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二度目の人生は離脱を目指します  作者: 橋本彩里
喪失と執愛

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81.マリアンヌの策

 

 あまりの眩しさに目を閉じそうになったが、目を眇めてマリアンヌとその周辺を観察した。

 マリアンヌは祈りのポーズをとっているだけで、その横でブリタニーがぼそぼそと口元を動かしたのを確認する。

 ベアティは微動だにせず、その様子を見守っている。


 マリアンヌの後方で、彼女が連れてきた二人の男が光を放っていた。ただ、なんの効果もない光は眩しいだけだ。

 ぱん、と祈りに合わせるようにブリタニーが両手を叩くと、先ほどの女性が声を上げた。


「あ、あなた!」


 動作とタイミングで今回の騒動のキーパーソンはブリタニーだとわかる。

 彼女のスキルが必要だから、マリアンヌはブリタニーをそばに置いていたのだ。


「こっちも目を覚ましたぞ」


 あまりの眩しさに目を瞑りマリアンヌたちの様子を見ていなかった人々は、自分の大切な人が目を覚ましたことに気づき喜びの声が上げる。


「動いたぞ」

「すごい。奇跡だ。マリアンヌ様、ありがとうございます」


 あちこちでマリアンヌを称える声が上がるたびに、マリアンヌがゆったりと微笑み頷いた。

 これらはマリアンヌたちにとって茶番だが、彼らには命が、生活が、人生がかかっていることだ。

 聖女対決に持ち込むからには治すところまで組み込んでいるだろうと、私は下手に動くことはしなかった。


 彼らにとって、助けてくれるなら誰でも構わない。

 侯爵家の令嬢で白い衣装を身に纏った美しい姿は、奇跡のような成果との相乗効果を生む。その対比で私が悪く映ろうとも命のほうが大事。

 まずは、彼らが目を覚ましたことにほっとする。


「二人とも、見た?」

「はい。術者がいました。あれは演出の光ですね。あと、彼らにかけられていたのは人を支配するものではなく、催眠系のスキルだと思います」

「僕もそう思う。これだけの人数をかけられるということは、単純な命令で合図があるまで眠っていただけなんじゃないかな。まあ、これだけの人数を催眠状態にできるだけでかなりすごいけど」


 回復スキルを失ったと思われるマリアンヌがどうするかと思っていたが、実に簡単で効果的な仕掛けと舞台だ。


「これだけの仕掛けをして黒い靄が見えないのは気になるけど、ベアティのもまた別にトリガーがあるのかも。あと、この騒動の元凶はブリタニーね」

「わかりました。タイミングを見て彼女を確保します」

「頼むわ」


 会話をしている間も次々と感動の声とともに人々が目を覚ましていくが、どれだけ待ってもまだ三分の一ほど目覚める様子がない。

 目を覚ました者の家族や友人たちは喜んでいたが、まだ目を覚まさない者たちがいるのに気づきその声がなくなっていった。


「どうして」


 称える声が小さくなり、マリアンヌが戸惑いとともにブリタニーを見たのを私たちは見逃さなかった。

 ブリタニーはにこにことマリアンヌを見返すだけでこの状況をどう捉えているのかわからず、その二人の様子に違和感を覚える。

 ブリタニーがどうしてマリアンヌを崇拝し、このようなことに協力しているのかは知らないが、人死が出た以上彼女も同罪だ。


 まず、彼女のスキルは何かだが、死に戻り前のマリアンヌの状態を鑑みて魅了魔法だと思っていたが、催眠だとしたら今回の騒動も納得だ。

 マリアンヌの崇拝度から見て、彼女の悪意がなくその行為が善だと思っていたならば、黒い靄として見えないのではないか。


 そう考えると、いろいろなことに説明がつく。

 そして、間近で何が起きているのか、見えないだけで他人の意思を踏みにじる行為があると認識した今、それは聖女スキルで解けると確信が持てた。


 ただし、決着をつけなければならないのでタイミングは大事だ。

 今はマリアンヌの動揺の原因、マリアンヌにとってさっきの動作で起きるはずであった人たちが目を覚ましていない状況について触れる。


「まだ、目を覚ましていない人がいますが」

「そ、それは……。そもそも見ているだけの人に言われたくないわ。治療で人を殺しておいて、よく平気な顔をしてこの場にいれるわね」


 ここに誘い込んだのもそちらだし、その噂を流したのもそっち。


「それは全く身に覚えもないことですし、見ていろと言ったのもスタレット様ですので。あとは私にということでしたら、今すぐ動きますが」

「あなたは人殺しなのよ。皆さん嫌がるに決まっているわ」


 やれと言ったり、やめろと言ったり一貫性がない。


「では、スタレット様が皆様を治してあげてください。何度も言いますが、私は誰が回復魔法を行使するのかではなく、ここにいる人たちが一刻も早く苦しみから解き放つことが重要だと思っております。彼らが私では不安だと言うのなら、スタレット様がぜひ助けてください」

「図々しい」


 どこが?

 思わず呆れた視線を向けると、かぁっと顔を赤くさせたマリアンヌがここまでで一番大きな声を上げた。


「そこまで言うのなら、ここにいる者が証人ですわ」


 そこまでというほど何も言っていないし話についていけないが、あらかじめ決めていた段取り通り進めるようだ。

 本来は全員治療した状態で、意気揚々と私を貶めるつもりだったのだろう。


「あなたは」


 マリアンヌの合図でここに連れてこられた人物は、私が治療した一人だ。


「この人は俺と一緒に治療を受けた友人を殺したんだ」


 男は私の前に立つと、ふるふると腕を振るわせて私を指した。



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