トウキョウの三日目
三日目。
前方のオオカミが大きく跳躍、こちらに噛みつきを仕掛けて来る。
それを後ろに下がって回避して、ウイングブレイドをぶつける。
肉を叩く感触、オオカミは刀身にはね返されてそのまま地面に転がる。
そこに拳銃を軽く撃っておく。そうしないと次の一撃じゃ倒せない。
剣を引いて柄を握り締める、スイッチを押す。
何度も繰り返した動作、だけれど今回は違った。
体が浮き上がった、刀身から吹き出る風で。
空中で踊る僕に、狙いを定めるオオカミ。
冷や汗が背筋を滑り落ちる、とっさに拳銃に持ち替えて連射。
撃った内の何発かがオオカミに命中。
弾が切れて、僕の体が地面に尻餅をつく。
オオカミは、倒れた。
後ろを確認しながら、下に通じる階段へと走る。
ダメージも受けず、無事に一階まで戻ることができた、階段の横に座り込む。
乱れた息を整えながら、さっきの出来事について考える。
スイッチを押してすぐに、風で体が浮き上がった。
あの動作は何度もやったはずだけれど、違うとするなら冷静にやったこと。
刀身があの向きで、静止に近い状態だとなるのかな。
息も整ったから、立ち上がってまわりを見回す。
人は居るけれど、他に用事があるみたいで通り過ぎていく。
階段の周りは開けた場所で、装備の確認をしている人が所々に居る程度。
草原へ戻るには疲れたし、ここで試そうかな。
ウイングブレイドを持って、さきほどと同じ体勢を再現する。
剣を後ろに引いて、止める、スイッチを押す。
浮いた、正確には少しだけ飛んだ。
自分の腰の高さくらいに浮いて、噴き出す風が無くなるまで、前方にふわふわと進んだ。
風が切れると地面に落ちる。効果時間が決まっている様で、そこは容赦がない。
つまり、短時間なら空が飛べる。
もう少しだけ練習しよう。初心者が多い草原でやると、邪魔だし。
スイッチ、二回押したらどうなるんだろう。
ワクワクしてきた、二回のほうも試してみよう。
かちっ、かちっ。構えた剣から、押した分だけ音が聞こえる。
突然、ごうと風が吹いた。埃や落ち葉が巻き上げられて、吹き飛ばされる。
嫌な予感がする、浮き上がった僕の体は何メートルか進んだ。
このままじゃ誰かにぶつかってしまうかも。そう思って体を捻ると、刀身の向きも変わってしまう。
空中で華麗なターンを披露することになった。
効果が切れて着地したときには、階段のすぐ側に居た
もう少し効果が長かったら、僕のすねは五段目の角にぶつかっていただろう。
……今日はレベルを上げて、練習は二階の広い場所でやろう。
僕はそう心に決めると、階段を上がり始めた。