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偶然、女装した俺を“女の子”だと思い込んだ先輩に口説かれ溺愛されています!?  作者: 夜天 颯


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2/12

1. 女装したらイケメン女子に一目惚れされました

――どうして俺は、スカートなんて履いているんだろう。


しかも目の前には、学校一のイケメン女子先輩がいて。


「……綺麗な子」


……終わった。


心の中でそう呟いた瞬間、俺の人生は確実におかしな方向へと舵を切った。


◇


「なあ唯斗」


「やだ」


「まだ何も言ってねぇだろ」


「お前が話しかけてきた時点で嫌な予感しかしねぇ」


昼休み、教室の端。


俺――朝比奈唯斗は、親友でありトラブル製造機である瀬神美央の声を聞いた瞬間、即座に拒否した。


こいつが何か企んでいる時、ろくなことがない。


これは経験則だ。


「合同文化祭、あるだろ」


「知らん。帰る」


「逃げんな」


立ち上がろうとした瞬間、肩を掴まれる。


力強すぎるだろこいつ。


女子だよな?


「メンバー一人飛んだ」


「へぇ」


「代わりが必要だ」


「頑張れ」


「お前がやれ」


「は?」


意味がわからない。


「いや、なんで俺」


「顔」


「は?」


「中性的でイケる」


「何が」


「女装」


「帰る」


即答だった。


全力で拒否する。


が。


「もう決まった」


「決まってねぇよ!!」


「衣装ある」


「聞けよ!!」


数十分後。


俺はなぜか女子更衣室の前に立っていた。


いやほんとに意味がわからない。


「ほら入れ」


「入るか!!」


「大丈夫だって、もう他のやついねぇから」


「そういう問題じゃねぇ!!」


最終的に押し込まれた。


抵抗?した。


したけど負けた。


こいつ普通に強いんだよ。


◇


「……は?」


鏡の前で、俺は固まった。


そこにいたのは。


どう見ても、“普通に可愛い女の子”だった。


「いや待て」


「完成じゃね?」


背後から満足げな声。


「完成じゃねぇよ!!」


「いや普通にいけるだろ」


「いけねぇよ!!」


いやほんと誰だこれ。


目元が少し柔らかく見えるのはメイクのせいか。


髪もウィッグで自然に整えられてる。


服も似合ってる。


……いや、似合ってるのが一番意味わからん。


「ほら、時間ねぇぞ。“唯”」


「その名前やめろ」


「他校設定なんだから名前くらい変えろよ」


「は?」


「朝比奈唯。ほら自然だろ」


「自然じゃねぇよ」


「大丈夫だって。誰も気づかねぇから」


いやその自信どこから来るんだ。


「ほら行くぞ」


「待てって!!」


引っ張られる。


抵抗する間もなく。


俺は――“朝比奈唯”として、合同文化祭の会場へと放り出された。


◇


人、多すぎだろ。


他校も混ざってるから余計にカオスだ。


制服もバラバラで、確かに“誰がどこの生徒か”なんてわからない。


……なるほど。


この状況なら、“他校の女子”として紛れ込める。


いや納得してる場合じゃない。


なんで俺こんなことしてんだよ。


「ほら笑え」


「無理だ」


「不自然すぎるだろ」


「元から無理なんだよ」


「ほら、あそこ案内頼むから行け」


「は!?一人で!?」


「大丈夫だって」


「絶対無理だろ!!」


押し出された。


一人で。


完全に一人で。


終わった。


どうする。


とりあえず歩くか。


不審者にならない程度に。


そう思って歩き出した、その時。


「……ねえ」


声をかけられた。


心臓が跳ねる。


やばい。


もうバレたか?


振り向く。


そこにいたのは――


黒髪ショートの、高身長の女子。


整いすぎた顔立ち。


まっすぐな視線。


そして。


どう見ても、“普通の女子じゃないオーラ”。


(あ、これやばい人だ)


直感が告げる。


逃げろ。


でも逃げられない。


足が止まる。


「その制服」


彼女が一歩、近づく。


「どこの学校?」


距離、近くないか?


いやそれより。


どう答える。


どこだよ俺の学校。


設定聞いてないぞ。


「えっと……」


終わった。


詰んだ。


そう思った、その時。


「……そっか」


なぜか納得された。


「珍しいよね。その制服」


「……あ、はい」


助かった……のか?


「名前、聞いてもいい?」


来た。


最大の山場。


名前。


本名は無理。


じゃあ。


「……唯、です」


ギリギリだった。


声、震えてないか今。


「唯」


彼女がその名前を繰り返す。


「いい名前だね」


いやそれ俺のじゃない。


いや俺だけど。


ややこしいなこれ。


「私は白瀬凛花」


やっぱり。


知ってる名前だった。


学校一有名な人。


イケメン女子。


女子にモテる先輩。


そして今――


その人が。


じっと俺を見ている。


「……綺麗な子」


「……は?」


思わず変な声が出た。


いや待て。


今なんて言った?


「似合ってる、その服」


「え、あ、ありがとうございます……?」


何この状況。


理解が追いつかない。


「ねえ唯」


「は、はい」


「少し、案内してくれない?」


「……え?」


距離、さらに近い。


なんでだよ。


初対面だよな俺たち。


いや初対面だ。


なのにこの距離感なに?


「だめ?」


少しだけ首を傾げる。


いやその仕草ずるくない?


断りづらいんだけど。


「……い、いいですけど」


言ってしまった。


終わった。


完全に終わった。


「ありがとう」


凛花先輩が、少しだけ笑う。


その笑顔が。


やたら、綺麗で。


「よろしくね、唯」


「……よろしく、お願いします」


――この時の俺は、まだ知らなかった。


この出会いが。


この“嘘”が。


俺の人生を、めちゃくちゃにすることを。


そして。


一ヶ月後に。


俺がこの人に、告白されることになるなんて。


想像もしていなかった。


読んでくださりありがとうございました

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