戸惑い
「それじゃあ色々説明してもらおうか!」
「そんな近づかなくても逃げませんよ〜だ」
わたしはまだ困惑している頭でシルフに尋ねた。
「ねえ。あのシルフが言ってた使い魔ってなに?しかも人の心を喰べるって。
わたしは星宝石を集めてって言われただけなのに。」
「乙愛。すこし落ち着いてよ。」
シルフにそう言われ、深く深呼吸する。
「今朝も話したけど、使徒の使命は星宝石を12個集め、ガイア様に授けること。
でも星宝石を集めてるのはあたしたちだけじゃない。魔王ルシファーも狙ってる。」
「でもルシファーって封印されてるんじゃ?」
「そう。正しく言うとルシファーの封印と解こうとしてる奴らがいる。
それがブラックスター。」
「ブラックスター?」
「うん。ブラックスターを率いているのが古より魔王ルシファーに仕えていた堕天使モレク。
モレクが使い魔を放ち人間の心を喰おうとしてる」
「なんで人間の心を?」
「ルシファーの封印を解くのに必要なのが、人間の憎悪・怨念の負の心。
モレクは人間の負に満ちた心を集めてルシファーの封印を解こうとしている。
人間の闇は深い。この世のどの生き物よりも深い闇を持っている。
だから人間の負の心を欲しがってる。負の心がルシファーの封印を解く力になるの。
そして負の心の力でルシファーの封印を解き復活させ、星宝石を使い新しい世界を創ろうとしている。」
「新しい世界・・・?」
「ルシファーの創ろうとしているのは光のまったくない世界。
何の光も届かない世界。」
ごくん。
わたしは唾を飲んだ。
光のない宇宙。夜空になんの輝きも存在しない世界。
「この世界が闇に覆われてしまったら、太陽もない。月もない。星もない。
何もない世界になってしまう。そんなことになったら人間は生きていけない。
やがで世界そのものがなくなってしまう・・・。」
人間が生きていけない?
世界がなくなる?
あまりに大きな話でわたしは呆然としていた。
「それを食い止めようとガイア様がもう一度ルシファーを封印すべく立ち上がった。
でも以前ルシファーを封印するために強大な力を使い、今の力では再封印できないの。
封印するには星宝石の力を使う必要がある。星宝石を使えば今度こそルシファーを完全封印できる。」
「完全封印・・・。」
「完全封印ができればこの世界から光がなくなることはないし、世界のバランスが崩れることはない。
だからモレクが負の心を集めて封印を解く前に、あたしたちが一刻も早く星宝石を集めてガイア様へ授けなければいけない。」
「うん・・・。」
「乙愛。わかってる?乙愛がしないといけないことは世界を救うことなんだよ?」
世界を救う?わたしが・・・?
理解できない。
今まで普通に生活してきて
おかしなことなんて一度もなかったのに。
わたしは熱くなる胸を両手で押さえた。
「わたしがやらないといけないんだよね?」
「そうだよ。ガイア様の命を受け、ヴァーゴの力を授かった乙愛にしかできない。」
ヴァーゴの力・・・。
首にかけているネックレスに視線を落とす。
綺麗な藍色。吸い込まれそうな深い青。
「シルフ・・・。」
聞こえるかどうかもわからない小さな声で呟いた。
シルフが顔を覗き込む。
「まだなにも信じられないけど、
さっきあの女の人を助けたのは事実で起こったことは全部現実なんだよね?」
「そうだよ。」
シルフが力強い口調で肯定した。
さっきあの公園で起こったことが頭の中をフラッシュバックする。
わたしの目が。耳が。体が。起こったことをすべて現実だと認めている。
「わかった。
ルシファーがしようとしていることはわかったよ。
モレクがルシファーを復活させようとしていることも。
さっきの・・・。あの女の人の心に居たのが使い魔なんだよね。」
「うん。使い魔に憑依されて完全に取り込んでしまったら、人の心を失ってしまう。
そうなる前に乙愛が浄化しないといけない。
モレクが人間界に放つ使い魔を浄化し星宝石を探さないといけない。」
「でもわたし一人じゃ・・・」
「一人じゃないよ。」
「え?」
「12星座の使徒がいるっていったでしょ?」
「そうだけど使徒は星宝石を持ってるだけなんじゃ・・・。」
「星宝石を持っているのはそうだけど、乙愛のように星斗の力を授かっている使徒もいる。」
「その使徒とともに使い魔を浄化し、星宝石を集めるんだよ。」
「そもそもの疑問なんだけど、わたし星宝石なんて持ってないけど。」
「ええー!どういうこと。なんで持ってないの?」
「そんなの知らないよ。持ってないんだもん。」
「そんなはずない。使徒は必ず持ってるはずなんだ。」
「持ってないものは持ってないよ。仕方ないじゃん。」
「仕方ないって・・・。とあ〜!」
「わたしが悪いんじゃないよ!」
「はあ〜。そしたらまずはヴァーゴの星宝石から探さないとな。
絶対近くにあるはずなんだけど。」
シルフが考える人並みに考え込んでる。
ふと時計に目をやる。
「もうこんな時間!明日しずくと待ち合わせしてんの!起きれなくなっちゃう。もう寝るよ!!」
「ちょっと乙愛!まだ話は終わってな・・・」
「はいはーい。また明日ね。おやすみ〜」
さっきまでの深刻な話はどこへやら。
でも眠気には勝てないもんね。
おやすみなさい。
夜空には今日も綺麗に星が輝いていた。




