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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第15章 ギリシャ神と古代樹とゴーレム兄妹編
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死神は焼き立てパンには敵わない

「誰だ!?」

 スーパーキッズの右ストレートでぶっ飛ばされ、回し蹴りでぶっ飛ばされた死神タナトスは、ルルドナに叫ぶように尋ねる。

「ただの雑貨屋の夜勤担当よ」

 圧倒的オーラを漂わせ、ルルドナが答える。


「その程度の存在が、蹴りだけで……!?」

「……言っとくけどあなたの力、ほとんど無力化させられてるわよ」


 タナトスの体にはいつの間にかハニワがとりついている。

「な、なん……だと……?」


 小型ハニワたちは、セミのようにとりついて、動かない。俺が胸を張って進み出る。

「お前がカッコつけている間にこっそり投げつけてたんだよ!」


「てんちょー! そういうときは待つものっす!」

 スコリィのツッコミ。

「うっせー! 勝てばいいんだよ!」

 

 腕を振り上げてやけ気味に言い返す。

「こういうときに機転が利くのある意味才能だな……」

 ペッカがあきれたように言う。


「勝つ……? お前らのような下等な存在が、神のこの私に……!」

「ごちゃごちゃうるさいわよ!」


 ルルドナの声と共に、その周囲に魔法陣が展開され、重力が重ねられる。

 重圧を受けたタナトスの膝が沈む。


「この力、重力魔法だと……!?」


「あんたはここでくたばりなさい!」

 蹴り。しかし相手の鎌に防がれる。


「神に何度も蹴りを入れられると思うなよ!」

「こっちは売上かかかってるのよ!!」


 ルルドナは蹴り上げていた右足を引き、素早く回転。


 逆方向から中段へ蹴り。

 ――これも防がれる。

 さらに足払い。

 ――スッとよけられる。


 まるで踊っているような華麗な動き。……だが攻撃は届かない。

「はっはっは! 口の割には動きが単調すぎるぞ!」


 と、タナトスが余裕を見せたとき。

「おじさん、油断する癖、直したほうがいいよ」


 ペルセポネーちゃんが参戦する。その手からは光が失われていたけど、動きは健在だ。


「助太刀します!」

「あら、ありがと! 寝起きでうまく動けなかったのよ!」

 ルルドナがお礼を言って、共に死神を攻める。

 蹴りとパンチ、リズムよく、攻撃が繰り出される。


「くっ……!」 

 タナトスが攻撃を受け止めつつ、下がり続ける。


(まさか死神が、物理攻撃で追い込まれていくなんて)


「調子に乗るな!」

 死神が二人の攻撃を同時にはじき飛ばし、大きな鎌を振り上げる。

 

 ――そのとき。


大地還元リダクト・アース!」

 タナトスの足元が、ぐにゃりと泥に変わる。足を取られ、動きが鈍る。

 

(ライムチャートちゃんの魔法だ!)

 地面についた彼女の両手から、魔法の光がほとしばっている。


 足場が悪くなってもルルドナは迷わなかった。


 力強く地面を踏みしめ、タナトスの方へ詰め寄る。

 その顔面めがけて――。


 頭突き!


 瞬間、ルルドナが頭に被っていたハニワの兜が光を放つ。

「こ、この光……! 力が、消えていく……!」


「終わりね」

 ルルドナの声は、鋭く冷たい。追撃の蹴りを放とうとした瞬間、何かに気がついて、大きく飛び退く。

 

「こ、こんなことが……!」

 タナトスは顔をゆがめたまま。


「……いや、認めん! もうこうなれば――全員、道連れだ!」

 不自然なほどの巨大な魔力が集中する。


(これは、古代樹の魔力……!)


 足下からも、幹から、枝からも、力が集まっていく。


闇自爆ダーク・ブレイク!」


 赤黒い不気味な光となった古代樹の力が、風船のようにふくれあがっていく。


 静観していたデメテル様が、叫ぶ。

「あれは、自爆魔法! 皆さん、下がって!」


 タナトスの狂ったような叫びが響き渡る。

「むだだ! この森全てを木っ端みじんにしてくれる!」

 慌てふためく俺たち。


 だが、そのとき――。

 冷静な声が妙にはっきりと響きわたった。

麺麭贖罪グラナイト・グルテン・ロック


 ライムチャートちゃんの、静かだが、力のこもった声。

 

 直後。

 地面が、ふっくらと盛り上がり始める。さきほど魔法で泥にした地面が、パンのように膨らみ――タナトスの体を包み込む!


「こ、こんなもの……!」

 ほとんどあがくこともなく、赤黒い光ごと、タナトスはパンに飲み込まれ――やがて、動かなくなった。

 

 激戦の跡地に、タナトスの形をした不気味なパンができあがる。

 動かなくなった「それ」にそっと近づく。


(これ、いったい誰が食うんだよ。安売りしても絶対に売れないぞ)

 

 こうして、俺たちと死神の戦いは――あまりに意外な形で、幕を閉じたのだった。焼きたてパンのにおいを漂わせながら。

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