第8話 オシャレ初心者、文化祭の試練!?
和歌山の田舎から飛び出した水木菜奈(16)。
「文化祭の班長、水木な!」
「はぁ!?なんでやねん!!」
ライブデビューしたら、まさかのリーダー就任!?
1.文化祭の準備が始まる!
9月。
長かった夏休みが終わり、学校は文化祭シーズンに突入した。
「文化祭か~、ダルいなぁ……。」
「去年の先輩らのやつ、微妙やったしな。」
朝のHR前、クラスメイトたちがダラダラと雑談している。
工業高校の文化祭といえば、技術系の展示が定番。
電気科では「光と電気のショーケース」とかいうタイトルだけはやたらカッコいいけど、結局はLED光らせたり回路を組んだりするだけらしい。
(まぁ、うちはこういうの得意じゃないし、裏方でちょっと手伝うくらいでええやろ……。)
のんびり構えていたら——
「ほな、文化祭の班長決めるでー。」
先生の何気ない一言が、菜奈の平穏を一瞬でぶち壊した。
2.まさかのリーダー就任!?
「まず、展示班のリーダーやな。」
先生が黒板に何か書き始める。
(あー、はいはい。リーダーとか絶対めんどいやつやし、うちは普通に作業班でええわ。)
「展示班のリーダー……水木、やってみるか?」
( ≖_≖ )
「……は?」
教室が一瞬でざわついた。
「おー、水木がリーダー?」
「え、意外すぎる!」
「いやいや、水木、そういうタイプちゃうやろ!」
(ちゃうよ!?なんでやねん!!)
「えっ、ちょ、待って!なんでうち!?」
思わず声が裏返る。
「いや、水木、この前のライブの話でクラスのやつらともだいぶ話すようになったやろ?」
「そういうタイプがリーダーやった方が、みんなやりやすいねん。」
「は!?いや、ライブ行っただけでリーダーにされる意味が分からん!!」
「せんせ、それ、どういう理屈?」
「なんかおもろいからええやん!」
(おもろいからで決めるな!!!)
先生は軽く笑って、さらに意味不明な一言を放つ。
「それに、文化祭ってライブみたいなもんやで?」
「はぃ???」
「いやいや、文化祭とライブ、全然ちゃうやろ!!」
クラスメイトからも総ツッコミ。
「ステージ立つわけちゃうやん!」
「水木、MCせなアカンくなるで?」
「うっわ、盛り上げ係決定やん!」
(いや、リーダーってそんな役職ちゃうやろ!?)
「まぁ、難しいことはせんでええ。班のやつらに指示出すだけや!」
「うんうん、そんなん適当にやっとけばええねん!」
(いや、適当なリーダーが許されるなら、うちじゃなくてもええやん……!)
なんとか逃げようとするが、タイミングを失い——
「ほな決まりやな!」
拍手が起こる。
(いや、ほんまにええんか!?これで!?)
3.文化祭の準備スタート!しかし……
「ほな、みんなで作るもん決めよか!」
リーダーになったものの、何をどう進めたらいいのか全く分からない。
班のメンバーは、クラスの男子4人+菜奈。
で、いざ話し合いが始まったら——
「モーター使ってLED回すの、ええんちゃう?」
「いや、そんなん普通すぎるし、もっとギミック入れた方がええやろ」
「そもそも電源どうする?電池か電源装置か、スライダックで降圧して整流器かますか?」
(……え、ス、スライダー?整流??)
気づけば、みんなが専門用語バンバン使って議論してる。
(こいつらアマチュア無線部やった。完全なオタクやん。)
【筆者注:偏見です。オタクではありません。。。たぶん。。】
リーダーの菜奈は——。
(やばい……まじで話についていけへん……!)
そんな中、班の男子の一人が菜奈に聞いた。
「水木はどう思う?」
「えっ!?」
(振られると思ってなかった!!)
「え、えっと……たいがい、ええ感じで……?」
「たいがい!?どっちやねん!」
(しまったぁぁぁ!!ぼんやりしすぎた答え!!)
4.追い詰められる菜奈
その後も、話はどんどん進むが、菜奈はただついていくだけ。
(うち、ほんまにリーダーでええんか……?)
