医術を極めたイケメンの変態率は異常(異世界調べ)
ケイロンがきましたが……。
「こいつは、医術を極めたケンタウロス! ケイロン!」
スラコロウが焦ったように叫ぶ。
「医術を極めたは言い過ぎさ! 私は薬専門だしね……!」
白衣に馬の下半身。その馬の背には何やら怪しげな丸薬の山。
「医術極めたとか、どうでもいいんだよ! コーヒーをくれ! コーヒーを、我に与えよッ!!」
左手を胸にそえ、右手を天に伸ばし、俺は叫ぶ。
ただ、いくら大きな声で叫んでも……眠い。
「ありますよ」
「なっ!?」
「申し遅れました。私、魔王モール4号店ドラッグ部門の健康素材部隊長ドーピング・草野。このあたりに珍しい素材があると耳にしてやってきました」
どう考えても健康素材集めている感じじゃないが、魔王モールなら仕方ないか。
って、このあたりの素材、そんな貴重なのあるの……?
「御託はいい……! コーヒーをくれ! コーヒーを飲んで俺は昼寝をする!」
「お前、もう目的と手段を取り違えるレベルじゃないぞ」
スラコロウが俺に何か言っているが聞こえない。
「特別なコーヒーですからねえ。珍しい素材と交換ならいいですよ」
「なんでもいいぞ! さあ、うちの自慢の雑貨屋をみてくれ!」
「気前がいいですねぇ!」
俺は店の在庫を減らせるうえにコーヒーが手に入るとは、なんて幸運だと意気揚々としていた。
「てんちょー、ルルドナさん奥に運んでおくっすね……」
小さいままのサイズのルルドナの入った茶碗を運ぶスコリィ。月明かりがよく当たるように窓際に置いておいたが、確かに商品と間違われるかもしれない。
「! そ、それは……!?」
文字通り、ケイロンの目の色が変わる。まるで雷のような閃きが、そのグレーの瞳に一瞬、走った。
「ああ、ちょっと……、人形のお風呂実験をしてまして」
自分でも苦しい言い訳。この年で美少女人形でお風呂遊びしていると誤解されたらどうしよう……?
ケイロンの馬体がわずかに震え、その白衣をまとった腕を伸ばす。
「それをくれないか……!」
俺はケイロンとルルドナの間に立ち、強い視線を相手に向ける。
「ルルドナは商品じゃない。それだけは、ダメだ!」
「いや、何か勘違いしているようだが、私が欲しいのはその人形じゃない」
「……?」
「その人形の……」
ゴクリ……。全員が息をのむ。
「入っていた――残り湯をくれないか」
……。
「は? 残り湯?」
こいつも変態かよ。
だいたい変態です。
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2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!




