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二度目の人生は離脱を目指します  作者: 橋本彩里
紫と衝動

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48.奪われたスキル


 ――ちょっと待って!


 頭が混乱する。

 脳内がにわかに騒ぎ出し、胸中に不安が広がっていく。


 ここでもマリアンヌの名前。

 ロレッタには黒い靄がかかっていない。精神干渉がされているわけではなかったため、マリアンヌと繋げていなかった。


 だけど、はっきりとマリアンヌと出会った前後で、スキルが使えなくなったと言っている。

 マリアンヌといえば回復のほかに精神干渉系のスキルがあるのではと疑っているが、ほかにもスキルを持っている可能性があるのだろうか。


 これだけの話では、マリアンヌだと断定するには早計だ。だけど、スキルがなくなったのはもしかしたら人為的な可能性はあるのではないか。

 そこで私ははっとした。


 ――そうよっ!!


 スキルは勝手になくなることはないけれど、なくなったとしたら盗まれたと考えることが妥当ではないだろうか。

 人のスキルを盗むようなスキルが、この世にあるのかもしれない。

 そういった後ろめたいスキルは皆隠そうとするだろうし、九歳で洗礼前というのも大きなポイントのような気がしてくる。


 例えば、人のスキルを奪えるようなスキルをマリアンヌが持っていたとして、教会の洗礼で大々的に告げることのでき誇れるスキルを奪おうと探していたとしたら?

 その茶会では目ぼしい人たちも集められていて、最終的にロレッタのスキルを奪うことにしたとしたら?


 もしそのようなスキルがあるのなら、マリアンヌが今持っている回復スキルはロレッタから奪ったものになるのではないだろうか。

 そこまで考えて、眩暈がした。


 ――えっ、待って待って……。


 私はひゅっと魂が抜けだしそうなほどの衝撃に、再び口を押えた。

 まさかという思いと、マリアンヌならありえそうだという確信的な思い。


「教会の洗礼でスキルはどのように見えた? 例えば、もともとあっただろうところが空欄みたいになっていたとか。全く何もない感じだったとか」

「空欄みたいでした。だから、能力を失ってしまったのだと思っていました」


 すでにスキルがわかり外部には内緒で使用していたロレッタが、そう考えるのも当然だ。それが人為的なものなどと考えもしない。

 スキルに関してはわからないことも多く、それならそういうものとして大抵の人は受け入れるはずだ。


「もし、その空欄があったものがなくなった、つまり誰かによって盗まれた跡だとしたら?」

「盗まれ……。まさか!?」


 そこでロレッタがぶんぶんと首を振り、「えっ、でも……」と戸惑いの声を最後にぴたりと固まってしまった。

 その様子を眺めながら、私は思考を整理する。


 私は死に戻り前、私の聖女スキルがあった場所が空欄になっていた。

 ずっと不思議だったが、その理由が私のスキルを奪ったからだとしたらどうだろうか。


 私も七歳からずっとマリアンヌと仲良くしていた。奪おうと思えば、私からスキルを奪える機会はいくらでもあった。

 死に戻り前の私は洗礼を受けるまで、どのようなスキルがあるかわからなかったため、知らない間に奪われていたら気づけない。

 そこで顎に手をやっていたインドラが、軽く手を上げて考えを述べる。


「もしかして、強奪スキルじゃないですか?」

「インドラ、知っているの?」

「はい。スキルについて勉強するためにたくさん文献を読みました。過去の犯罪者に強奪スキル持ちの者がおり、その人物は他人から三つスキルを奪い、仲違いした親友をはめたと書いていました。強奪スキルはどうやら回数制限があり最高三回であるようです」


 私が王都に来る前に本来のスキルを告白し、聖女スキルが珍しいものであったため、今後の対策のためにいろいろ調べてくれたのだろう。

 とてもありがたく、死に戻り前との違いをこのように感じるたびに負けてはならないという気持ちが強くなる。


 そのようなスキルが実際あるのだとしたら、マリアンヌが持っていたのはその強奪スキルだろう。

 過去、犯罪に使われるようなスキルを侯爵令嬢として発表するわけにはいかず、洗礼を受ける十歳までに代わりになるものを探していた。


 おそらく、身近に他人のスキルを見ることができる人物がいるはずだ。

 そしてその人物から自身のスキルを洗礼までに知り得ていたマリアンヌは、欲しいスキルを吟味し洗礼前にそのスキルを持っていることを知られないために実行した。


「もし強奪スキルを持ち、身近に他人のスキルを見る人物がマリアンヌのそばにいるとすればあり得ない話ではないわね」

「回復スキルと精神干渉できるスキル、ほかにもう一つ持っている可能性もある」

「回復スキルは公向け。精神干渉は人を支配するため。もう一つあったとしてもろくなものではないんだろう」


 ベアティとシリルが嫌そうに顔をしかめ、実際、行使されたことのある二人は嫌悪感たっぷり吐き捨てた。

 そして、彼らの言葉にロレッタが「ああ……」と魂が抜けたように崩れ落ちた。



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