魂の融合と定着をした引きこもりの妹は女神様の優しさに触れて涙する
(`・ω・´)【あらすじ】古代樹を守るために、タナトスと戦っていた雑貨屋メンバー。追い込まれるも、助っ人に来たデメテルとスーパーキッズのペルセポネーのおかげで戦況が一変。タナトスが昼を夜に変える禁断魔法を使い、ギリシャ神話の女神たちの力を弱らせる。しかし、夜になったことにより目が覚めたルルドナが来て、タナトスを追い詰める。弱ったところに、覚醒したライムチャートちゃんのパン化魔法でパンになり絶命します。戦いは、一件落着。
(´・ω・`) 【出撃メンバー】
・クタニ(転生者)戦闘力なし/ハニワが闇の力にだけ相性◎
・ルルドナ(ハニワ由来の少女)→ 昼間は強制スリープ中
・スコリィ(ストーンピクシー)戦闘力:中/風×石の複合魔法
・ペッカ(フォレストミニドラゴン)戦闘力:高 → 闇属性に弱いため今回は
・イゴラ(ミニゴーレム)補助魔法:中 → 魔力切れで退場
・ ライムチャート(ゴーレム亜人?)戦闘力:特上/古代還元魔法、戦闘中は博多弁
( ಠ 益 ಠ )【今回の敵キャラ】
・タナトス:ギリシャ神話の邪神/闇の陶器に封印されていた闇属性ボス
・ストリーム・唐津:風束縛魔法を使えるが、タナトスの封印が解けて、どっかいった
(`・ω・´)ゞ【居残り組】
・ガディ(デビルガーゴイル)→ 店番担当
(´-ω-`)【その他関連キャラ】
・デメテル(オリンポス十二神、豊穣の女神、ビール好き)
盆栽仲間に会いに来た。奇跡魔法が使える。
・ペルセポネー:天使のような少女。ボクシングのスーパーキッズ。
イゴラおじいさん(盆栽ガチ勢)
――――――――――――――――前書き終わり
死神のパンに近寄って、動かなくなったことを確認する。
そこかしこに、小さなハニワが散らばり、焼きついている。
「これは、……売れないな」
死神骸骨のパン、ハニワ入り。 どう考えても不気味すぎる。
「案外、売れるかもしれないですよ」
ちびっこペルセポネーに肩を借りながら、ライムチャートちゃんがよろよろと歩いてきた。
「骸骨パンとかいいかもしれないっすね。映えるかもっす」
「カルシウムたっぷりにすれば子供たちの親も安心だ」
スコリィも寄ってくる。その背中に張り付いたペッカも。
お前らたくましいな。
「新商品はまかせるわ……。私、今日はもう休ませてもらうわ……。クタニ、あとよろしく。割引シール貼っておいた惣菜は夜10時までよ……」
「ルルドナ!」
倒れこんできた彼女を、そっと受け止める。
……次の瞬間、まるで力尽きた花みたいに、小さな姿へと変わり、
スッと俺の胸ポケットに収まった。
――体力があまりに少なくなっている。やっぱり、調子が悪いんだ。
俺は貫かれた胸のあたりを見てみたが、体も、服も治っていた。……奇跡魔法、すごいな。
「ルルドナさん、サイズ変更までできるんですね」
不思議な魔法に目がないって感じでライムチャートちゃんが覗き込む。
「ていうか、ライムチャートちゃん、なぜイゴラくんの魔法を?」
「最近、ちょっとだけ意識があるんですよね。戦いのときと、パン作りのときだけ」
「そりゃ大変だね。寝ている時まで意識があるなんて」
「そうでもないです、まあ、私は基本的に還元して、適当に形を整える魔法しか使えないんですけど、兄の魔法を参考にしてみました」
「さすが、私の子ですね。魔法センスがいい」
俺のもとにやってくる女神、デメテル様。改めて丁寧にお礼を言う。
「デメテル様、この度はご尽力いただき、まことにありがとうございます。ペルセポネーちゃんも」
デメテル様に頭を下げ、ちびっこのペルセポネーちゃんにも俺がしゃがみこんでお礼を言う。
あれだけ強気だったのに彼女はうつむいたまま、何も言わない。
……大丈夫、嫌われるのには慣れている。
俺が笑顔で固まっていると、ぽつりと言葉を漏らすスーパーキッズ。
「ママにこの人変態だって教わったから……」
おい、てめぇ……!
