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第13話『NSAは欧州のネットワークを『支配』する』

「攻撃開始。欧州全土のネットワークを『支配』せよ」


 α連合国本土にあるNSA本部では、史上最大の電子攻撃が開始されていた。

 NSA本部要員たちの前には、巨大なマップが表示されている。しかしそのマップには道路もなければ、海路も、空路もない。むろん、天体の運行を表示した宇宙空間のマップでもない。


 それは地球全土をつなぐインターネットの上流。

 上位ルータあるいはスイッチと呼ばれるネットワーク機器の配置図である。


『ブリュッセルDC(データセンター)、最上層スイッチへ侵入』

『秘密脆弱性を利用し、スイッチのファームウェアをハックします』


 NSA職員は情報のエキスパートである。その歴史を遡れば、実に第二次世界大戦よりさらに以前、まだ通信が貧弱な電信(・・)で行われていた時代の盗聴に起源がある。


 当時、世界の情報通信を支配していた英国は、ナチス・ドイツとの戦いを経て、第二次世界大戦後の衰退を経て、α連合国と強力なタッグを組むに至った。


 その過程でNSAは生まれた。

 しかし生まれたといっても、組織を動かすのはヒトである。NSAの設立者たちはその前身、さらには祖先にあたる組織からのノウハウと技術を受け継いでいる。


 ゆえに、彼らは情報のエキスパートである。

 そして単に電子情報の専門家であるだけではなく、人が郵便より早く正確な『電信』を手に入れた時代から続く、莫大な歴史的ノウハウを持つ組織なのである。


 ━━そう考えるならば。


 2035年の今、ここに始まった史上最大の電子攻撃もまた、100年以上の膨大なヒトと組織と技術の積み重ね、その一形態に過ぎないのだ。


『ブリュッセルDC(データセンター)、最上層スイッチ群の『支配』を完了しました』

『外部との通信を秘密セッションを除いて遮断』

『同時に第二層以下の『支配』へと移ります』


 たとえば、電力網がどれだけ緻密で巨大であろうとも、そこにブラックボックスは存在しない。なぜならば、電気はどこかで必ずつながっているからである。


 ゆえに、電線と電気回路がそうであるように、インターネットもまた、その通信経路自体にはいかなるブラックボックスも存在しない。


 あらゆるネットワーク機器の通信は、ルータあるいはスイッチと呼ばれる言うなれば『分電盤』を通って、世界の彼方へ飛び、そしてどこかのコンピューターへと届く。


 その通信を遮断することはできる。拒否することもできる。しかし、通信そのものを止めることはできない。たとえスイッチをOFFにしても、スイッチまでは電気が流れるように。


 そう━━どんなに強固な暗号化通信であろうとも、その基本は変わらないのだ。


 ならば、E連合全域のネットワークをダウンさせるには、どうすればいいか?

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