花見で酔っ払ったついでに少女をほめちぎると、あとでやり返されるから気をつけろ
(`・ω・´)【あらすじ】戦いは、一件落着し、古代樹を守り切った雑貨屋メンバー。女神デメテル様からの提案で古代樹の花見をすることに。ガディを誘って夜の花見です。コメディ回です。
(´・ω・`) 【メンバー】
・クタニ(転生者)戦闘力なし/ハニワが闇の力にだけ相性◎
・ルルドナ(ハニワ由来の少女)→ 昼間は強制スリープ。夜になったことで目覚めてバトルに参加。
・スコリィ(ストーンピクシー)戦闘力:中/風×石の複合魔法
・ペッカ(フォレストミニドラゴン)戦闘力:高 → 闇属性に弱いため今回は
・イゴラ(ミニゴーレム)補助魔法:中 → 魔力切れで退場
・ ライムチャート(ゴーレム亜人?)戦闘力:特上/古代還元魔法、戦闘中は博多弁
・ガディ(デビルガーゴイル)→ 店番担当
・デメテル(オリンポス十二神、豊穣の女神、ビール好き)
盆栽仲間に会いに来た。奇跡魔法が使える。ビール生成魔法が使える。
・ペルセポネー:天使のような少女。ボクシングのスーパーキッズ。
【その他メンバー】
・イゴラおじいさん(盆栽ガチ勢)
俺たちは花見をすることにした。
店へ戻って、ガディに声をかける。
「え、今から花見ですか?」
「おう。デメテル様とペルセポネー様もいるぞ」
「ほ、ほんとうですか!?」
「総菜をもって、古代樹の森へいこう」
「いいんですか?」
「ああ、今日は俺が許す!」
――店長になってみたら言ってみたいセリフを言えた俺は、満足気にガディを誘い出した。
店は臨時閉店にした。……最近夜に閉めることこと多いけど、信頼なくなりませんように。
というより、町はいきなり夜になったので混乱していて、村はずれの雑貨屋で買い物どころではないようだった。
**
店の売れ残りの惣菜、イゴラくんの焼いたパン、ペッカのジャム、そしてデメテル様が魔法で出してくれるビール。
俺たちは、ささやかな花見を楽しむことにした。
「一つだけ言っておく、ライムチャートちゃんっ!」
自分の陶器で作ったコップのビールを飲み干して言う。
「なな、なんでしょう?」
こんな賑やかな場では引っ込んでしまうライムチャートちゃんだけど、今日はデメテル様がいるから残ったらしい。
デメテル様の左右にはライムチャートちゃんとちびっこペルセポネーちゃんが座っている。……最高の眺めだ。
「タナトスが醜いって言っていたけど、キミは、……醜くなんかない、かわいいっ! いや、むしろオタクたちにドストレートな属性だ」
「こ、個人的には、そ、そこはどうでもいいのですが……」
目を丸くして俺を見つめるライムチャートちゃん。
「恥ずかしがるなって。ああ、わかってる。自信がないんだろう? そう、みんな自信がないんだ! でも違うね。いいかい? キミはこのメンバーで最大のポテンシャルを持っているんだ。それは、魔力じゃない。……キャラ属性だ! 引きこもり、ぼさぼさの髪、よれよれのワンピース、そんな頼りない外見なのに魔法は絶大! しかも普段はどもりっぱなしなのに、戦闘中は博多女子めざして方言も頑張っている。……惚れないほうが無理ってものだ。俺だって10年若かったら、告白していたよ。ていうかキミ、10年後、俺に告白しなさい」
「へ? ……は?」
ライムチャートちゃんは身を引き、小刻みに震えこちらをにらみつける。
恥ずかしくて声も出ないのかな? 感動のあまり震えているのかな?
少女の何とも言えない表情を見ながら俺は酒をのどに流し込む。
「変態っす!」スコリィのツッコミ。
「不潔です!」ガディの軽蔑の目。
こんなの、今の俺にとっては応援歌に等しい。
「……え、褒め足りない? わかったわかった。基本的にな、俺たちオタクってのは、小さい存在が一生懸命頑張っている姿が好きなんだよ! 飼い猫や飼い犬はもちろん、ポケットに入るモンスターしかり、主人公の方に乗っているリスや鳥しかり。その小さき存在が命を懸けて奇跡を起こすとき、俺たちの涙腺は緩まずにはいられない! それがコンプレックスのかたまりの少女? 最高じゃねーか! この感情は、……もはや崇拝だ! 女神ライムチャート様、爆誕!」
「ママ、あの人やっぱり……」
「ペルセポネー! きいちゃいけません……! ライムチャートも!」
豊穣の女神さまは、娘たちの耳をふさいで俺から距離を置いたのだった。
**
俺の頭にはスコリィとガディのげんこつでコブが二つできていた。
「……こほんっ! クタニさん、いいですか?」
隣に座るデメテル様。二人の子供を引き離して、ペッカと食べ物を食べさせている。ちびっ子たちはペッカのジャムが気に入ったらしい。レンガパンに塗って食べている。
「ええ、なんでもどうぞ。この際なんでも怖くないですよ」
小さな白い花をたくさん咲かせた古代樹を見上げ、女神さまを見る。自分でも珍しいほどに酔っている。まだビール3杯しか飲んでいないのに。
なじられても今なら平気だろう。
「この地に、あなたが転生してきてくれて、本当によかったです。ありがとうございます」
「ぶはっっ!」
俺はあまりに予想外の言葉にビールを吹き出す。目の前のデメテル様がビールまみれになる。魔法ですぐに乾いたが。
「す、すみません。あまりに予想外の言葉だったので……」
「いいんですよ。後でペルセポネーの特訓相手になってもらいますから」
「ママー、私その人にさわりたくないー」
デメテル様の後方からスーパーキッズが俺をごみのように見る。
……死神と同じレベル!?
