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平穏なコンビニバイト生活を送りたいのに、呪印のせいで美女たちが密着してくる件〜人生底辺のバイト生活崩壊中〜  作者: 崖っぷちしゃちょー


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第0話「プロローグ——深夜のコンビニにて」

【前書き】

深夜のコンビニで働く冴えない店員・橘悠真。

彼には誰にも言えない秘密があった——。

───────────────────────


【12月3日(火) 深夜2時 新宿】


───────────────────────


 新宿の路地裏にあるコンビニ「マート・オブ・ザ・デッド(俺が勝手につけたあだ名)」に、気だるげな電子音が響いた。


 ウィーン。


「……いらっしゃい」


 俺、橘悠真たちばな ゆうま、25歳。


 レジカウンターの中で、雑誌の品出しをする手を止めずに声をかけた。


 入ってきたのは、迷彩柄の汚れたジャケットを着た、猫背の男だ。


 顔なじみの常連客、サブ。


「よう、大将。……今日は『犬』はいねえのか?」


 サブは怯えたように店内を見回しながら、レジに近寄ってきた。


 どうやら昨夜この近所であった騒ぎを、裏の噂で聞きつけたらしい。


「ああ。今は俺一人だよ。店長は早番で上がったしな。……で? 今日は何を持ってきたんだ?」


 俺が尋ねると、サブはニヤリと笑って、懐から薄汚れた布包みを取り出した。


 ゴトリ、とカウンターに置かれたのは、泥だらけの『石ころ』が三つ。


「千葉の『廃棄ダンジョン』のフェンスに穴が開いててよぉ。警備員の目を盗んで拾ってきたんだ。買取所じゃ『ただの石ころ』だって言われて突き返されちまったが……大将、これ、マジでただの石か?」


 サブは疑わしげな目で俺を見る。


 ◆ ◆ ◆


 この世界において、ダンジョン(ゲート)は「国有資源採掘場」と定義されている。


 原則として、立ち入りが許可されるのは、国が発行する『探索者免許エクスプローラー・ライセンス』を持つ正規の覚醒者だけだ。


 免許を持たない一般人がゲートに潜れば、「ダンジョン不法侵入罪」で即逮捕される。


 だが、法律があれば抜け道もある。


 国が管理しきれていない発生直後の『野良ゲート』や、資源が枯渇して警備がザルになった『廃棄ダンジョン』。


 サブのようなDランク以下の無免許者たち——通称『ゴミあさり(スカベンジャー)』は、そういった場所にゴキブリのように潜り込み、正規ルートでは流せない素材を拾って日銭を稼いでいるのだ。


