表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/80

第18話『巡航ミサイルは飛ぶ。遠く、遅く、しかし確実に』

 所は変わって大西洋上。


 (Submer)S(sible)S(Ship)A(Arsenal)N(Nuclear) (Powered)フランクリン・ブキャナン』から放たれた数百発の『トマホーク2050』巡航ミサイルが欧州大陸へ向かって飛翔を続けている。

 もし、海の上から観察する者がいたとすれば、黒いごま粒が空を飛んでいるように見えたかもしれない。


『トマホーク2050』巡航ミサイルは当然のようにステルス性を備えている。しかし、B-21戦略爆撃機のような絶対的ステルス性ではない。


 あくまでも既存の航空機・ミサイルにくらべて、レーダーに発見されにくい、あるいは小さな物体として映るという、相対的(・・・)ステルス性である。

 兵器としては劣っているように見えるが、そもそもステルス性など考慮していない、元祖トマホーク巡航ミサイルの発展型として生まれた以上、これは仕方ないことかもしれない。


 黒塗りの『トマホーク2050』ミサイルは、ジェットエンジンユニットを除いて、カーボンを多用した非金属系素材で構成されている。


 エッジ部を極力廃した結果生み出された、のっぺりとしたフォルムにくわえて、外殻に製造時から組み込まれた、CMCカーボンマイクロコイルが飛んでくるレーダー波を減損・吸収してしまうのだ。


 むろん、レーダー波を減損・吸収するといっても、完全ではない。跳ね返ってしまう電波はあるし、『そこに何かいる』ことを隠せるレベルではない。


 それが相対的ステルス性というものであり、一言でいえば『トマホーク2050』巡航ミサイルは実際の大きさよりも1/10ほど小さな物体として、レーダースクリーンに映る。


 たとえば、F-22戦闘機にくらべてラファール戦闘機が探知されやすい程度に。

 そしてB-2爆撃機にくらべてB-1爆撃機が探知されやすい程度に。


 空を飛翔する大量の『トマホーク2050』は、欧州全土のレーダー網にしっかりと引っかかっていた。

 だが、それだけだった。通常ならば、何らかの警戒態勢が取られるはずだった。しかし、それは機能しなかった。いかなる命令も、情報共有もなされなかったのだ。


 ━━その秘密こそがB/QB-21爆撃機による、DSBドローン・スマート・ボムの攻撃であり、そしてNSAによる電子攻撃であった。


 現在、電力供給網や無線アンテナ・タワーといったインフラのチョークポイントを集中して攻撃したDSBドローン・スマート・ボムによって、欧州全土は歴史上最大の停電にみまわれている。


 そう、停『電』である。それは停『電力』であり、そして停『電波』でもあった。


 テレビ放送も、携帯電話やスマートフォンと呼ばれた機器を統合した『THE・フォン』によるパーソナル通信も、あるいは行政の整備した防災無線網ですらも、DSBドローン・スマート・ボムはきめこまかく攻撃していた。


 僅かに送電線が絶たれただけで。変電所で小さな爆発があったただけで。無線アンテナに舞い降りた賢いドローンが自爆しただけで。


 E連合全域は事実上、あらゆる攻撃に対して無防備になっていた。


 それを復旧することは十分可能だった。

 しかし、神が導いたとしても数時間。常識的には数日。付随して発生するであろうトラブルを考えれば、完全復旧まで数週間はかかるはずだった。


 ━━その『空白』の時に。


 無数の『トマホーク2050』巡航ミサイルは欧州上空へ達した。

 そして、外殻がばらりと砕けた。DSBドローン・スマート・ボムが出現する。あるいは、堅固な大型レーダーを破壊するための古式ゆかしき誘導爆弾が出現する。


 さらに、今……ハンブルグの空港上空では。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