『智海、癩人と速記談義のこと』速記談3081
智海法印が、まだ有識の地位にすぎなかったころ、清水寺に参詣し、深夜に房に戻られるとき、橋の上で、ほかに誰もいないのに速記問題を朗読する者がいた。近寄って見てみると、皮膚病の男であった。男が朗読した文章の中にある言葉の中で、速記で書きにくいものがあったので、どうやって書くのがよいか尋ねてみると、智海が知らない省略方式を知っていて、京にも奈良にも、これほどの知識を持った者は、ほかにいないだろうと思われたので、また速記談義がしたいと思って、どこに住んでいるのか尋ねると、この橋に住んでいます、との答えであった。後日、この男を再び訪ねてみたが、会うことができなかった。もしかすると、神仏の化身であったのかもしれない。
教訓:速記者には、神仏の化身が多いとか。