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Prologue : 世界が見守っている

 テレビ画面に、大きな文字が弾けるように表示された。



【— THE WORLD IS WATCHING —】



 華やかな王国の広場。金髪の少女が白と金の礼装に身を包み、舞い散る花びらの中で群衆に手を振る。



 《SNSコメント:#ヴェリタス王国のミレニア女王、3週連続でトレンド1位!》



 パッと画面が切り替わる。



 銀河を背景に、五人組のイケメンたちがアイドルのようにポーズを決め、ウィンクを飛ばす。



 《ナレーション》

「Echo5――音楽と外交で星々をつなぐ、新星グループ!?」



 ミーム動画、夕暮れの決闘シーン、感動の告白、ファンの歓声など、様々な瞬間がハイテンポで流れていく。



 《ナレーション》

「“もし、自分の手で世界を動かせたら?”」



 音楽が壮大なものに変わり、場面もまた変化する。



 儀礼服や鎧に身を包んだ若者たちが光る作戦盤を囲み、宮廷で熱弁を振るい、王の前で忠誠を誓い、大軍を率いて突撃する姿が映る。



 《ナレーション》

「たった一学期で、五つの地域紛争を解決し、三つの経済危機を安定へ導き……」



 画面が宇宙へと切り替わる。


 宇宙船が軌道を離れ、無重力空間でロボットと戦闘を繰り広げる。さっきの若者たちが、今度は宇宙服を着て艦隊を指揮していた。



 《ナレーション》

「……そして今、新たなシミュレーションが始まる。舞台は、星々の海へ――」



 印象的な顔立ちの若者たちが映し出される。凛とした表情。誇り高く、決意に満ちた瞳。



 《ナレーション》

「彼らは外交官ではない。


 将軍でも、王でもない。まだ、“高校生”にすぎない――」



 映像のトーンがふっと落ち着く。



 柔らかな光の差し込む教室。談笑の声。廊下を走る姿。制服に着替えた同じ生徒たちが、机を囲んで笑い合っていた。




 《ナレーション》

「これは、ホライゾン・アーク学園。


 世界最高峰の没入型リーダー育成プログラム。」



 仰向けに寝そべる生徒たちと、それを囲む高機能ポッド。光る神経リンクに繋がれたその様子を、スタッフがモニター越しに見守っている。



 《ナレーション》

「ここでは、完全没入型のシミュレーション世界が用意され、


 生徒一人ひとりの“選択”がリアルタイムで記録・配信されていく。」



「勝利も、裏切りも、すべてが評価される。」



「これはただの学校ではない。」



「未来のリーダーを育てる、世界が見守る舞台なのだ。」



 軽快な音楽と共に、明るい男性の声が画面を切り替える。



 《ナレーション》

「さあ、NEXUS LIVEが帰ってきた!今年の新入生による特別編――『The Lost Crown』、今スタート!」



「彼らはそれぞれ、崩壊した王国の後継者として選ばれ――再建を託される!」



「最後に王冠を手にするのは誰だ!?」



「商人王か? アイドル皇帝か? 傭兵団の頭領か!?」



「ライブ投票、コメント、支援、さらには“物語への参加”も可能!」



 画面にポップなエフェクトと共に、プランや特典が表示される。


 ▷ 新学期スペシャル開催中! 期間限定プラン 登場!


【コメントアクセスプラン】

 月額 ¥1,500

 ・ライブチャットで応援・考察・交流

 ・標準配信すべてにアクセス

 ※舞台裏映像・過去シミュレーション視聴不可


【ライブビューパス】

 月額 ~~¥9,800~~ → 新規登録者限定 ¥7,400!

 ・すべての配信をリアルタイム視聴可能

 ・深夜サプライズ配信/突発バトル/王国アップデート対応

 ・コメント機能&コミュニティ参加 フル解放!


【 NPC参加枠 ― 抽選受付中】

 月額 ¥150,000〜

 ・シミュレーション世界へキャラクターとして参加!

 ・配役ランダム/あなたの存在が物語を変える


 白背景に、静かに浮かぶ言葉。



 HORIZON ARK ACADEMY

 物語を生きろ。未来を創れ。



 その下にスポンサー名が小さく表示される。



 提供:AetherSync社

 教育娯楽振興局

 文部科学省 認定プログラム



 ――カチッ。


 テレビが消えた。



 部屋に静寂が戻る。


 ソファに寝転がっていたシシド・トーヤは、リモコンを無造作にテーブルに放った。


「……さて。」


 彼はゆっくりと体を起こし、近くに掛けてあったブレザーに手を伸ばす。さっきのCMに映っていた制服と同じものだ。

 軽く肩に羽織りながら、微笑む。


「この“未来”、どれだけのもんか……試してみようか。」


 そう呟き、彼は玄関へと向かった。

 まだ“ただのゲーム”だと、信じていた。



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