示された希望
「あら、彼女の名前かしらぁ。」
その時だった、急に呼び止められ声がする方を向くと、派手なドレスに身を包んだ高身長の銀髪の女が片手にカクテルを持ち、バーの席に優雅に座りながら、こちらをじっと見ていた。
「だったら、なんなんですか。あなた、誰ですか。放っといてください!」
俺は、そう言い捨て立ち去ろうとするが、彼女に強引に腕を引っ張られて彼女の隣に座らされてしまった。
(ホントなんなんだよ。ただでさえ怪しいのに、近づきたくなかったんだけどな。
勝手な女だ。)
「今、怪しいとか思ったでしょ~。」
(な、なんだと!!)
表情を隠すのが上手いと自負してるだけに女の言葉はちょっとショックである。
「いや、表情隠すの上手い!とか自分で思ってたんでしょ?それもバレバレよ。
あなたほど、分かりやすい表情をしている人間はいないと思うわ~。」
クスクスと笑いながら、言われた彼女の言葉に今度は素直に驚いてしまう。
(そうだったのか、だからこれまで俺は……。 じゃなくて、この人誰だよ。名前聞かんと。)
「ところで、あなたは一体誰なんですか?どうして俺のこと知ってるんですか?」
「あら、まだ言ってなかったわね。私は、こういう者よ。」
女は思い出したように、手元の高級そうな長財布から名刺を取り出し、渡してきた。
「えーと、ワールド・トレイン・カンパニー??代表取締役兼社長……..。クリスティー=ファウ=ヤマモト。しゃ、社長!?」
「ふふ、驚いたかしら?みんなこういう反応するのよね、特に初めて会う人は。
私って、そんなに社長に見えないのかしら。威厳とかないのかしらね…….。」
(驚くよ!!うん、威厳はないよ!!)
そう俺が思ったとき、彼女がきつく睨んできた。
「まぁ、いいわ。あなた、ウチで、働いてみない?あなたの求めるものがあるかもしれないわよ。」
(俺の求めるものだと?)
「ヒントは私はあなたの過去を知ってる。何を失ったのかも、ね。」
クリスティーは重ねてそう言うと、俺に視線を合わせて、瞬きもせずに目の奥まで見通すかのように見つめてきた。
「ウチがどういう企業が知ってるでしょ?色んな世界を人々が行き交えるように列車を運行する。そうなれば、もしかしたらあなたの恋人もどこかの世界で生きてるかもしれない。
それに、まだ見ぬ異世界を時空トンネルを掘って、つなげていくのも私たち。」
「えーっと、つまりどういうわけ?」
「つまり、どこよりもウチにいれば、あなたの恋人が見つかる可能性がぐんとたかまるってことよ!」
「リリーに。俺は、リリーにもう一度会えるのか!?また、彼女と話しができるのか?」
クリスティーの言葉に興奮した様子で、俺は、声高に問いかける。この骨董無形な話を信じる気になったのは、クリスティーは嘘をつかなさそうだとおもったのもあるが、実は彼女の遺体をみておらず、時空間ならば、あるいは生きてくれているのではないかと思っていたからである。
時空間は例外を除いて、あらゆる世界につながっており、リリーの結界魔法があれば、十分に生存は可能なのだ。
「それはあなた次第よ。あとは、運ね。その様子じゃ、覚悟はできたみたいね~。」
「あぁ、俺はリリーを取り戻す!!彼女手の温もりを再び感じるために。そして、この展望デッキからの夜のライトに照らされた綺麗な夜景を彼女に見せてあげるために。」
(リリー、待っててくれ。きっと見つけてみせるから。迎えにいくからな!だから…….、浮気しないでくれ。)
「ふーん、いい面構えじゃない。ますます気に入ったわ。あと、ほんとここの夜景は素敵よね~。」
クリスティーは、満足した様子で笑みを浮かべたあと、こちらに手を伸ばしてきた。
「えっと、よろしくなクリスティーさん?」
「クリスでいいわよ。親しいひとはみんなそう呼ぶわ。あなたとは、永い付き合いになりそうだしね。」
俺も手を伸ばして、握手に応じると、クリスはお茶目に片目でウインクした。
リリーが生きている可能性がでてきましたね。
これからの展開にご期待くださいませ(⌒∇⌒)