50.マリアンヌと取り巻き
王都に来てから双子やロレッタのことなど、マリアンヌ関係でいろいろ乱されたが、ここからが本番。とうとう学園生活が始まった。
友人もできたが私は基本ベアティとシリルと行動しており、彼らは飛び抜けて容姿がいいため非常に目立っていた。
「マリアンヌ様。お荷物お持ちします」
「いつも綺麗ですね。そばにいることを許していただけて光栄です」
「マリアンヌ嬢しか、勝たぬ」
「授業が終われば、いつものところに行きますか?」
警戒対象であるマリアンヌが、私たちの視界の先にいる。
男性たちに囲まれちやほやされ、彼女はきゃははうふふと学園生活を謳歌していた。
全員見目や地位がよい、もしくは金持ちの人たちなのだそうだが、私には一部顔が見えない人がいた。
見える人と見えない人の違い。
これは精神干渉――、悪意ある魔法に関係しているので、ベアティたちと話し合っていずれ彼らに接触し、ばれないように私の力で支配権を解放しようという話をしていた。
ちなみに、勝たぬと妙な話し方をする人は、黒い靄はないので自らマリアンヌを崇めているようだ。
そういう人は本人の意思だと思うので関与しないが、姑息なスキルによる支配に気づいた場合はそれらを払うつもりでいる。
そうやって少しずつでもマリアンヌの企みを阻み、勢力を減らすことは悪くないはずだ。
何より、彼女による理不尽な支配、横暴を許すつもりはない。
それらの浄化行動は絶対一人で行わないこと。それを条件にベアティたちを説得して、彼らと一緒に取り組むことになっている。
私は視界に捉えながらベアティたちと彼女の横を通り過ぎようとしたその時、甘ったるい声で話しかけられた。
「エレナさんにベアティとシリルも。私たちこれからお茶をしに行くのだけど、一緒にどうかしら?」
一応最初に名前を呼ばれたが、あからさまに視線はベアティとシリルに向けられていた。
私はその視線に気づかないふりをして、二人より一歩前に出る。
「私たちこれから用事があるので、申し訳ありません」
「あら。でしたら、二人だけ一緒にこればいいじゃない」
私たち、と言ったのだけど聞こえなかったのだろうか。
無視したのか、都合が悪いことは聞こえないのか。人の話を聞かない人である。
彼女がいつスキルを発動するかわからないので注意深く言動を見ながら、私は頬が引きつりそうになるのを堪え、言葉を言い換えて再度告げた。
「ベアティとシリルも一緒に行くところがありますので、せっかくのお誘いですが」
「どのような? それはエレナさんだけで行けばいいのではないかしら?」
「彼らにもいてもらわなければ困りますので」
食い気味にこられ、思わず苦笑する。
ここ最近、二人はマリアンヌをうまく避けており、なかなか思うように二人が捕まらなくてマリアンヌが苛立ちを覚えていることは知っている。
今は取り巻きたちもいるため、身分や自分の味方が多いことを逆手にとり強行突破をしようとしているのだろう。
「まあ! エレナさんは彼らを束縛しすぎじゃないかしら。奴隷じゃあるまいし、彼らも自由に行動させてあげたらいいのに。確か彼らはあなたのもとで働いているのだったわね。私なら働かせないでそんな窮屈な思いはさせないわ。彼らにももっと自由をあげないとかわいそうよ」
上から目線の決めつけに、うんざりする。
私たちは私たちの築き上げてきた関係があるため何を言われても響かないが、鼻につく言い方にむっとする。
死に戻り前もうんざりしていたが、その時よりも態度が気になる。
露骨というか、そのせいか周囲の反応も取り巻きたち以外はそこまで全面的に崇めているわけでもない。
私が二度目で気づくことが多いのかもしれないが、もしかしたら死に戻り前は三つめのスキルがそのような特殊効果があるものだったのではないだろうか 。
マリアンヌのすべてが今は偽善に見え疑ってしまうが、学園に入ってもケビンが彼女に靡いている様子もないためその可能性もあるのではと思い始めていた。
回復スキルを公に公表し、お気に入りには精神支配。全体的に魅了魔法のようなもので好感度を上げていたのだとしたら完璧な布陣だ。
「俺たちがエレナ様のそばにいたくているんです」
「そうですよ。それこそ他人に言われたくありません」
無感情に告げるベアティと相変わらず痛烈なシリルの対応に、マリアンヌはかわいそうにと眉尻を下げた。
「そう言わされているのよね。私が力になるから無理しなくてもいいのよ」
決めつけられ、周囲の視線が険しくなる。
どうしても私を悪く見せたいようだ。
途端、ベアティとシリルが殺気立つ。私は落ち着かせるべく彼らの腕を引っ張った。
身分も下のため盾突きすぎるとよくないし、シリルの両親のこともあるので、今は表立って対立することは好ましくない。
彼らもいろいろ心得ているので思わず漏れてしまったみたいだが、毎回これでは落ち着かない。
どうやったら角が立たずにこの場を終わらせられるだろうかと頭を悩ませていたら、颯爽とやってきた第三王子に声をかけられた。
「ああ。こんなところにいたんだね。三人とも捜したよ。――何か、問題が?」
「えっ、あっ、いえ。スタレット様にお声かけていただいたのですが、お断りしていたところでした」
「それは申し訳なかったね。彼女たちとは私が先約なんだ。彼らを連れて行っても?」
「もちろんですわ」
マリアンヌは一度じろりと睨んできたが、ここにきて最後の取り巻きの登場のほうが気になり、私は戸惑いながら紫の殿下を見る。
ランハート・ヴァン・ロートニクス。この日まであまり接点のなかった殿下は、私と視線が合うと紫の瞳をすっと細めた。
年が明けました~
変らずお付き合いありがとうございます!!
皆様にとってよい年となりますように。
本年もよろしくお願いいたします。
橋本彩里




