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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第16章 魔女帰省編
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勉強もできて戦いも強いイケメンなんて異世界にいたら罠

医術を極めし変態、ケイロンとの戦いです。

「またまた変態っす!」

スコリィはルルドナの入ったお椀を大事そうに抱えて奥へ引っ込んでしまった。


「か、勘違いするなっ!」動揺するフランス系のイケメン、ケイロン。


「店の中じゃあなんや、ちょっと表に出ようか、兄ちゃん」

俺はやくざ映画の見過ぎのおっさんみたいなしゃべり方をして彼を外に連れ出した。


「……オイラは戦闘には向かないから、店の奥にいるぞ」

あきれた様子でスラコロウが引っ込む。……いま思えば、彼が一番正しかったのだ。


**

「で、変態ケロリン」


「おい、銭湯の容器みたいによぶな。ケイロンだ、ケイロン」

……なんでこのネタ通じたんだ。てか変態は否定しないのか。


「そもそも、この店に誰がいるかわかっている?」

ドラゴンにウンディーネだぞ。


「そんなもの、私が知るか! ともかく、この近くには万能薬に近い植物があるらしいではないか。お前の店にはないみたいだったが」

……もしかして、月見草のこと?


「多分それ、満月のとき食べるとなんでも治るといわれている月見草のことだろうけど、大した効果はないぞ。現にうちの店員にも効かなかったし」

嘘ではない。推し活の病に効かなかったし。


「……」


「もう、その薬草はいい! あ、あの残り湯! あれは特殊な薬が配合されているな! ぜひ持ち帰って分析したい! 決して変態的な目的ではない!」

そう叫ぶとケイロンは、足を踏み鳴らした。


〈ダダダダ!〉

立って貧乏ゆすりしているやつ初めて見た。しかもすごい音だ。なんか足の筋肉から汗が蒸発して湯気みないなの出てるし。


「落ち着けって。じゃあ、半分こしようぜ……俺ら同類ともだろ?」


そう言った瞬間、何者かが俺の後頭部をたたいた。

「何をアホなことを話している!」

10時からのシフトのペッカだ。ちびカウボーイコスプレが決まっている。


「私は変態ではない!」


「無理するなって、ケロリン。……素直に、なろうぜ」


「ケイロンだ! ……もういい! 素材のためには手段を選ばない、ドラッグ部門の恐ろしさを見せてくれる!」

手に光の弓矢が出現し、かまえる。数十本もの矢を同時につかみ、放つ。


「ケイロン・アロー!」

自分の名前の技。変態な上に……ナルシスト!


「下がれ!」

ペッカの召喚。一瞬で2メートルものウッドドラゴンが俺の前に出現し、俺を守る。

〈ガガガガガッ!〉

すべて防ぐ。


「フォレストドラゴンの木材加工召喚か……。しかし! 数で押し切る! ケイロン・スターダスト!」

天に数百もの矢が出現し、広範囲に降り注ぐ。

「くそ、数が多い! ふせろ!」


「はっはっは! これで残り湯はすべていただくぞ!」


周囲の地面がえぐれ、舞い上がる砂埃。

しかし、俺の周りと、店には一本も届かなかった。


「……水が欲しいならワタクシが提供しますよ」

天女の羽衣がふわりとゆれる。

「ガディ!」

俺らを店ごと守ってくれたのはガディの水の迎撃魔法。水の球体が無数に浮かんでいる。


「変態は一人で十分です!」

俺とケイロンに水の球体が投げつけられる。俺の顔に水風船くらいの大きさの水球がぶつけられる。

なんで俺まで? とツッコミをしようとした瞬間。


「お前ら、余裕はそこまでだ」

ケイロンが、後ろにいた。砂埃が舞い上がる。


「私の速さについていけるかな? お前らを倒し、――残り湯は、すべていただく」

こいつ冗談ではない。純粋な……変態。


**

「くっ!」

慌てて、距離をとる。

絶対背後アブソリュート・スライディング。必ず相手の背後に回れる魔法体技! お前らの防御魔法がいくら優れていようが、無駄なこと!」


異世界にはナルシストが多い。自分の技の解説をしてくれる。

「ならば、先手必勝で倒すのみ!」


ペッカの声に反応し、ウッドドラゴンが勢いよく相手に爪を振り下ろす。しかしーー。

〈ズザザーー!〉

一瞬で、背後に回り込むケイロン。


ウッドドラゴンは光の短剣を刺され、力尽きる。


「なんだ、今の速さは……?」


ペッカが呆然とウッドドラゴンの残骸を見ていると、ガディの威勢のいい声が上がった。

「やるじゃねーか! 久々に暴れてやるぜ! ウォータニック・カッター!」

二重人格モード! 


〈ヒュンヒュンヒュン!〉

水の刃がいくつも襲う、――が。

「遅い、ですね」


舞い上がる砂ぼこり。ガディに光の短剣が突き立てられる!

〈シュキーン!〉

しかし、ガディには届かない。はじかれる刃。


「……これは、自動迎撃魔法! 水をここまで圧縮するとは!」

ガディへの攻撃はかろうじて防がれたものの、驚愕の表情は隠し切れない。


「てめー、その速さ! キメてやがるな……!? クスリのにおいがプンプンするぜ!」

あのガディさん、口の悪さ、ひどくなってません……?

戦いは押され気味。どうなっていくのか……?


感想・コメントお待ちしております!


2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!

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