 そして俺は——表向きは時給1,200円のコンビニ店員だが、実は裏で彼らから訳あり品を買い取る「目利き」としての顔も持っている。


 もちろん、俺の正体が『真贋鑑定トゥルース・アイ』という異能持ちだとは、誰も知らない。


 サブのような末端ブローカーたちは、俺のことを「経験豊富で目利きのいい買取屋」くらいにしか思っていないはずだ。


 それでいい。


 組織に目をつけられず、自由に生きるには、このくらいの距離感がちょうどいい。


 ◆ ◆ ◆


 俺はため息をつきつつ、眼鏡の位置を直すフリをして『鑑定』を発動した。


 視界が青白く発光し、石ころの上に半透明のウィンドウが浮かび上がる。


【対象:ダンジョンの石(×2)】→【価値:なし】


【対象:火鼠の胆石(×1)】→【価値:C(素材)】


「……はずれが二つ。当たりが一つだ」


 俺は二つの石を弾き飛ばし、残った一つ——見た目はただの黒い石——を手に取った。


「こいつは石じゃなくて『火鼠ひねずみの胆石』だ。一見するとただの岩だが、割ると中に発火作用のある粉が入ってる。正規のギルドじゃ見落とされがちな素材だな」


「マジか! さすが大将、目利きが違うぜ!」


 サブが色めき立つ。


 俺はレジのドロワーを開け(本来は禁止だが、俺の裏金用封筒から)、千円札を四枚取り出した。


「相場は七千円だが、リスク管理費込みで四千円だ。文句あるか?」


「ねえねえ! 四千円もありゃ、今夜は豪遊できるぜ!」


 サブは千円札をひったくると、お礼に缶コーヒーを一本だけ買って、上機嫌で店を出て行った。


 チャリン。


 俺の手元には、四千円で仕入れた胆石が残る。


 これをネットの裏オークションに流せば、一万五千円にはなる。


 差額の一万円が俺の利益で、残りの千円が裏金だ。


「……よし、今夜の食費は稼げたな」


 俺は胆石をポケットにしまい、満足げに頷いた。


 サブのような末端ブローカー相手なら、この程度の小遣い稼ぎは問題ない。


 組織に目をつけられるような大物案件さえ避ければ、俺は平和に暮らせる。


 これが俺の「日常」。


 表向きは真面目なコンビニ店員、その実態は、無免許のハイエナたちから訳あり品を買い取る、裏の目利き屋。


 今夜は、このまま平和な小銭稼ぎで終わるのだと——


 そう思っていた。


 ◆ ◆ ◆


───────────────────────


【12月3日(火) 深夜2時半 新宿】


───────────────────────


 その「日常」をぶち壊す、とんでもない客が来店した。


 ウィーン。


 自動ドアが開き、一人の客が入ってきた。


 ダボッとした赤いパーカーを深めにかぶり、黒いマスクで顔を覆った小柄な人物だ。


 怪しい。


 万引き犯か? それともサブの仲間か?


(……魔力持ち? 覚醒者か?)


 不審な客は、キョロキョロと店内を見回した後、一直線に「スイーツコーナー」へ向かった。


 そして、新作の『極上ふわとろプリン』の前で立ち止まり、小刻みに震え出した。


「……ぅ……あぅ……」


 小さな呻き声が聞こえる。


 そして次の瞬間、その不審者はカゴいっぱいにプリン、シュークリーム、エクレアを放り込み、さらにスナック菓子の棚を爆撃(爆買い)し始めた。


 カゴ二つ分、山盛りのジャンクフードを抱えて、客がレジにやってくる。


 その動きに合わせて、パーカーの下で何か大きなものが揺れているのが見えた。


 伸ばした腕を下ろした瞬間、重力に従ってドサッ、と落ちてくる感覚が、見ているだけで伝わってきた。


 不審者が振り向くと、その慣性で胸が左右に大きく揺れる。


 ゆっくりと、だが確実に、その質量を誇示するような動きだった。


 かなりの、いや、規格外の——


「……会計、お願いします」


 鈴を転がすような、でもひどく疲れた声。


 俺は商品をスキャンしながら、強烈な違和感を覚えていた。


 この圧倒的な魔力量。


 さっきの薄汚れたサブとは対極にある、高貴な気配。


 俺はバーコードリーダーを構えたまま、こっそりと『鑑定』を発動した。


 その結果を見た瞬間、俺は思考停止した。


【氏名:神宮寺 マリア(じんぐうじ まりあ)】

【年齢:19歳】

【職業:聖女 / アイドル】

【所属:日本教会】

【ランク:A級(非戦闘員)】

【スキル:浄化(Purification)/ 祝福(Blessing)】

【スリーサイズ:99-57-89(Iカップ)】

【状態:空腹(極限)、ストレス(爆発寸前)、変装バレバレ

【思考(表層):『お腹空いたぁ……甘いもの食べたいぃ……もう限界ですぅ……』】

【目的:深夜のドカ食いによるストレス発散】

【備考:教団の寮から脱走中】


「…………は?」


 俺は二度見した。


 目の前の不審者と、頭上の防犯用モニターを交互に見る。


 店内のテレビでは、再放送のニュースで清楚な聖女様が『粗食こそが魂を清めるのです』と微笑んでいる。


 目の前の不審者は、ポテチとプリンの山を抱えて、涎を垂らしそうになっている。


 そして何より——Iカップ? 99センチ?


(……本人だ)


 間違いない。


 あの国民的アイドル聖女が、深夜のコンビニでスイーツを爆買いしている。


 ◆ ◆ ◆


「……あ、あの、店員さん?」


 俺の手が止まっていることに気づき、不審者がおどおどと上目遣いをしてきた。


 マスク越しだが、その瞳は宝石のような碧色だ。


 そして、彼女が身を乗り出した瞬間——パーカーの胸元が大きく揺れた。


 重力に逆らうような、それでいて柔らかそうな質量が、布地を押し上げている。


 俺は慌てて視線を逸らした。


「早くしてください……。見つかったら、連れ戻されちゃう……」


 連れ戻される?


 どうやら「脱走中」というステータスは本当らしい。


 ストレスで爆発寸前になり、夜中に寮を抜け出してスイーツを買いに来た聖女様。


 ……人間臭すぎて、逆に好感が持てる。


 落ち着け。これはチャンスだ!