クラスでは「ライブが好き」「オシャレをするようになった」と少しずつ変わってきた。
でも、リーダーとして何かをまとめるのは別の話だ。
(失敗したら、「やっぱり水木には無理やったな」って思われるんちゃう……?)
そんな時——。
「水木、ちょっとええ?」
班の男子の一人、山田くんが声をかけてきた。
「うちの班、なんかやりにくくない?」
「え……?」
「いや、なんかみんな勝手に話進めすぎてるし、水木、困っとるやろ?」
菜奈は思わず黙り込む。
(……分かっとったんか。)
「まぁ、せっかくリーダーなったんやし、もうちょい仕切ってええんちゃう?」
「えっ、でも……。」
「リーダーって、別に全部知っとる必要ないで?」
(……方向を決める。)
菜奈の頭の中に、一つのイメージが浮かんだ。
(それって……ライブと同じなんちゃう!?)
5.そして文化祭へ……!
準備は大変だったけど、少しずつ班のメンバーとも打ち解け、展示の完成に近づいていく。
(うち、ちゃんとリーダーできてるんちゃう……!?)
そう思い始めた時——。
「水木、展示の電源が……ヤバい!!」
文化祭当日、まさかのトラブル発生!!
(えぇぇぇぇ!?どうする、水木!?)
文化祭は、リーダー菜奈にとって最大の試練となる——!!
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おまけ
『実習服をオシャレにできる説』
文化祭の準備が本格的に始まったある日——。
「うわっ!!」
菜奈は思わず声を上げた。
「どないしたん?」
「ペ、ペンキが……。」
実習服の袖に、真っ赤なペンキがべったりとついてしまった。
「最悪や……。」
「水木、それ前のぶっかぶかの実習服やろ? まだマシやん!」
「まぁ、確かに。どうせ《《サラ》》の実習服あるし……。」
前に間違って届いた大きめの実習服だったから、汚れてもそこまで気にしなかった。
でも、よく見ると——
「あれ? なんかこの汚れ、ハートみたいな形に見えへん?」
田村が指をさした。
「……ほんまや。」
偶然ついたペンキの形が、なんとなく《《かわいく》》見えた。
「なんか、アートっぽくない?」
「……まさかのオシャレ説!?」
準備の合間に先輩たちが作業しているのを見ていた菜奈は、ふと気づいた。
(先輩らの実習服、めっちゃ汚れとる……。)
ペンキやら油のシミやら、どれもかなり使い込まれた感じ。
中には、マジックで落書きがしてあるものもあった。
(意外と、こういうのも“味”なんかも……。)
先生も特に注意することなく、「洗濯しとけばええ」くらいのテンションだった。
(そっか……実習服って、ある程度汚れてるのもアリなんかもしれん。)
菜奈は、ある考えを思いついた。
(なら、新しい方の実習服をオシャレにしてみたらどうやろ?)
(実習服アレンジ計画開始や!)
家に帰ると、菜奈はピッタリサイズの新しい実習服を取り出した。
(どうせなら、偶然じゃなくて、ちゃんとかわいい感じにしてみよう。)
筆を取り、少しずつペンキをのせてみる。
(おぉ、ええ感じ……?)
汚れに見えないように、あえて小さな模様っぽくペンキをのせていく。
(これなら、自然にオシャレに見えるかも!)
「なかなかオシャレやん!」
思わず自画自賛。
次の日、満を持して実習服を着てみることにした。
実習室で長谷川先生が、
「お前の実習服の汚れ、なんか変やないか?」
じっと見られる。
(ヤバい、バレた!?)
「え、えーっと……文化祭の準備でペンキついてしもて……洗濯したら、なんかこうなって……。」
「……そうか。まぁ、洗濯してるんやったらええわ。」
(よし、押し切った!)
でも——
「水木、それ……オシャレ狙ったやろ。」
オシャレ番長木村さんがニヤニヤしながら言ってきた。
「えっ!? な、なんのことやろなぁ……?」
「いや、どう見ても偶然の汚れやないやん!」
「そ、そんなこと……ない……はず……?」
「しかも、そんなにオシャレちゃうで。」
「ええぇ……!!」
密かに自信作だったのに、あっさりダメ出しされる菜奈だった——。
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