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二度目の人生は離脱を目指します  作者: 橋本彩里
聖女と離脱

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66.噂


 シリルの母親が告げた噂とは、私が偽聖女だとの悪意のある噂のことだ。

 もちろん、聖女スキルのことを内緒にしている私は聖女と名乗ったことはない。


 なのに、偽聖女だと、聖女を語るなど傲慢だと言われ、実力もないのに治療魔法を使って人を殺したとまで言われている。

 田舎の子爵の小娘が、スタレット侯爵の聖女に喧嘩を売っているだの、身の程知らずなど、マリアンヌと比べ私を蔑む悪意あるものも多い。


 私と交流がある人たちはその噂を信じていないが、私をよく思わない者、何も知らない人物はその噂を鵜吞みにしている状態だ。

 擁護する人と、それをまたよく思わない人でここ最近かなり学園の雰囲気がよくない。


「善意の行為に対して酷いですよね。できるならば、私も学園に行きおそばでお守りしたいです。それは敵わないのでベアティやシリルたちから決して離れないでくださいね」


 インドラがそこで悔しそうに告げる。


「二人とも大丈夫だよ。私は気にしていないから。何も知らないのに言う人は、私が何をやっても気に食わなくて文句を言うのよ。そのような人たちのことを考えるだけ時間の無駄だから」


 あまりの内容と噂の出どころを思うと嫌悪は増すが、こちらが委縮する必要はない。

 相手は私を貶めたくてあることないこと嘘をばらまいているが、私は私が顔向けできないことはしていない。


 ならば、自分の信念を貫き過ごしているほうがいい。

 その事実を周囲がわかってくれるだけで十分だ。


「エレナ様が気持ちを強く持たれているのならいいのですが、エレナ様がおっしゃるようにそういう人はどんなことでもいちゃもんつけてきます。足をすくってこようとするので、特にスキルを使う場合は信頼できる人がいるところでしてください」


 インドラにもどかしげに言葉を重ねられ、私はきゅっと唇を引き結んだ。

 その噂の根源は誰か、どのように流布されたのかはもう調べはついてある。マリアンヌとその取り巻きたちだ。

 それに関して、こちらも動いてはいるが次々と勝手な噂を流され追い付いていない状態だ。


 もともと王都での人気が違う。慈善活動をしてきた由緒ある侯爵家の娘であるマリアンヌと、ここ最近王都に出てきた田舎娘。

 どちらのことを信じるか、忖度も込みでマリアンヌのほうが圧倒的に優勢だった。


 最近、私への追い込みがひどく、王都でのランドール子爵家の評判にも影響しそうな勢いだ。

 目をつけられているばかりに周囲に迷惑かけてしまってと情けない気持ちになるが、ここで私が謝るのは違うとぐっと堪える。


「うん。一人にならないように気をつける」


 二人のように心を砕いてくれている人たちのためにもそういうことにも気にしつつ、マリアンヌなんかに負けないんだからと私は気合を入れた。



 美女獣人二人に心配され送り出されたその日。

 午前の授業が終わり机の上を片付けていたら、通り過ぎざまに聞こえるように嫌味をぶつけられる。


「ランドール子爵令嬢って、厚顔無恥だよね。一人の少女が死んだって聞いたけどよく堂々と学園に来られるよね」

「金に物言わせて治ったと言えって言われたんだって。そういうことする人だからじゃないの?」

「それなのに殿下に気に入られてさ。きっと騙されているんだよ。殿下たちも目を覚ましたらいいのに」


 嫉妬や侮蔑、哀れみと様々なものが入り交ざった棘のある言葉の数々。吐き出した相手に視線を向けると、気まずそうに視線を逸らす人と睨みつけてくる人に分かれた。

 ちくちくと一人になる時間を狙ってくるので、微妙に面倒くさいし続けば気分はよくない。


 私が見るとそれ以上言ってこないので、明確な証拠もなくただ自分より下だと優位性を見つけて自尊心を満たしているのだろう。

 私を攻撃することで、マリアンヌに取り入りたい思惑が透け見える。

 自分の正義に酔っている人たちの相手などしていられないと視線を戻すと、今度はずさささっと彼らは一気に距離を空けた。


「エレナ様。また変なのに絡まれているのですか? 駆除しますか?」

「エレナお嬢様はお優しいから許されているのに気づかなくて、さすがに頭大丈夫か心配するレベルですね」

「あ~、僕たちが来て逃げている時点でお里が知れるよね~」

「似た者同士がたむろしても何も成果出ないのにね」

「言葉の責任はいずれ取ることになる。それよりも食堂に行こう」


 順番にベアティ、シリル、ミイルズ、アベラルド、そしてランハートと、わらわらと集まった五人を見て私は苦笑を浮かべた。


 ――次から次へと。


 ふぅっ、と小さく息をつく。

 それぞれがすっと周囲に視線をやると、私が見た時は挑発的に見てきた人たちも視線を下げた。

 彼らの信念なんてそんなものだと、呆れとともに再び五人に視線を戻した。



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