べたお客様から訴訟をされ、マイナス2億円の大損害ですぞ!」


店も馬鹿だが、客も馬鹿だな! ルリルリもびっくりなくらい馬鹿ばっか!

財産を全て手放したうえで借金が1億8000万。まぁまぁ、まだ始まったばかりだからね。


鞠さんは下北沢で古着屋と小劇場を購入。

来斗さんは遠回りになるはずなのに新大久保に向かい、韓国エステを買い占めた。来斗さんのあんな笑顔始めてみた。どういう店なんだろう。エステなんだよね?

あいちゃんが出した目は1だった。今回こそは一番乗りだな。

さて、俺の番だ。


「おっと、ごめんよ」


サイコロを振ろうとしたら変な男が肩にぶつかってきた。


「ああ! ロト社長! いまのはスリの金次です! 1億円スラれましたぞ!」

「いやいやいや、借金1億8000円万円の俺のどこをどうやれば1億円スレるわけ? 無理だろ。そもそも懐に1億円の現金を入れることも無理だろ。スーツケースに入れる量だぞ」

「マイナス2億8000万円ですぞ! それではサイコロをどうぞ」

「無視かよ!?」


理屈が通じねえ。

気にするな。兎に角、町田に一番乗りするんだとサイコロを振るが新百合ヶ丘に到着するに留まる。

借金まみれで物件なんか買えないので意味がない。通常駅の方が良かった。


庵斗和音さんの番でなぜか町田ではない方向に移動。

なんだ、この駅は。ちょっと通常の駅と異なる。


「カードショップで急行カードを5つほど購入しますわ」


カードショップか! 序盤で急行カードを持ってることは大きい。庵斗和音さんやるな。

来斗さんは3を出し、池袋へ。町田は諦めた模様。乙女ロードだの執事喫茶だのを買い占めた。

あいちゃんの番だが6が出ても町田までは届かない。勝てるか……!?


「庵斗和音先輩、急行カードを2枚、倍額で売ってください」

「いいですわ」


なにぃ!?

急行カードを使ったあいちゃんはあっさりと町田に到着。

くそおおお!


「次の目的地は赤羽に決まりましたぞ」


ぎゃああああ!

東京都北区赤羽! ウヒョッ! 限りなく埼玉に近いトウキョー。限りなく神奈川の町田からは遠すぎ。

その後、池袋にいた来斗さんが赤羽に。

初日はそこまでで終了となった。

みんな場所がバラバラなので、バラバラに食事を取り、各自の寝台列車で就寝。なにこの斬新すぎる修学旅行。

温泉でむひょひょイベントどころか枕投げすらできないじゃないか。友情破壊の世界のほうが良かったかな。


2日目、3日目だがキングボンビー的なものが存在しない以上、ここまでの差を埋めることは俺にはできず、圧倒的4位に甘んじることになった。

しかも来斗さんと話す機会もないし、あいちゃんとも特に何も出来なかった。

楽しかったけど。楽しければいいか。


あいちゃんへのお土産に鉄道会社の世界ボードゲーム版を購入した。みんなで同じ部屋に集まってこれやってた方がいいんじゃないのかと思うくらい素晴らしい出来だ。ていうか、そうすればよかったよね。

あいちゃんとは一緒にいたような気もするが、一応物理的には違うものだし、お土産がないと話しかけるきっかけがないしな。


帰りも飛行機で帰った。

年内最後の更新に相応しいよね桃鉄! いや、ごめんなさい、石を投げないで!

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