「ともかく、あなたは、不思議と純粋さを保ってこの世界に転生してきてますね」
「……ええ、まあ。いろんな意味で経験ゼロですから。その辺の学生より純粋ですよ」
「それで、……偶然にも、イゴラくんとライムチャートに出会った。純粋で真っすぐな心を持ったあなたと出会えて本当に幸運でした」
「心は曲がりくねってますが。……まあ、これが俺の真っすぐですが」
「ふふふ。そういうところですよ。あなたのような大人は貴重です」
「あまり褒めないでください。告白したくなります」
「あら、ギリシャ異世界の中でもトップクラスにモテる私に告白するんですか? もっとも、あなたなら伝説の神々を相手にも面白いふるまいを見せてくれると思いますが」
「……やっぱり、遠慮しておきます」
「ふふふっ。それは残念です。まあ、あなたになら告白されても悪い気はしませんね」
金髪碧眼、陶器のような白い肌に、アルコールでほんのりと桃色に染まった頬をもった美人の女神がこちらを見つめる。
異世界の代名詞と言わんばかりの容貌に俺は思わず見とれる。
「ぼ、俺は粘土と結婚したので……」
「そうですか。ちょっと年の差恋愛にあこがれていたんですが」
何千年も離れた年の差恋愛など聞いたことがない。
〈サァァーー!〉
そのとき軽やかな夜風が吹き、古代樹の小さな花が舞い落ちる。
夜風に吹かれ、美しい金髪を揺らめかせ、女神様が俺にささやく。
「ともかくクタニさんは、まっすぐで、純粋で、優しくて、……何より、人の憂いや哀しみを理解できる。表面では軽くふるまっていますが、きっと今までずっとつらい思いをされ、ここまできたのでしょう」
……人の憂いや哀しみ。暗い部屋での十年間が頭をかすめる。記憶のない自分。誰も味方をしてくれなかった十年間。どこにも受け入れてもらえず、何もできなかった自分。
――何か転生前の自分を、ほんのちょっと許してもらえたような気がした。
俺は思わず目頭に熱いものがこみ上げる。
「あー、てんちょー、涙ぐんでるっす!」
ピクシーは無駄に視力がいい。こっちに近寄ってきて指摘する。
「うっせー! 目にゴミが入ったんだよ!」
まずい、涙が止まらない。
「ワタクシが洗い流してあげますよ!」
嬉々として近寄ってきたガディが俺の顔をつかんで水魔法で目を洗浄する。いたいいたい。
「アタシも手伝うっす! てんちょーの焼き物磨きで鍛えたお掃除スキルの見せ所っす!」
のってきたスコリィが俺を取り押さえる。手足が長いから簡単に組み伏せられる。
「お二人とも、押さえておいてください。目の中のゴミを還元魔法で消滅させます。なぁに、先ほどのお礼です」
ライムチャートちゃんまで……。その魔法はまずい。眼球が蒸発する。
いや、お前こういう時は流ちょうにしゃべるのかよ!
「やめ……、やめて! いや、やめろー!」
両腕をじたばたさせ彼女らの拘束を振りほどく。
くそぅ、女子メンバーに泣き顔をがっつりみられてしまった。
……もう、お嫁にいけない。
そんな俺たちの様子を見てデメテル様は笑い出す。
「ふふふっ! あなたたち、お互いに素敵なメンバーに恵まれたようですね。……クタニさん、これからもライムチャートのことをよろしくお願いします」
「……! 親の公認ですか……! お義母さん。わかりました。覚悟を決めましょう。娘さんは、俺が必ず幸せにしてみせます。式はきれいな湖を見渡せる教会で!」
「誰も嫁がせるとは言ってませんよ……! 次、お義母さんなどと呼んだらビールを飲めない体にしますよ」
俺の周りに白い魔法陣がいくつも展開する。……あ、これマジだ。
「は、ははは。ジョーダンですよ。……あ、おかわりよろしいですか?」
俺の周りのコップに、デメテル様の魔法陣からなみなみとビールが注がれた。何も言わず、ビールの入ったコップをすべて空にし、……古代樹の花びらのじゅうたんへ突っ伏した。
酒の勢いでいろいろと発言するのはやめましょう。
2025.5.11 さすがに変態すぎたセリフを修正しました。
感想・コメントお待ちしております!
2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!