思わずデメテル様を見ると、彼女は神の微笑みで返してきた。
……ハニワでいじめたこと、まだ怒ってらっしゃる?
さりげなく話題を変える。
「……で、ライムチャートちゃんがデメテル様の子どもって、どういうことです?」
「神々の秘儀なので詳しいことは言えませんが、死にかけた娘の魂を、同じく死にかけていたこの子の魂と融合させたんです」
「魂の、融合……?」
「はい。こちらのゴーレムの体はタナトスによって滅ぼされかけてましたから、急いで近しい存在にその魂を定着させたんです。それがイゴラくんです」
「魂の、定着……?」
俺はもうロボットのように新用語を繰り返すしかなかった。
「まあ、ペルセポネーとライムチャートは、異なる世界の双子ってところですね」
なんだか話が壮大になってきたぞ……。
「ということは、ライムチャートちゃんって半分神様……?」
「いえ、そこまでは。ただ、神レベルの魔法が使えるだけで」
……それ、もう半分神様みたいなもんだろ。
「でも、どうして彼女に……?」
「それは、盆栽仲間だった彼女のおじいさんのおかげです。手紙を受け取っていたんです。それで私は神々の秘儀が使えるかもしれないと気が付きました――異なる世界で、同時に、命を落としかけている幼子がいる、と」
俺は理解するのをあきらめ、一つ学んだ。
――趣味友達って、大事なんだな……。
**
「……お、おかあさん……?」
「ふふふっ。そう呼んでもらえるのは光栄です。でもあなたにはたくさんの祝福を与えた親がいるんですよ」
「わ、私、き、記憶の片隅に、お。覚えています。ひ、光の中の……き、記憶」
戦闘の興奮が冷め、どもりがちに戻った彼女。
「それは素晴らしい……!」
デメテル様が、優しく微笑む。
「わ、私は……ずっと思っていました。じ、自分なんかが生きていていいのかって……。こ、こんな魔力を与えてもらったのに、ほとんど兄の中に引きこもって……」
「もちろん、いいんですよ」
デメテル様は、はっきりと、あたたかな声で言い切った。
「で、でも……、本当に、ずっと、外に出てなくて、よ、世の中のこと、何も知らないし。お兄ちゃんの中で、ず、ずっと本を読んでいただけで……」
……お兄ちゃんの中って本があるのか……? 詳しく聞きたかったがぐっとこらえる。
「ふふふ、いいんです。ぜんぶ、いいんです」
デメテル様の微笑みは、慈愛そのものだった。
「あなたのような存在が……、ほんの一歩、踏み出したとき、この硬直した世界に新しい風を吹き込んでくれるんですよ」
女神さまを見上げたライムチャートちゃんは、真顔のまま、――ぽろぽろと、涙をこぼし始めた。
「あれ……」
自分でも信じられないように、手で涙をぬぐう少女。
だけど、涙は、止まらなかった。
――その瞬間。
古代樹がぼんやりと光りだした。
〈フォアアアアー〉
柔らかな光が、闇夜をほのかに照らし出す。
枯れていたはずの古代樹に、小さな、小さな花が、いくつも咲き始めた。
「ああ、やはり……」
デメテル様が、そっと目を細める。
「みなさん。どうです? 今日ここで――花見でもしませんか? 売れ残りの総菜で。ビールは私が用意しますよ」
秘密も分かったことだし、次回、打ち上げ編です。
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2025.8.15 主人公の一人称を俺にして、それに合わせて各所書き直しました!