 さっきの四千円の取引なんて目じゃない。


 向こうから飛び込んできた「コネ」を、みすみす逃す手はない。


 俺は神速のレジ打ちで会計を済ませると、あえて「標準語」ではなく、少し砕けた口調で話しかけた。


「……大変そうですね、お嬢さん」


「えっ?」


「これ、サービスしときますよ」


 俺はレジ横のホットスナックから、『ラグジュアリーチキン』を一つ取り出し、袋に放り込んだ。


 もちろん、俺の自腹だ。


 二百円の投資で済むなら安いものだ。


「え、でも……」


「疲れてる時は、甘いものとしょっぱいものを交互に食べるのが一番ですから」


 俺はニカッと笑って、袋を渡した。


 聖女様は呆気にとられたように俺を見つめ——やがて、マスクの下でふにゃりと笑った。


「……ふふっ。店員さん、詳しいですねぇ」


「ええ、プロですから。あ、あとこれを」


 俺は聖女様に『とあるチケット』を渡した。


 俺お手製の『特賞:有名パティシエ監修・季節の最高級フルーツタルト(ホール) 無料引換券』だ。


 彼女はチケットを確認せずそのまま受け取り、袋を大事そうに抱えると、店を出て行こうとした。


 その動きに合わせて、またしてもパーカーの下で豊満な膨らみが大きく揺れる。


 まるで水風船のような、それでいて確かな弾力を持った——


 俺は再び視線を逸らした。


 ◆ ◆ ◆


 だが、その時だった。


 店の外から、複数の足音と怒号が聞こえてきた。


『マリア様ー! どこですかー!』


『反応はこっちだ! この辺りにいるはずだ!』


 黒服の男たちが、店の前を走り回っている。


 教団の追手だ。


 ライトの光が店内に入り込む。


「ひっ……!」


 聖女様が悲鳴を上げて、商品棚の陰に隠れた。


 その拍子に、パーカーがはだけ、白いTシャツに包まれた胸元が露わになった。


 「I ♡ AKIBA」のロゴが、その圧倒的な曲線によって歪んでいる。


 完全に包囲されている。


 このまま出れば一発で見つかるだろう。


 俺は一瞬考え、そしてカウンターから出た。


 これは、ただのサービス(おまけ)じゃない。


 未来への投資だ。


「……お嬢さん。裏口、使いますか?」


 俺の提案に、聖女様が目を丸くして振り返った。


「え……?」


「ここのバックヤードから、隣の路地裏に抜けられます。そこなら死角になってて、黒服たちには見つかりませんよ」


 俺はバックヤードの扉を開けて手招きした。


「さあ、今のうちに」


 聖女様は一瞬迷ったが、外の喧騒を聞いて決心したようだ。


 小走りで俺の元へ来る。


 その動きに合わせて、胸が大きく跳ねた。


 タプン、タプン、と重量感のある揺れ方だ。


 俺は必死に視線を彼女の顔に固定した。


 彼女は潤んだ瞳で俺を見上げた。


「……あなた、名前は?」


「橘です。ただのコンビニ店員ですよ」


「タチバナさん……。この御恩は、忘れませんですぅ!」


 彼女はそう言い残し、大量のスイーツを抱えて闇夜へと消えていった。


 その背中で、豊満な胸が揺れているのが最後まで見えた。


 パタン、と扉が閉まる。


 ◆ ◆ ◆


 俺は静かになった店内で、小さくガッツポーズをした。


「……よし。コネ作り、第一段階クリア」


 さっきの四千円の取引も悪くなかったが、今の二百円の投資は、間違いなく人生最大のリターンを生むはずだ。


 これだから、コンビニバイトはやめられない。


 店長——田中勤さん——には悪いが、バックヤードの裏口は今後も有効活用させてもらおう。


 あの人は「橘くぅん、裏口のドア、ちゃんと閉めてくれよぉ」といつも間延びした声で言うだけで、深くは追及してこない。


 いい雇用主だ。


 俺は満足げに頷きながら、レジに戻った。


 ——この時の俺は、まさかこの出会いが、後に自分の命運を左右することになるとは、夢にも思っていなかった。


 そして、それからわずか三十分後——


 俺の人生は、さらに大きく動き出すことになる。


(第0話 完)

【あとがき】

お読みいただきありがとうございます!

新作「平穏なコンビニバイト生活を送りたいのに、呪印のせいで美女たちが密着してくる件〜人生底辺のバイト生活崩壊中〜」

連載スタートです!

主人公・橘悠真は、コンビニ店員をしながら「真贋鑑定」という異能を隠して生きています。

そんな彼の元に、怪しげな客が現れて——?

次回、物語が大きく動き出します!


少しでも面白い、続きが気になる!

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