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偶然、女装した俺を“女の子”だと思い込んだ先輩に口説かれ溺愛されています!?  作者: 夜天 颯


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1. 女装したらイケメン女子に一目惚れされました

――どうして俺は、スカートなんて履いているんだろう。


しかも目の前には、学校一のイケメン女子先輩がいて。


「……綺麗な子」


……終わった。


心の中でそう呟いた瞬間、俺の人生は確実におかしな方向へと舵を切った。



「なあ唯斗」


「やだ」


「まだ何も言ってねぇだろ」


「お前が話しかけてきた時点で嫌な予感しかしねぇ」


昼休み、教室の端。


俺――朝比奈唯斗は、親友でありトラブル製造機である瀬神美央の声を聞いた瞬間、即座に拒否した。


こいつが何か企んでいる時、ろくなことがない。


これは経験則だ。


「合同文化祭、あるだろ」


「知らん。帰る」


「逃げんな」


立ち上がろうとした瞬間、肩を掴まれる。


力強すぎるだろこいつ。


女子だよな?


「メンバー一人飛んだ」


「へぇ」


「代わりが必要だ」


「頑張れ」


「お前がやれ」


「は?」


意味がわからない。


「いや、なんで俺」


「顔」


「は?」


「中性的でイケる」


「何が」


「女装」


「帰る」


即答だった。


全力で拒否する。


が。


「もう決まった」


「決まってねぇよ!!」


「衣装ある」


「聞けよ!!」


数十分後。


俺はなぜか女子更衣室の前に立っていた。


いやほんとに意味がわからない。


「ほら入れ」


「入るか!!」


「大丈夫だって、もう他のやついねぇから」


「そういう問題じゃねぇ!!」


最終的に押し込まれた。


抵抗?した。


したけど負けた。


こいつ普通に強いんだよ。



「……は?」


鏡の前で、俺は固まった。


そこにいたのは。


どう見ても、“普通に可愛い女の子”だった。


「いや待て」


「完成じゃね?」


背後から満足げな声。


「完成じゃねぇよ!!」


「いや普通にいけるだろ」


「いけねぇよ!!」


いやほんと誰だこれ。


目元が少し柔らかく見えるのはメイクのせいか。


髪もウィッグで自然に整えられてる。


服も似合ってる。


……いや、似合ってるのが一番意味わからん。


「ほら、時間ねぇぞ。“唯”」


「その名前やめろ」


「他校設定なんだから名前くらい変えろよ」


「は?」


「朝比奈唯。ほら自然だろ」


「自然じゃねぇよ」


「大丈夫だって。誰も気づかねぇから」


いやその自信どこから来るんだ。


「ほら行くぞ」


「待てって!!」


引っ張られる。


抵抗する間もなく。


俺は――“朝比奈唯”として、合同文化祭の会場へと放り出された。



人、多すぎだろ。


他校も混ざってるから余計にカオスだ。


制服もバラバラで、確かに“誰がどこの生徒か”なんてわからない。


……なるほど。


この状況なら、“他校の女子”として紛れ込める。


いや納得してる場合じゃない。


なんで俺こんなことしてんだよ。


「ほら笑え」


「無理だ」


「不自然すぎるだろ」


「元から無理なんだよ」


「ほら、あそこ案内頼むから行け」


「は!?一人で!?」


「大丈夫だって」


「絶対無理だろ!!」


押し出された。


一人で。


完全に一人で。


終わった。


どうする。


とりあえず歩くか。


不審者にならない程度に。


そう思って歩き出した、その時。


「……ねえ」


声をかけられた。


心臓が跳ねる。


やばい。


もうバレたか?


振り向く。


そこにいたのは――


黒髪ショートの、高身長の女子。


整いすぎた顔立ち。


まっすぐな視線。


そして。


どう見ても、“普通の女子じゃないオーラ”。


(あ、これやばい人だ)


直感が告げる。


逃げろ。


でも逃げられない。


足が止まる。


「その制服」


彼女が一歩、近づく。


「どこの学校?」


距離、近くないか?


いやそれより。


どう答える。


どこだよ俺の学校。


設定聞いてないぞ。


「えっと……」


終わった。


詰んだ。


そう思った、その時。


「……そっか」


なぜか納得された。


「珍しいよね。その制服」


「……あ、はい」


助かった……のか?


「名前、聞いてもいい?」


来た。


最大の山場。


名前。


本名は無理。


じゃあ。


「……唯、です」


ギリギリだった。


声、震えてないか今。


「唯」


彼女がその名前を繰り返す。


「いい名前だね」


いやそれ俺のじゃない。


いや俺だけど。


ややこしいなこれ。


「私は白瀬凛花」


やっぱり。


知ってる名前だった。


学校一有名な人。


イケメン女子。


女子にモテる先輩。


そして今――


その人が。


じっと俺を見ている。


「……綺麗な子」


「……は?」


思わず変な声が出た。


いや待て。


今なんて言った?


「似合ってる、その服」


「え、あ、ありがとうございます……?」


何この状況。


理解が追いつかない。


「ねえ唯」


「は、はい」


「少し、案内してくれない?」


「……え?」


距離、さらに近い。


なんでだよ。


初対面だよな俺たち。


いや初対面だ。


なのにこの距離感なに?


「だめ?」


少しだけ首を傾げる。


いやその仕草ずるくない?


断りづらいんだけど。


「……い、いいですけど」


言ってしまった。


終わった。


完全に終わった。


「ありがとう」


凛花先輩が、少しだけ笑う。


その笑顔が。


やたら、綺麗で。


「よろしくね、唯」


「……よろしく、お願いします」


――この時の俺は、まだ知らなかった。


この出会いが。


この“嘘”が。


俺の人生を、めちゃくちゃにすることを。


そして。


一ヶ月後に。


俺がこの人に、告白されることになるなんて。


想像もしていなかった。


読んでくださりありがとうございました

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