野の花
静かに、ひっそりと陰に隠れて咲く花。
誰かに見られようとはせず、
周りに甘い香りを放つことなく、
果実を実らせることなく、
息を潜めて佇む。
放っておいて、近づかないで。
静かに陰に隠れているところを見つけないで。
そんな価値など、ないのだから。
淡々と過ぎていく日々を送るだけで充分。
はじめから、存在がないのだと思われていい。
命が尽きる時が、今かもしれないのに。
生命の息吹を穏やかに終わらせたい。
風と雨に耐えるために、地下の根は太くて深い。
地上の花弁や茎や葉は、傷だらけで醜い。
今すぐ炎に包まれて、灰になりたい。
君は静かに、ひっそりと陰に隠れて咲く花。
周りは大輪の花に目を奪われ、
甘い香りに心を奪われ、
果実の実りを待ち望んでいる。
君のことを、誰も気にも留めない。
守られず、頼らずに風と雨に耐えてきたのだろう。
花弁も茎も葉も、傷だらけで痛々しい。
自らの力だけで立つ姿は、とても美しい。
目を皿にしないと、すぐに見失ってしまう花。
また見つけられた時の喜びを
言葉では言い足りない。
誰かに教えるつもりはない。
私だけが見つけたのだから。
甘い香りがない、
果実が実らないと下を向かないで。
どうか、上を向いて姿を見せてほしい。
目を奪われ、心を奪われたのが、ここにいる。
放っておくことはしない。
どこに隠れようとも、必ず見つけてみせる。
見ていないところで、
火に燃やされて、
灰になんかさせない。




