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野の花

作者: をりふで
掲載日:2026/01/15

 静かに、ひっそりと陰に隠れて咲く花。

 誰かに見られようとはせず、

 周りに甘い香りを放つことなく、

 果実を実らせることなく、

 息を潜めて佇む。

 放っておいて、近づかないで。

 静かに陰に隠れているところを見つけないで。

 そんな価値など、ないのだから。

 淡々と過ぎていく日々を送るだけで充分。

 はじめから、存在がないのだと思われていい。

 命が尽きる時が、今かもしれないのに。

 生命の息吹を穏やかに終わらせたい。

 風と雨に耐えるために、地下の根は太くて深い。

 地上の花弁や茎や葉は、傷だらけで醜い。

 今すぐ炎に包まれて、灰になりたい。


 君は静かに、ひっそりと陰に隠れて咲く花。

 周りは大輪の花に目を奪われ、

 甘い香りに心を奪われ、

 果実の実りを待ち望んでいる。

 君のことを、誰も気にも留めない。

 守られず、頼らずに風と雨に耐えてきたのだろう。

 花弁も茎も葉も、傷だらけで痛々しい。

 自らの力だけで立つ姿は、とても美しい。

 目を皿にしないと、すぐに見失ってしまう花。

 また見つけられた時の喜びを

 言葉では言い足りない。

 誰かに教えるつもりはない。

 私だけが見つけたのだから。

 甘い香りがない、

 果実が実らないと下を向かないで。

 どうか、上を向いて姿を見せてほしい。

 目を奪われ、心を奪われたのが、ここにいる。

 放っておくことはしない。

 どこに隠れようとも、必ず見つけてみせる。

 見ていないところで、

 火に燃やされて、

 灰になんかさせない。

 

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