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二度目の人生は離脱を目指します  作者: 橋本彩里
聖女と離脱

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71.双子の追撃

 

 それから、あっ、と声を上げ、双子の怒濤の揺さぶりが始まる。


「やっぱりさ、理由に関係なく、むしろその穴を埋めるように人助けをしている人を責める意味がわからないよね~」

「確かに。もしかして、評判を奪われそうだから目の敵にしてるとか? 案外、噂もマリアンヌ嬢が流していたりして? さすがにそれはないか」

「うわぁ。そうだったら、本当に怖いね~。エレナちゃんの回復魔法を近くで見てきて思うんだけどさ。マリアンヌちゃんのレベルって、周囲に崇められるほど凄くないよね」

「ミイルズも思ってたんだ? 僕もずっと思ってた」


 次々と繰り出される会話に誰も間に入れない、または入らないでいた。

 死に戻り前は別として、今の双子はそこまでマリアンヌにひどい扱いをされたわけではないだろうけれど、双子は双子で思うことがあったのか。


 その辺りの双子の機微はわからないけれど、彼らの妹を治療したことで私への信頼がすごい。

 私もどう口を挟んでいいのかわからず見守る。


「やっぱりそうだよね~。本当にさ、悪いことではないんだよ。どちらも人のためなんだから」

「マリアンヌ嬢が相手にするのは軽度の患者だったし。別にそれは悪いことではないし褒められることだよ」

「でも、こうして人を貶めようとするとその辺も話が違ってくるっていうか。同じ志を持った人なら、多くの人を助けられてよかったと思いそうなのに」

「それ! 本来、人を助けることができるってすごいことなんだよ。美談ですまされない苦労だってあるし。そういったこともわかるはずなのに、どうしてエレナ嬢を責めるのか不思議でならないよね」


 少しだけ上げ、全力で落としにかかる。

 周囲にこれはこういうことですよねと説明しながらなので、やけに説得力があった。


 さすがにブリタニーも擁護するための口を挟めず、表情が見えないのでわからないがマリアンヌのダメージは相当溜まっていそうだ。

 だが、やはりマリアンヌ。

 涙はシリルに通じないと指摘されたため、甘えた口調で反論を開始した。


「ミイルズもアベラルドもそんな子じゃなかったでしょ? ごめんね。忙しくてかまってあげられなくて。拗ねないで」

「子ってなに? 拗ねてないから。そもそもマリアンヌ嬢って僕たちをおもちゃのように思ってるよね? 可愛がるってそういう意味だよね」

「僕らだって見下されてるのは気づくよ。確かに家の格はスタレット侯爵家より低いけれど、僕らは次期伯爵候補だよ。だからキープもあったのだろうけれど」


 双子はそこで同じように甘えるような声を出した。

 責めているわけじゃなくて僕たちも悲しいんだよと、マリアンヌと同じ手法で返す。


「そんなわけないじゃない。私、あなたたちが本当に好きよ。だから、元の二人に戻ってほしい」

「元の僕たちってなんだろうね?」

「これに関してはお互い様だからいいけど、もう僕たちは居心地のいい場所を見つけたんだ」


 そこで双子は私の前で膝をつき、じっと見つめた。

 話の流れが変わってきたのを感じ、何をするのかと彼らを見下ろす。


「心から安らげるってこういうことだって教えてくれたエレナちゃんは、僕たちにとってかけがえのない人なんだ」

「いなくてはならない大事にしたい人」

「おもちゃだとか、何か要望があるだとかではなくて。心からとっても好きと思える人」

「初めてちゃんと人として向き合いたいって思った」


 もともと悪戯好きな双子はコンビネーションがよく、あのマリアンヌに負けぬ勢いにドキドキする。

 正直、双子がここまでマリアンヌに強く出て、私を庇おうとしてくれるとは思っていなかった。


「ありがとう、ございます」


 嫌われていないだろう、彼らの妹のシドニーを助けたことの恩義を感じてくれているだけで、それ以上のことは何も望んでいなかった。

 私が進みたい道を邪魔しなければいいくらいに思っていた。


 ――なんだろう、感情がぐちゃぐちゃだ。


 まっすぐな好意は心強いし、私のこと、マリアンヌの本質を理解し大勢の前で主張してくれたことは嬉しい。

 だけど、知らぬ間に彼らの大事な部分を預けられてしまっているようで、私でいいのか、これでいいのか不安になる。

 正直、どうすればいいのかわからないというのが本音だ。


 双子が跪いたことで自然と視界が開け、マリアンヌと対峙する。

 眉尻を下げ悪いことをしていませんとか弱さと正当性を主張しようとしているが、きゅっと引き結んだ口と私を刺すように見つめる瞳が苛烈な怒りを隠しきれていない。


「だから、そんな大切な人を傷つけられて僕たちが守ろうとするのは普通でしょ?」

「家柄とか関係なく守りたい人だからね。マリアンヌ嬢の後ろにいる人たちとは違って、心から慕っているから」


 双子は私の手を取り持ち上げると、敬意を示すように額をつけた。


「……!?」


 小さな悲鳴がマリアンヌの口から零れる。

 双子も、ベアティもシリルもランハートも。彼らのすべてを欲したからこそ、自分の思い通りにしたかったからこそ、死に戻り前は彼らを精神的に支配したマリアンヌ。

 双子のこの行為は、確実にマリアンヌの琴線に触れたことだろう。


「エレナちゃん、そういうことだから僕たちも仲間に入れてね」

「ミイルズ以外に心を預けられるのはエレナ嬢だけだから。ここまで公言したら逃げられないよね?」


 だから、この手を振り払わないでねと、二人がにこっと笑みを浮かべる。

 こういうところは、やっぱり双子だ。

 マリアンヌを追い詰めるついでに、私にも圧をかけてくる。


「僕たちの初めて受け取ってね」

「そう。僕たちお互い以外にここまで気になる人いなかったから手放さないでね」


 そして、そういうことだからとマリアンヌを見てにっこり笑った。

 やっぱり、これ煽っているよね?

 一筋縄でいかない双子に頼もしさと同時に不安を覚え、私は小さく息をついた。



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