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古代地下墳墓 2

スウェイドが魔力の塊の様子を尋ねるとハートガントが

「魔力の塊は部屋の中央で固まっているだけだね。」

「となると、出現のトリガーは部屋に入るって事かな。」

冒険者としてスウェイドは分析する。


「部屋の中ほどか、少し遠いの。」

ドワーフは身長が低い分、移動距離が短い。

人間やエルフ達なら10秒ぐらいで到着できる場所でも、20秒近くかかってします。

その上、オイーレは重戦士である。

「仕方ないの。ハートガントが突撃した後、わしも続くか。」


だがハートガントは

「いや待てオイーレ。ウィル、他の強力なアンデットはいないのか?」

とウィルヘルムに尋ねる。

「他は今までと同じくらいの力しか感じ取れないからスケルトンもしくはゾンビだと思う。」


そう聞くと、ハートガントは

「なら、スウェイドとオイーレに突入してもらおう。俺は最初に呪文で攻撃しようと思う。」

と魔法を使うと宣言する。

魔法剣士であるハートガントは出現したアンデットに呪文を唱え、出来るだけ体力(HP)を減らす作戦の様だ。

スウェイドもオイーレも異存はないようだ。

「俺達は問題が無い。先に呪文でダメージを与えるとなると突入後、少し遅らせる。」


「よし。

スウェイドが突入後、アンデットを確認後、少し待機。

アンデットに対してハートガントが呪文詠唱。

その後、接敵して叩く。

では、加護の呪文を使う。」

ウィルヘルムは意見をまとめると、加護の呪文を詠唱した。


加護の呪文は宗派によりその特性が変わる。

癒しの神のフリージアなら防御と抵抗だけが100%分上昇する。

神々の母のレーアの場合、攻撃、防御、抵抗等全て上がるのだが上がる量は60%分の上昇である。

加護の呪文の効果で薄く輝く膜の様な物が4人の体を覆う。


「では行くぞ。」

スウェイドはそう言うと聖堂の中に足を踏み入れた。

部屋に足を踏み入れたと同時に部屋の中央に漆黒の雲の様な人型の塊が湧き出る。

徐々に雲が固まって3mほどの巨大なスケルトンが出現した。

だがスケルトンは通常の腕とは別にもう一対の腕を持っていた。

それぞれ4本の腕に鉈の様なファルシオンと言われる剣を持つ。

「4本腕に武器が4つ。アシュラスケルトンと言ったところじゃな。」

とオイーレはニヤリとしながら感想を述べる。


スウェイドは

「予想通りのお出ましだ。3カウントで右に移動する。」

前に移動ながら宣言する。

「了解。カウントよろしく。」

ハートガントはカウントに合わせ、人差し指を天に向け呪文の詠唱を開始する。


「3,2,1、今だ!」

スウェイドの移動と共に、ハートガントの呪文の詠唱が完了する。


「我が炎の槍よ!我が敵を撃て!フレームジャベリン!」


ハートガントの指がアスラスケルトンを指さすと人差し指の先から燃え盛る火焔槍フレームジャベリンが飛び出す。

火焔槍は轟々と音を立てながらアスラスケルトンに命中する。

フレームジャベリンの呪文は相手に命中させなければならない呪文であり、正確に相手を指さなくてはならない。

その為、必中の呪文に比べ威力は1.5倍ほど高くなる。


「やはり火炎系の呪文はアンデットにはよく効きますね。」

とウィルヘルムが感心したように言う。


「うぉおおおおおおお!!!いくぞおおおおおおおおお!!!」


とオイーレが雄叫びを上げながらアシュラスケルトンに突撃する。

その横をスウェイドが速度を合わせながら走る。

「予定通り、ワシは左側から行く。」

オイーレは自分の取るポジションを再確認する。

「了解。後ろに回りつつ右側から攻撃する。」

スウェイドはオイーレと挟撃出来るように右側から回り込むつもりだ。


「先ずは一撃!!」

オイーレの戦斧バトルアックスがアシュラスケルトンにめり込む。


ガッ!


だが、先ほどまでのスケルトンと違って切断には至らない。

「固いのぉ。手が痺れてしまうは。」

オイーレは戦斧を引き戻しつつ言う。


右に回り込みつつスウェイドも攻撃を行う。

武器は長剣ロングソードと盾の組み合わせ攻守のバランスが取れている。


ガキン!


