厄災の始まり
4人がギルドから出ると広場には人だかりができ何十人かの冒険者が集まっている。
その中の一人、肩にフェレットの様な動物を乗せた男が壇上に登り演説を始めた。
「今日はこれ程の冒険者が集まってくれたことに感謝する。」
男は辺りを見回すと
「今日集まってくれた諸君を見て私は確信した!この戦いに勝てることを!!」
そう断言した。それと同時に周りから数多くの声援が飛ぶ。
「ふむ、あれは魔獣だな。となると、あの男は魔物使いか。」
「判るのかハートガント。」
「ああ、スウェイド。一見フェレットに見えるが、魔力を纏っているのが俺には見える。」
ハートガントの話によると、フェレットの様な魔獣は斥候タイプの魔獣使いが偵察に使用することが多いそうだ。
「ふむ、財宝ネタを持ってきたのが斥候タイプの魔獣使いか。」
オイーレはひげをさわりながら男を見ている。
「財宝の話は信憑性があるの。」
「その辺りはわたしも疑ってはいない。」
ハートガントもオイーレの意見に賛成の様だ。
「だがドラゴンと戦うと言うのがね。」
その辺りは4人の一致した意見である。
幻と言われるドラゴンの存在。それも問題は無い。
問題はそのドラゴンと戦うという内容である。
人間だけでなくエルフやドワーフなど各種族の言い伝えに共通するドラゴンの圧倒的なまでの強さは並の冒険者では勝負にさえならない。
「ま、あの集団では全滅だろうな。」
冒険者の世界は自分の命を代償にしているような物である。
手に余る相手の場合、自分の命を差し出すほかは無いのだ。
彼らからするとドラゴンと言うのは手に余るものなのだ。
「さて、次の依頼は何時にする。」
ウイルヘルムが今週の予定を聞いてくる。
「わしはいくつかのスキルを訓練しようと思っている。」
「わたしは魔法を幾つか習得する予定です。」
「俺は剣技の訓練だな。」
「なるほど、私も戦闘訓練に励むとするか。」
各自、今週は訓練に充てるようだ。
「じゃあ、1週間後の朝10時、ここのギルドホールで。」
「おう。」「ああ。」「了解した。」
4人は解散し、それぞれの家に帰ってゆく。
その日、スウェイドは昼を少し回るぐらいにギルドの訓練場にやって来た。
訓練場には武術の訓練を行う冒険者がいるが今日はまばらである。
普段は見習いから中級冒険者まで訓練を行っている為、順番待ちが発生するほどである。
それが極端に少なく、訓練を行っているほとんどの者は初級冒険者か見習いの様だった。
見習い冒険者に訓練しているギルド職員に尋ねてみる。
「今日は人数が少ないな。」
「おお、スウェイドか、そうだな、少しできるようになった若い連中が例のアレに行ってな。」
「アレか・・・。だが大丈夫なのか?」
「流石にドラゴンは無いだろう。でもまぁ、大きな事故やケガが無いことを・・・」
そう言い終わらない内に激しい振動と轟音が襲い掛かった。