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偶然、女装した俺を“女の子”だと思い込んだ先輩に口説かれ溺愛されています!?  作者: 夜天 颯


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5. 親友と寄り道してたら、先輩にばったり会いました

「帰るか」


「うん」


放課後のチャイムが鳴り終わると同時に、私は立ち上がった。


隣で朝比奈唯斗も席を引く。


特に約束もない、いつも通りの帰り道。


……のはずだった。


「コンビニ寄る」


「なんで決定事項なんだよ」


「いいから来なよ」


「拒否権は」


「ない」


「あるだろ普通」


「ない」


即答だった。


ほんと、このやり取り何回目だ。


「……しゃーねぇな」


「最初からそう言えばいいのに」


「言ってねぇ」


軽く笑いながら、私はそのまま歩き出す。


後ろから足音がついてくるのを確認して、少しだけ口元が緩んだ。



「で、何買うんだよ」


「アイス」


「ガキか」


「うるさい」


コンビニに入ると、冷たい空気が一気に肌に触れる。


外はもう普通に夏だ。


「どれにしよ……」


ケースを覗き込む。


「あー、これいいな」


「早くしろ」


「急かすな」


「溶けるだろ」


「まだ買ってない」


結局、私はアイスを二本持ってレジへ向かった。


会計を済ませて外に出ると、じわっとした熱気が戻ってくる。


「ほら」


一本を軽く放る。


「……なんで二本」


「私が一人で二本食べると思った?」


「思った」


「ひどくない?」


「普段の行い」


「うるさい」


思わず笑う。


こういうの、悪くない。


「……ありがとな」


不意に言われた。


ほんとに、何でもないみたいに。


「……」


一瞬、動きが止まる。


「な、なに急に」


「いや普通だろ」


「普通じゃない」


「普通だろ」


「普通に言うな」


「めんどくせぇな」


なんでそんな平然としてるんだよ。


「……」


胸の奥が、少しだけざわつく。


「……お前さ」


「なんだよ」


少しだけ、間を置いて。


「……そういうとこ、ずるいんだよ」


「は?」


意味がわからないって顔すんな。


「……なんでもない!」


そっぽ向く。


やばい。


顔、熱い。


「お前、顔赤くないか」


「赤くない!!」


「声でかい」


「うるさい!!」


ほんと最悪だ。



「次どこ行く」


「まだ寄るのかよ」


「本屋」


「なんでだよ」


「なんとなく」


「理由薄いな」


でも結局、歩き出す。


隣に並ぶ。


いつもと同じ距離。


のはずなのに。


「……」


なんか、変だ。


さっきから、少しだけ意識してる。


「どうした」


「なんでもない」


「絶対なんかあるだろ」


「ないって」


「嘘つけ」


「うるさいな!」


なんで気づくんだよ。


こいつ。


「……」


また黙る。


でも完全に無言ってわけでもない。


ちらっと見る。


目が合いそうになる。


逸らす。


……何やってんだ私。


「お前、さっきから何してんだ」


「してない」


「してるだろ」


「してない」


「嘘つけ」


「うるさい!」


ほんと調子狂う。



「……あ」


前から人影が見える。


その瞬間。


足が止まった。


「……え」


そこにいたのは――


白瀬凛花先輩だった。


「……」


一瞬、視線が合う。


先輩も少しだけ目を見開いた。


「……こんにちは」


「……こんにちは」


普通の挨拶。


学校と同じ距離。


それなのに。


「……二人で?」


「うん」


私が答える。


「寄り道」


「そうなんだ」


それだけ。


それだけのはずなのに。


「……」


先輩の視線が、唯斗に向く。


すぐ逸らされる。


……なんだ今の。


「……」


そして、今度は私を見る。


「……仲いいんだね」


「まあね」


「……」


ほんの少しだけ、間。


「……そう」


すぐに、いつもの表情に戻る。


「じゃあ、邪魔しちゃ悪いし」


「別に邪魔じゃないけど」


「いいの」


少しだけ笑う。


「また学校で」


「……はい」


そのまま、先輩は通り過ぎていった。



「……」


しばらく無言。


「……ねえ」


「なんだよ」


「さっきの、見た?」


「何を」


「いや……」


うまく言えない。


でも。


「なんか、変じゃなかった?」


「……」


少しだけ考える。


「気のせいじゃね?」


「……そうかな」


「そうだろ」


あっさりしてる。


でも。


「……」


なんか引っかかる。


「……まあいいか」


考えてもわからない。


「それより」


「なに」


「アイス溶けてる」


「あ」


完全に忘れてた。


「バカでしょ」


「お前もだろ」


「私はまだ大丈夫」


「俺は無理だ」


「知らない」


思わず笑う。


結局、こうなる。


「……」


さっきの違和感も、少しだけ薄れる。


でも。


完全には消えない。


「……めんどくさいな」


小さく呟いた。

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