スウェイドの長剣もアシュラスケルトンにダメージを与えるが思ったより与えていない様だ。

「スケルトンだけあって刃の武器は効果が低くなるようだね。」

そう言うとハートガントは再び呪文の詠唱を始める。

「我が火炎よ!我が敵を焼き尽くせ!フレームミサイル!」


詠唱と共にハートガントの広げた手から火炎の弾が3つ飛び出し、アスラスケルトンに命中する。

火炎弾フレームミサイルの呪文は必中呪文である。

敵の周りに味方がいる場合、誤射を避けるために火焔槍フレームジャベリンの呪文は使うべきではないのだ。


ハートガントの呪文もあって少しずつであるがアシュラスケルトンの体力を削る。

アシュラスケルトンの反撃も4本腕の分、攻撃数は多いが耐えれない事は無い。

大きく傷を受けても、やや後方にいるウィルヘルムが傷を治す。


戦闘開始から5分が経つ頃には周囲を3人が取り囲む態勢になっていた。

あとわずかで倒せると思えたその時、アシュラスケルトンの攻撃方法が変わった。

4本の腕を周囲に突き出し、背骨を中心に高速回転を始めた。


ヒュゥヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!


左右に揺れながら剣風が迫る。


ズパパパパパパパパ!


傍にいたオイーレはあっという間に切り刻まれ重傷を負う。

「グファッ。こんな時は足の短い我が体を呪うのぉ。」

切り裂かれて大量に出血しているが意識はある様だ。

そこへウィルヘルムが回復呪文を唱える。

輝く光がオイーレの傷を瞬く間に治してゆくがまだ少し時間がかかるようだ。


スウェイドは二人とアシュラスケルトンの間に無理やり割り込み剣風を受ける。


カカカカカカカカカカカカカカカカ


何とか盾で受け止めることに成功するが、スウェイドも斬られるのは時間の問題だろう。

それを見たハートガントは、右後方に下がり呪文を詠唱する。

「告げる。炎の精霊よ。大いなる災いとなり我が敵を打倒さんと集いたまえ。フレームストーム!」


アシュラスケルトンの後方で火焔嵐フレームストームが炸裂する。

火焔の嵐は高速回転するアシュラスケルトンを飲み込みその全てを焼き尽くす。

他の三人が一か所に固まったため、範囲呪文である火焔嵐フレームストームを使うことが出来たのだ。

最初から使えばよかったかもしれないが、それだと最後の攻撃で手詰まりになっていただろう。


「やれやれ、何とか倒せたな。」

そう言うとハートガントはほっと一息ついた。

「途中まで調子は良かったのだが、最後のあれはなぁ。」

オイーレはまだ治療中である。

「治療中にあまり動かない。威力の低い攻撃でも一度に回数を重ねられると重症化するね。」

「まったくだ。オイーレの治療中にファルシオンは回収しておこう。」

スウェイドは4本のファルシオンを回収する。

ごく普通の剣だが、売ればそこそこのお金になるだろう。

治療中の二人を除いてハートガントと一緒に辺りそ捜索する。


しばらくすると治療が終わったオイーレとウィルヘルムがやって来て捜索に加わる。

彼らの目的は隠し部屋の存在である。

隠し部屋があった場合、その中に財宝がある可能性が高い。

特に厄介な敵がいたこの聖堂にはどこかに隠し部屋があることだろう。


聖堂は神像が置かれている前に祭壇が存在し、そこから放射状に長椅子が並べられている構造になっている。

探し始めて1時間後、オイーレが何かを見つけた。


「うむ、この仕掛けは何の仕掛けだ?」

オイーレはいつも通り罠を自動的に解除した。

「よし、このスイッチを押してレバーを引くと・・・。」


ガコン


大きな音がして、祭壇の神像がスライドし隠し通路が現れた。

どうやら奥の部屋に繋がっている様だ。


「ウィル、この奥からアンデットの反応は?」

通路の奥を見ていたオイーレが尋ねる。


「奥にはアンデットはおろか悪しき生物はいないようです。」

ウィルヘルムはクレリックのスキルでアンデット感知と邪悪感知を持っている。

相手限定ながらとても便利なスキルである。

「よし、ならば進むか」

オイーレはそのまま通路の奥に入ってゆく。

途中に罠はないようだ。


通路の奥は小さな部屋があり、部屋の中央の台座の上には小さな宝箱が乗っていた。

「罠は無いようじゃな。」

オイーレは宝箱を鑑定しながら罠を調べる。

「精霊よ、件の物品に悪しき行いがなされているかを調べよ。センストラップ!」

ハートガントは呪文により罠の有無を調べる。

「罠はないようですね。」

「鍵もかかっとらんな。よし開けるか。」


そう言うとオイーレは宝箱を開けた。

中には銀色に輝く指輪が4つ並んで入っていた。

その指輪には竜の意匠が施されており、それぞれ違った文様が彫られている。

「これは古代語の様ですね。意味はそれぞれ“時間”“空間”“物質”“伝達”をあらわす単語の様な物です。要鑑定ですね。」

ハートガントは慎重に観察しながらそう伝える。


俺達はこの時手に入れた4つの指輪が世界を変える事件に関わるとは知りようが無かった。


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