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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第16章 魔女帰省編
92/196

宴の準備をしているときが一番楽しい

魔女がやってきたようですが。

「あの、何をやっているんですか、師匠」

その日の午後、二階にこもっていた魔女に俺は恐る恐る話しかける。


「何って宴の準備さ。君たちの働きっぷりを見て、それぞれの衣装を考えていたんだ」


「は?」

「おいおい、世界最初のコスプレ祭り、ワルプルギスの夜の宴を知らないのかい?」

「絶対ちがうでしょ」


「いや、そうだよ。世界最初っていうのは大げさだけどね」

「はあ……」


「ところでキミ、この衣装、似合うと思わないかい?」

「……俺も着るんですか?」

「当然だろう。師匠の私が着てるんだ」

「いやそれ、普段着じゃ……」

「こんな清楚な恰好で普段過ごすわけないだろう?」

「……そっち!?」

スカートをゆらゆらさせる師匠。……おちつけ。中身は何百歳だ。


「ちょっと待ってください、師匠! そこの衣装、ガディに似合うんじゃないんですか」

「おお、これは……なかなか見る目があるね」


「こっちなんて、スコリィ向きですよね」

「うん、ただしこれと合わせると破壊力が倍だよ」

「いや、それはちょっと刺激が……」


こうやって、師匠と俺との秘密の宴の準備は進んでいくのだった……。


**

「目覚めませんね」

ガディの心配そうな声。

俺たちは今、ちびルルドナを見ている。眠るとき、彼女はたまにミニサイズになるが、目覚めないということはなかった。

どうにも調子が悪いと思っていたら、その日の夕方はついに目を覚まさなかった。

……もう時刻は6時を回っていた。


スコリィと目を覚ましたイゴラくんには帰ってもらっていた。


「きこえるか! ルルドナ!」

「……これは、魔力の回復中ってところか。ずいぶん、無理していたみたいだ」

興味深そうに魔女がのぞき込む。


「どうすればいいですか、師匠。このまま」

「そもそもこの子は何者なんだい? 私でも魔力の波動がつかめないんだが」


――俺は彼女のことを正直に話した。


「裏の石で、粘土人形のハニワ? しかも割れてこの少女が生まれてきた? 本気でいっているのかい?」

「あ、まずかったですか……?」


「あっはっは! さすが日本からの転生者だ!」

「もしかして、俺の創作力が足りなかったから」


「まあそうだね。でも心配はいらない。少しのきっかけであとはどうにかなる」

「どういう、ことです?」


「ともかく、ガディくんこの衣装をきて、彼女に回復促進魔法を」

「ガディくん、この衣装で彼女に魔力回復魔法を」


「はい、わかりました……え、衣装? ……しかもそれ!? 露出高くないですかっ!」

「キミしかいない! 心も体も清らかな、キミしか!」

「さ、最高の褒め言葉として受け取ります……!」


**

数分後、ルルドナを大きめのお椀につけ、水の回復促進魔法を使うガディの姿は、――天女そのものであった。

悪魔・水の精霊の容姿をあわせもつガディ。

薄桃色の羽衣の衣装をつけた姿はまさにキングオブ天女。

桃色の羽衣をまとうその姿は、まるで月の光をまとった水の精霊。


「ガディ、君の給与を上げようと思うんだ」

「なんで今言うんですかっ!?」


「天にも昇る気持ちだったんで」

「そんな理由でならいりません」


頬を膨らませて顔を横に向けるガディに魔女が言う。

「いいじゃないか。もらえるものはもらっておく。生存競争の基本だよ」


「はあ……」

「では、その水に私の調合した薬を入れておくから、もうしばらく頑張ってくれ」


サラサラと粉を流しいれる。興味深げに見つめるガディ。

「あとはこの不肖の弟子がどうにかしてくれるから、待っていてくれたまえ」

半日足らずで不肖の弟子になってしまった俺は、ガディの姿を目に焼き付け部屋を出た。


**

部屋を出て屋外に出た俺と魔女。

「それにしてもクタニくん、ルルドナくんが弱っている理由……本当に気づいていないのかい? いや、唐突だったかな、キミは気づきかけてるんじゃないかと思ってね」


「……え?」

違和感こそあったが、心あたりはなかった。


「まあ、時間の問題ではあるけどね。どちらにしろ、現在の様子では回復に時間がかかりすぎる。裏山でこの材料を」


魔女は、はがきサイズの白紙を一枚取り出し、念写を始めた。数秒で終わり、俺に差し出す。

「これらの材料を、裏山でとってきてくれ。そうだな、店番は私がしておくから、ペッカくんを連れて行くといい」

ルルドナは復活するのでしょうか?

にしても祭りの準備っていいですよね。前夜祭とか響きが最高です。


遅れてすみません。


2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!

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