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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第16章 魔女帰省編
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異世界で身近になくて最も困るものはコーヒー

衣装を配り終えたようですが……。

 着替えた俺は、奥の部屋でそわそわしていた。

 ――俺の衣装は、スコットランドのキルト。タータンチェックのスカートだ。人生で初めてスカートなんてはいてしまった。


「あれだけ偉そうに言っておいて、お前が一番恥ずかしそうな表情しているな」

 スラコロウに不平を言われる。


「あーあ! お前はいいよな。そんな恥ずかしい衣装を着なくて済むんだから」

「そもそも、お前らが“恥ずかしい”って概念に縛られすぎなんだよ」


「それは、……そうだけど」

 確かに、人はとらわれているんだ。だから……スカートだって平気だ。

 部屋の奥からのぞき込む。


 店番をしているのはスコリィ。頭の両端をお団子にしてノリノリである。

「いらしゃませー! やすいアルよー!」

 一番堂々としている。ていうかなんでその古典的な言い回し知ってるんだよ。


 イゴラくんは……違和感がなさ過ぎてむしろ普段着のようである。ブータンの伝統衣装。

「店長さんできました! 特別なレンガパンです! 春の祭りと聞いたので、いろんなハーブを入れてみました!」

 焼き立てパンをもってきたイゴラくんに見つかってしまった。

「お、いいね。これならたくさん売れるよ。祭りまで無理しないペースで焼いてくれるかな」

 できるだけ平静を装って、イゴラくんに指示を出す。


「わかりました! あ、クタニさん、それ似合ってますね!」

 楽しげに台所へ戻るイゴラくん。

 ……イケメンかよ。


 恥ずかしがっているのも馬鹿らしくなって店の前に出ると、ちょうど工具店のマリーさんがきたところだった。大量の木材を抱えている。

「あら、久しぶりに見ると、……性別変えちゃったのかい?」

「いや違います! 祭りの衣装です!」


「あっはっは。冗談だよ。ここの広場で祭りがあるから、屋台の木材よろしくって手紙があったんだけど、そうなのかい?」

「祭りっていうか、ただのコスプレした奴らの集まりですよ。焚火を囲んで飲み食いするだけです」


「へえ。そりゃ面白そうだね。わたしも参加しようか?」

「コスプレしてから来てくださいね。日が沈んだら開始です。あ、夕食はうちで買ってくださいね!」

「ちょっとは商売上手になったみたいだね。じゃあ、うちの旦那と来てみるよ」


 マリーさんは笑顔で丘を下って行った。


 **

 にしても、眠い。ここ連日、無理した上に酒まで飲んで、眠いことこの上ない。

 木材で簡単な屋台を組み立てた俺は、店の前のベンチでうとうとしていた。


 ――コーヒーが飲みたい。

 そう、一番身近になくて困るもの、それはコーヒー。


「コーヒーが飲みたいコーヒーが飲みたいコーヒーが飲みたい……!」

 早口で繰り返す。耳のいいスコリィがカウンターの奥からあきれ声を出す。


「てんちょーが壊れたっす……!」

「スコリィ、コーヒー買ってきて」

「んなもんは都会にしかないっすよ……あ、でも漢方茶ならあるっす」


「漢方茶があって、コーヒーがない世界なんて……。日本って恵まれていたんだなぁ」


 コーヒーが気軽に飲める。転生前の世界、日本の数少ない良いところだ。


「オイラの魔法でも眠気までは取れないからなぁ」

 解呪魔法が使えるスラコロウが言う。

「いや、この際、眠気なんてどうでもいい。コーヒーさえ飲めれば眠ってしまっていい」


「てんちょー、もう自分の言葉が支離滅裂なことに気が付いてないっすね……」

 そのとき、地面を削るような音とともに、何者かが華麗にスライディングしてきた。


 〈ザザーッ!〉

 砂埃がおさまったあと、俺の横に白衣を着たイケメンが立っていた。

「眠気覚ましを、お探しですか?」

 金髪ヘアーに整った髭、グレーの瞳。それは白衣をきた、――ケイロンだった。

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